「21世紀の国土のグランドデザイン」 第3部 5

 

5 北陸地域


−環日本海交流の核圏域として、360度の地域連携と国際交流が行える連携、交流の先導的地域−


 (1) 地域整備の基本方向

 美しく豊かな自然に囲まれ、降雪量が多く水資源に恵まれているなど、豊富な国土資源を有する北陸地域は、農業、工業等の産業と、特色ある文化の蓄積を重ね、我が国でも最も優れた居住環境を有する地域の一つとして発展を続けてきた。人と自然が調和した文化の香り高い生活環境の創出を求め、地域間の連携や国際交流を基軸に地域づくりを進めようという潮流の中、本地域は、こうした豊かな自然や文化の賦存ばかりでなく、県庁所在地が近接し、三大都市圏のそれぞれに近く、環日本海地域の中央として対岸諸国にも開かれているなどの地理的優位性を有しており、「環日本海交流の核圏域として 360度の地域連携と国際交流が行える連携、交流の先導的地域」として発展が期待されている。

 こうした特質や役割を踏まえ、本地域内の各地域それぞれにおいて、広域的な連携を図りつつ、恵まれた自然や文化を保全し、これらと調和した、誇りの持てる地域づくりや、新しい時代にふさわしい産業構造への転換を図り、本地域において広く多自然居住地域の創造を進める。また、本地域に集積の乏しい、中枢管理、国際交流等の高次都市機能について、地方中核都市相互の近接性を活用し、地域連携による各都市相互の分担の下で実質的集積を高め、日本海沿岸地域や対岸の諸地域との交流の核となる、広域国際交流圏の形成を目指す。さらに、近接する地域との広域にわたる地域連携軸を広く展開する。これらにより、豊かな自然の広域的利用可能性も拡大し、高次都市機能の集積も一層進み、太平洋側の大都市圏との相互補完関係が高まるとともに日本海沿岸地域との連携も深まり、長期的に日本海国土軸が形成されていく。


 (2) 施策の展開方向

 多自然居住地域の創造に向けて、地域アイデンティティの基軸となる、世界遺産に登録された白川郷、五箇山の合掌造り集落等の歴史や文化遺産、信仰の山である白山、立山、輪島塗や九谷焼等の伝統工芸、豊かな日本海の恵み等地域の個性を生かした魅力的な地域づくりを推進する。このため、自然環境、街並み景観や生活環境等の地域環境の整備、圏域の拠点となる中小都市の整備、域内交通基盤や高度な情報通信基盤の整備を進めるとともに、圏域一体となった地域ブランドの育成、観光ルートと拠点の確立、芸術振興、農山村都市交流、高度な情報通信を活用した新規産業の創造等を総合的に進める。北陸東部から南部に広がる北陸山麓地域等においては、地域内及び地形的条件から制約されている隣接する中信地域、飛騨地域等の他地域との連携を進めるため、広域的な交通基盤の充実を図るとともに、立山地域や白山・奥越高原地域における豊かな自然を生かした広域観光開発等を目指した取組を支援する。能登地域においては、能登空港の新設等の交通基盤の充実や新産業の導入等、地域の活性化に向けた施策を推進する。若狭湾沿岸においては、原子力発電施設の集積を利用した地域整備を行うとともに、近畿自動車道敦賀線等の整備を推進することにより、北近畿地域とも連携したリゾートネットワーク等連携と交流を軸とした地域活性化等を進める。さらに、九頭竜川流域等流域単位で行われている交流活動等への取組を支援するとともに、本地域内の各地域それぞれにおいて、洪水、豪雪、土砂流出等による自然災害や事故災害に対する安全性の確保のための対策及び海岸の保全を進める。農林水産業については、産地ブランドの確立、経営の複合化、生産・加工・流通基盤の整備等による競争力の強化、高付加価値化等を図る。この際、稲作農業を中心とした大区画化等の生産基盤の高度化を進めるとともに、木工等加工分野との連携、深海性水産資源の増殖等を通じて地域の特性を生かした産業の振興を図る。

 金沢、富山、福井等の地域内の各都市において、相互の機能分担や広域的な共同利用にも配慮しつつ、鉄道跡地、大学移転跡地等の低未利用地を活用した中心市街地の活性化、研究開発機能の充実、業務拠点地域の形成、国際交流拠点の形成、高等教育機関、文化ホール、美術館等の充実、電子情報資源の充実を図るとともに、中枢拠点都市圏を中心とした広域的な連携により、国際交流機能を始めとする高次都市機能の充実を図る。この際、伝統的な工芸技術の継承、発展や修復技術の保存等を通じた伝統文化の振興を図るとともに、先端的な企業等の立地や創造的な企業活動への支援への総合的な取組、バリアフリー化の推進等による福祉の里の形成等の福祉の充実に向けた施策等、多自然居住地域に囲まれた文化やうるおいのある新しい都市圏の形成を目指す。これらの都市圏と地域内の各地との連携の下で留学生、研修生の受入れ体制づくり、国際会議、国際観光等の基盤整備等を促進し、文化交流、環境協力、国際物流等、広い視野に立った環日本海交流の核となる広域国際交流圏の形成を図る。このため、地域内及び隣接する地域との機能分担を図りつつ、中枢拠点都市圏を中心に国際交通機能の集積を図ることとし、伏木富山港等国際交流の拠点となる空港、港湾等において、物流施設の整備やアクセスのための交通基盤の整備を図る。

 地域内の多自然居住地域、中枢拠点都市圏、本地域と太平洋側の諸都市、内陸地域等との相互間において、産業のみならず文化、スポーツ、保健、医療、福祉、広域型観光のネットワーク等多様な分野において、連携を基軸とする新しい地域づくりを進める。このため、我が国の中央部を能登半島から名古屋圏へと連結する地域連携軸を始め、中部山岳地域を福井から山梨へと東西に縦貫する地域連携軸や福井、滋賀、三重を結ぶ地域連携軸の形成を図る。こうした連携、交流の動きを踏まえ、陸上及び海上の縦貫路線の代替経路の創出等、物流、情報通信、産業の分野における全国的な広域的機能の一翼を担うことにも配慮しつつ、道路、鉄道、空港、港湾等の交通基盤や高度な情報通信基盤の整備を進めるとともに、様々な交流活動を活発化する施策を展開する。高規格幹線道路としては、東海北陸、中部縦貫、能越自動車道の整備を推進する。また、これらとともに地域の交通ネットワークを形成する小松白川連絡道路について事業の具体化を図るなど地域高規格道路の整備を進める。北陸新幹線については、政府・与党検討委員会検討結果に基づき、糸魚川・魚津間、石動・金沢間及び長野・上越間について着実に整備を進めるとともに、それ以外の区間については所要の事業を進める。


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