1 日時:平成26年10月7日(火)~8日(水)
2 場所:島根県雲南市、奥出雲町
3 主催:国土交通省
4 協力:特定非営利活動法人さくらおろち
5 後援:雲南市、奥出雲町
6 参加者:大滝ダム活用促進協議会、(公財)宮ヶ瀬ダム周辺振興財団、
(株)未来奥津、東峰村ツーリズム協会、しらやま振興会、
長野県木祖村 等
島根県雲南市及び同県仁多郡奥出雲町にまたがるさくらおろち湖(尾原ダム湖)周辺においては、各種施設の管理者を含む地元関係者が、行政区域を越えた連携を模索しつつ、地域の活性化のための取り組みを行っています。
本会議では、参加者が、現地を見学しながら、地元関係者から地域に対する思い、将来に対する展望や不安などを聞き、「自分がこの地に住んだら、何をしたいか?」をテーマに地元関係者を交えた意見交換を行いました。参加者にとっては実地の学びの機会、地元関係者にとっては情報発信と外部視点の導入の機会とすることで、地域を越えて地域活性化の知恵を共有し、水源地域間の連携を深め、水源地域における活性化活動の発展を図りました。
NPO法人さくらおろち、奥出雲町及び国土交通省出雲河川事務所尾原ダム管理支所から、尾原ダムを囲む3地区(雲南市温泉地区、奥出雲町布勢地区、三沢地区)の地誌等の概要、尾原ダム周辺地域の活動状況や地域の活性化を推進する体制づくり、尾原ダム水源地域ビジョン(平成26年度は、38件のプロジェクトの実施が予定されている。)を紹介していただきました。
要害山交流拠点施設 みざわの館
地元食材を使った家庭料理
ダムの見える牧場(牧舎のウォールアート)
【尾原ダム堤体】
ダム直下に集落があるため、騒音低減の観点から、放流の際の騒音・振動を抑える工夫がされた構造(水中放流方式)になっていたり、地域に開かれたダムとして、ダム堤体内の管理通路見学ツアーを開催するなど、地域と一緒になった取り組みを行っていることについて説明を受けました。(説明者:ダム管理支所)
【みざわの館】
山陰屈指の中世城跡である要害山の麓にあった空き屋(古民家)を改築した交流拠点施設です。施設の管理、運営は地域の方々で構成する「とんぼの会」が行っています。館での食事は、とんぼの会の「おもてなし部」により、地元の食材を使った家庭料理が提供され、地域の産品と食文化を味わうことができます。みざわの館の周辺には歴史的遺構も多く、地元の方々のガイドで見学することもできました。(説明者:とんぼの会)
【さくらおろち牧場(馬の牧場)】
ホースセラピー(馬とふれあうことにより、生きる力や自分の役割、やりがい等を実感してもらう取り組み)を行っており、若者を従業員として受け入れ、人材育成にも取り組まれていました。また、小学生向けのレクリエーションなどは非常に好評であるとのことでした。(説明者:雲南TRC)
【ダムの見える牧場(牛の牧場)】
地元を元気にしたいという乳製品メーカーが、ダム建設による残土処理場を有効活用し、放牧場として整備したものです。ここにIターンした若手酪農家の方がメーカーの支援を受けながら放牧酪農に取り組まれています。牧舎の壁には、子どもたちが自由に色を塗った牛の絵(ウォールアート)が描かれているなど、地域と一緒になった取り組みを行っていました。今後、さらに10haの放牧場の整備に取り組む予定であり、住み込みで作業してくれる人を募集中であること、搾乳した牛乳からアイスクリームやケーキを作り、訪れる人に販売したいことなど、将来の展望もお聞きできました。(説明者:若手酪農家)
その他、【ボート競技施設】、【自転車競技施設】を見学しました。
左から飯田 幸一氏、森山 尚氏、三成 由美氏
地元で活動していらっしゃる3名の方からご講演いただきました。
[1]「交流歴16年、下流域から思う尾原ダム地域の可能性」 (元NPO法人斐伊川流域環境ネットワーク事務局長 飯田 幸一氏)
奥出雲地域の活性化を、何でもいいから手伝いたい、という思いを持って16年間取り組んできたこと、尾原ダム周辺にある様々なもの(施設)の活用が進んでおらず、来訪者に「また来たい」と思わせる必然性や話題性が必要である、とのお話がありました。
アスリートのための食事を中心とした心身のメンテナンス場所として、この地域を位置づけてはどうか(食育)など、今後のヒントになるアイデアもご披露いただきました。
また、「絵空事を実現するためには、計画と持続可能な資金が必要。自分のプランや地域について、誇りを持ち、寄付金を募るようなことを恥ずかしげもなく語れるような人にならなければいけない」と熱く語られ、参加者からは、元気をもらった、との声が聞かれました。
[2]「ダム湖とアウトドアスポーツの可能性」 (しまねシーカヤックスクール 代表 森山 尚氏)
ダム湖は巨大なジム、スタジアムであるとの意識を持ち、複合型アウトドアスポーツ天国さくらおろち湖を提案し、八岐大蛇(やまたのおろち)伝説にちなんだ8種のアクティビティを組み込んだイベントを企画されているとのことでした。
また、カヤック体験だけでは、一度に10名程度の受け入れしかできませんが、他のダム周辺施設と連携し、ダム見学や動力ボート遊覧と組み合わせることで、大人数の受け入れが可能になり、さくらおろち湖全体を大学キャンパスと見立てたアウトドアアカデミーの実施を検討しているとのお話もありました。参加者からは、地域内で活動団体が連携することによる効果を認識することができた、との意見がありました。
[3]「花やかに生きていく~Okutabiにこめた私たちの想い~」 (おくいずも女子旅つくる!委員会委員(奥出雲町職員)三成 由美氏)
奥出雲地域に若い女性を呼び込むことを目指し、女性の価値観を活かした奥出雲町の資源・人・資産の掘り起こしを提示する「おくいずも女子旅つくる!委員会」の活動について、紹介していただきました。
女性目線でのプロデュース(例:「伝える」でなく「伝わる」、否定しない、未完成感を出す等)に取り組んでおり、「OKUTABI応援!隊」会員は500名を超え、メディアなどの認知度も上がってきたとのことでした。
これまで、地域の「資源」や「ひと」を紹介しており、今はそれらの掛け合わせ(資源×人)としての「見える価値」を生むものとして「MUFUFU AUTUMN」を展開しているそうです。参加者からは、非常によい取り組みで参考にしたい、という声が聞かれ、特に女性参加者は、OKUTABI応援!隊に入ろうという方もいました。
意見交換会「自分がこの地に住んだら、何をしたいか?」
会議参加者が2班に分かれ、「自分がこの地に住んだら、何をしたいか?」をテーマに議論しました。議論には、地元の活動団体メンバーや講演の講師の方にも参加していただきました。
A班では、NPO法人ひろしまね理事長安藤周治氏の進行のもと、
・ ダム湖空間のスポーツ施設を活用した競技選手の育成をすればおもしろい、
・ ダムと美術作品を組み合わせたアート空間の創出ができないか、
・ スポーツアカデミーと女子旅、古民家活用等の各取り組みのコラボレーションに取り組みたい
などの意見が出されました。
地元参加者からは、ダムを核として周辺の各地域が繋がったこと、そのために地域の人の繋がりが生まれる場を作ったことや、地域に必要なスキルを持った人材を積極的に呼び込んだこと等様々な努力があったことが振り返られるとともに、努力した結果として、地域に活力が出て来たことが報告され、全国の参加者も大いに刺激を受けました。
B班では、札幌市立大学デザイン学部講師上田裕文氏の進行のもと、
・ 子供向けのプログラムやストーリーをつくれないか、
・ 「ダムに沈む夕日」など、これまで触れたことのない景色を、その季節や周辺情報と一緒に発信したい、
・ 地元の高齢者も若者も一緒に語り合う場をつくりたい
などの意見が出されました。
地元参加者からは、地域の人に地域のことを知ってもらう活動をしたこと、その活動により人の繋がりが生まれたことなどの紹介がありました。
また、地元の方々がみんな将来の夢や展望を持っており、地域全体が「明るく元気」という印象が強かったとの意見もありました。