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河川局


ラオス国メコン河における伝統工法の活用




<背 景>
 ラオス国においては、毎年のように発生する洪水に伴なう河岸浸食に対して、これまで法覆工のみを施工し対応してきた。この結果、基礎部の洗掘などにより法覆工全体が沈降したり、崩壊したりする被害が頻繁に発生している状況にある。また、財政力の乏しい同国(公共事業年間予算270万ドル)においては、国外から資材を輸入するための資金が不足しており、また、大規模施工のための材料や機材の搬入路が未整備の状況にある。
 このため、同国で施工可能な護岸工法としては、地盤の変化に追随できる柔な構造の工法であるとともに、材料の入手しやすさと価格が特に重要であり、このような観点から、かつて我が国において用いられてきた伝統的な河川工法(伝統工法)が注目されている。
 また、これらの工法は、同時に資材の確保が地域の雇用を生み出すなど貧困対策にもつながるものと期待されている。

1.メコン河の概要(流域面積:79万km2、流路延長4,620km)
 ヴィエンチャン付近では、流域面積27万km2
 年最大流量16,000m3/s、年最小流量1,000m3/s、水位差:約10m
 河床勾配:1/12,000、最大流速約3m/s(雨期)平均流速2m/s以下
 雨季(5〜10月)、乾季(11〜4月)、年降水量1,700mm

メコン河の概要

2.経緯 
1990年〜 ビエンチャン市建設局が他国の援助等による護岸整備開始
1998年 ボケオにおいて水制設置(ラオス国、JICA現地専門家)
1999年 1月 建設省、国際建設技術協会:現地調査と護岸技術セミナー
1999年12月 粗朶職人によるラオス現地粗朶材料調査(国建協)
2000年 8月 ラオス人技術者3人が信濃川で粗朶沈床の研修(国建協)
2000年11月〜2001年2月 メコン河における粗朶沈床試験施工(国建協)
  〜2003年3月 粗朶沈床試験施工のモニタリング(国建協)
2001年7月 JICA事前調査
2001年12月〜2005年3月 JICA開発調査、他工法を含む試験施工、マスタープラン作成

ボケオ水制工3.ボケオ水制工
過去20年で20m以上河岸が後退
河床勾配:1/2,500、川幅:400m
年間水位変動:10m、最大流速:3m
ラオス政府は蛇籠護岸で設計し海外援助を期待していたが、JICA専門家の指導により、地元の花崗岩を使用した水制を施工。
延長:40m、間隔:100m、高さ:6m(上部にメコン柳の自生を期待)、先端勾配1:3、上流側勾配1:1.5、下流側勾配1:3
蛇籠護岸20万円/1m→水制5万円/1m、水制間に堆積傾向、水際利用がしやすくなった。

4.粗朶沈床試験施工(国建協)
 基礎・根固工として粗朶沈床工法の適用可能性を検討。
場所:ヴィエンチャン市内、延長約80m(内30mフトン籠工、約50m連柴柵工)
護岸法先に8m×6mの粗朶沈床12基沈設10m×6mの粗朶沈床工水制4基沈設

粗朶沈床試験施工平面図
粗朶沈床試験施工平面図

ヴィエンチャンタイムスで紹介された粗朶沈床工 ヴィエンチャンタイムス
で紹介された粗朶沈床工

5.ラオス国ビエンチャン市周辺メコン河河岸浸食対策計画調査(JICA)
 2001年7月事前調査、2001年12月〜2005年3月本格調査
(1)調査の目的
 ・日本の伝統工法を活かしラ国側で実施可能な低コストでメコン河に適した工法検討
 ・パイロット工事を通じた技術移転
 ・パイロット工事のモニタリングを踏まえたマスタープランの策定
(2)現時点での想定パイロット工事
 粗朶沈床工:国建協施工個所下流において、低コスト化の検討と施工技術移転継続
 杭出し水制工、柳植生護岸:背後地の資産価値の低いところ
 栗石柳枝工:蛇籠にかわる安価な工法として

試験施工予定地の河岸浸食状況

試験施工予定地の河岸浸食状況
試験施工予定地の河岸浸食状況




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