4 民間の営利事業者が行う水利使用について
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水利使用の目的が営利のためであったとしても、「行政手続法の施行に伴う河川法等における処分の審査基準の策定等について(平成6年9月30日建設省河川局長通達)」に掲げる審査基準を満たすものと判断されれば、許可を与えることとしている。 一般に、水利使用については、河川の流水を最大限に有効に使用すべきという社会的要請に応えるため、より緊急かつ有用な水利使用を妨げることのないよう、国民経済上及び国民生活上の有効性についての判断には慎重な検討を要するところである。 実際、公共性・公益性の大きさが必ずしも自明とは言えない、営利を目的とする事業については、個別具体の事例において、水利使用の目的及び事業内容が国民生活の向上に寄与していることや、地方行政政策上の位置付けがなされていること等、それぞれに公共性・公益性の判断を行った上で、更に、河川の流量が豊富であることや取水量を消費せずに河川に還元するような管理が可能である等、社会的要請に照らして、他のより緊急かつ有用な水利使用の実施を妨げるおそれとがないことが明らかな事情等について総合的に検討の上、許可を与えているところである。 平成15年1月現在、国土交通大臣(地方整備局長又は北海道開発局長に委任しているものも含む。)が許可権者として許可している水利使用で、営利を目的とした私企業のうち、一般電気事業者(10電力)及び電源開発株式会社を除いたものは、301件ある。 |
番号 | 許可権者 | 水 系 | 河 川 | 水利使用件名(目的) | 水利使用者 | 許可量 m3/s | 当初許可 年月日 | 公共性・公益性に係る審査基準適合の 判断理由及び総合的判断の根拠 | 使用用途 | |
1 | 北海道 開発局長 | 一級 石狩川 | 千歳川 | 上水道 | 上 水 | 王子製紙(株) | 0.013 | S31.12.10 | 江別市における水道事業政策上、当該地域の工場周辺に住む従業員の生活用水に貢献するものとして、上水道とすることと位置付けられている。 また、取水地点においては必要水量を取水できるだけの流量があり、安定的に取水量が確保されている。 | 王子製紙工場の専用水道 |
2 | 北海道 開発局長 | 一級 石狩川 | 幾春別川 | JR岩見沢駅消流雪溝用水 | 消流雪用水 | 北海道旅客鉄道(株) | 0.91 | S40.1.14 | 鉄道事業は利用者が不特定多数に渡り、公共交通機関として国民生活の向上に寄与しているところであり、当該事業における雪害による運行上の支障を少なくし、利用者への影響を抑えることの社会的要請がある。 また、消流雪であるので、河川水は消費しておらず、しかも、取水地点において必要な時期に必要水量を取水できるだけの流量があり、安定的に取水量が確保されている。 | 駅構内への流雪溝への流入。全量河川へ排水。 |
3 | 北陸地方 整備局長 | 一級 信濃川 | 夜間瀬川 | 地獄谷発電所 | 発 電 | 個人事業者 | 0.132 | S32.3.27 | 市街地から2km以上も離れた地獄谷温泉で旅館を営んでいるが、地域的に一軒家のため、電力会社からの供給がなされず、自家発電を行う必要があった。中部電力から電力供給を受けられるようになった現在でも、補完的に非常用の発電としての必要性がある。 また、取水量もわずかであり、地域的に他に及ぼす影響もほとんどなく、河川管理上も別段支障がない。 | (電力供給前)旅館営業用、従業員生活用 (供給後)旅館外灯照明用、非常用発電用 |
4 | 静岡県知事 | 二級 太田川 | 逆 川 | 工業用水 (浄水器実験用水) | 工 水 | 掛川磯村産業(株) | 0.0025 | H6.11.1 | 厚生省(現厚生労働省)の外郭団体である(社)水道上水プロセス協会を中心に、コンパクトで省力的な浄水処理技術を確立するため、膜利用式新浄化システムの開発が計画された。申請者はこのプロジェクトに参加しており、逆川の河川水を浄水処理装置の実験用水に使用することとしているが、当該開発目的には公益性が認められる。 また、取水した水は全量取水地点に放流されることや、取水地点において、必要量を安定的に取水できるだけの流量があることを確認している。 | 装置実験用水 |
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