建設産業・不動産業

建設業における事業協同組合と協業組合

組合組織

組合と行政庁の認可 組合に対する助成措置 組合に対する競争入札参加資格審査の特例措置

組合組織

組合制度とは

 
 中小企業は、一般に規模の過小性、技術力の低さ、信用力の弱さなどによって、経済活動の面で不利な立場に立たされている場合が多く、事業経営の上で種々の問題を抱えています。これらの問題には、個々の中小企業の企業力だけでは解決し難いものも多くあります。
 このため、中小企業が直面している経営上の諸問題等を解決し、その経済的地位の向上を図るため、複数の中小企業者が集まり、共同で自主的に解決するような組織を結成すること、すなわち「組織化」が必要となってきます。
 本ページで紹介する「事業協同組合」と「協業組合」は建設業において普及しており、「中小企業等協同組合法」、「中小企業団体の組織に関する法律」にこれらの組合の目的、性格等が規定されています。
 

事業協同組合の組織は次のとおりです

 
[目的と事業]
 事業協同組合は、組合員である中小企業者が行う事業に関して、相互扶助の精神に基づき、協同して事業を行うことにより、中小企業者の経営の合理化と取引条件の改善を図るものです。事業協同組合の根拠法規は「中小企業等協同組合法」です。
事業協同組合の行う事業は次に例示するように広範であり、組合員のためにする各種の事業を行うことができます。
 [1]共同生産、共同加工、共同購買、共同受注、共同保証、研究開発等の共同事業(共同経済事業)
 [2]組合員のための福利厚生施設の設置、組合員に対する事業資金の貸付、組合員の事業に関する債務の保証、組合員の経済的地位の改善のために必要な団体協約の締結等の共同事業
 
[組合員となる資格]
 事業協同組合の組合員となれる者は、組合の地区内にある小規模の事業者であって、組合の定款で定められた事業を行う者です。事業者は建設業者のみならず、商業、工業、鉱業、運送業、サービス業、その他各種の事業を行う者で構成することができます。建設業者のみで構成される組合もあれば、いくつもの業種にまたがって構成される異業種組合もあります。
 
[設立要件]
 事業協同組合を設立するにあたっては、組合員になろうとする者4人以上が発起人になり、設立総会の開催等一定の手続を経て、定款に定められる組合員の行う事業を所管する行政庁の認可を受けることが必要です。
 
[事業協同組合の原則]
事業協同組合は、中小企業等協同組合法により、次のような原則が定められています。
 [1]組合員の相互扶助を目的とする組織であること
 [2]加入・脱退が自由であること
 [3]組合員の議決権、選挙権が平等であること
 [4]剰余金は、主として組合の事業の利用分量に応じて配当すること
 [5]組合は、行う事業によって組合員に直接奉仕するものであり、特定の組合員の利益のみ目的としてはならないこと
 [6]政治的に中立であること
 

協業組合の組織は次のとおりです

 
[目的と事業]
 協業組合は、組合員の事業活動についての協業を図ることにより、企業規模の適正化による生産性の向上等を効率的に推進し、その共同の利益を増進することを目的としています。協業とは、組合員又は組合員になろうとする者がその営む事業の部類に属する事業の全部又は一部を協同して経営することであり、協業組合の事業は、協業の対象となる事業及びそれに関連、付帯する事業ということになります。協業組合の根拠法規は「中小企業団体の組織に関する法律」です。
 
[全部協業と一部協業]
協業組合の事業活動には次の2とおりの形態があります。
 [1]全部協業
 同業者である建築・土木業者や特定の専門業種の建設業者が集まり、その営んでいる事業の全部を協業する場合や複数業種の建設業者が集まり、それぞれの業種部分を結集して一貫施工する場合
 [2]一部協業
 同業者である建築・土木業者や特定の専門業種の建設業者が集まり、その営んでいる事業の一部(土木部分のみなど)を協業する場合
 
[組合員となる資格]
 協業組合の組合員となれる者は、中小企業者及び定款で定めた中小企業者以外の者であって、加入の際に定款で定める事業の全部又は一部を営む者です。
 この場合、中小企業者以外の者は、協業組合の総組合員の4分の1を超えることができません。
 
[設立要件]
 協業組合を設立するにあたっては、組合員になろうとする者4人以上が発起人となり、設立総会の開催等一定の手続を経て、協業組合が行う事業を所管する行政庁の認可を受けることが必要です。
 
[協業組合の原則]
協業組合には、次のとおりの原則が定められています。
 [1]議決権
 各組合員平等が原則ですが、定款で定めれば組合員に平等割で分配される議決権のほか、その議決権の総数を超えない範囲で、出資割りの議決権を設けることができます。
 [2]競業禁止義務
 組合の事業と実質的に競争関係にあるような事業は、原則としてこれを行うことができません。
 [3]配当
 剰余金の配当は、定款に別段の定めがあるときのほか、出資に応じて行うこととします。
 [4]持分の譲り渡し
 組合員は定款で定めるところにより総会の承認を得なければ持ち分を譲り渡すことができません。
 

事業協同組合と協業組合は次のような違いがあります

 
 事業協同組合は、組合が組合員企業の事業を、助成、補完することによって、組合員企業がそのメリットを享受するという組織です。一方協業組合は、組合員企業が、企業体質を強化するため事業を統合するものです。
 事業協同組合は、組合と組合員が併存する関係であり、その結びつきは協業組合に比較して弱いといえますが、設立も容易であり、組合員企業の各々の性格に応じて共同事業の種類や利用の多寡を選択できる点で、その利用方法に特徴があります。また、基本的に営利を追求しない相互扶助組織であることから、特に税制面において協業組合に比較してより多くの優遇措置が講じられています。
 協業組合は、共同の利益のもとに財力、技術力を集中させていますので、非常に強力な結合体であるといえます。協業組合は統合した一つの組織と同様に見なされることから、国土交通省の直轄工事においては、競争入札参加資格審査の際に、合併企業に対する支援措置に準じた各種の特例措置が講じられています。
 なお、事業協同組合と協業組合の組織面における違いについては、 参考資料1(巻末に添付)を御覧ください。
 

 

組合と経常JVは次のような違いがあります

 
 経常JVとは中小・中堅建設業者が、継続的な協業関係を確保することによりその経営力・施工力を強化する目的で結成する共同企業体です。数者が共同して建設工事を請負う組織体であるという点で、事業協同組合や協業組合とも類似するところがありますが、主な違いは次の点にあります。
 
(1)目的
 経常JVは、建設事業を共同連帯して営むことを目的とするもので、まさに建設工事の請負のために結成された組織であるといえます。組合員のために、共同受注のみならず各種の共同事業を行う事業協同組合と、この点で大きく異なります。
 
(2)期間
 経常JVは、継続的な協業関係を目的に結成するものですが、基本的には競争参加資格の有効期間がその存続期間です。一方、組合は、一度結成すれば解散決議をしない限り継続します。
 
(3)構成員数
 経常JVの構成員は2~3社程度ですが、組合の組合員数はさまざまです。
 
(4)行政庁の認可
 組合の設立、解散が行政庁の認可を必要とするのに対し、経常JVは構成員間の契約により成立、解散することができます。
 
 その他にもいくつかの違いを見ることができますが、工事の受注に関する組合との比較については、参考資料2を御覧ください。
 

組合と行政庁の認可

組合は大臣又は都道府県知事が認可しており、その監督下にあります

 
 組合を認可する行政庁は、定款に定める組合の地区によって決まります。地区が一の都道府県の区域を越えない場合は当該都道府県知事が認可を行い、地区が複数の都道府県にまたがる場合はその主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事、地区が全国の場合は国土交通大臣が認可を行います。国土交通大臣認可の場合は、本省不動産・建設経済局建設市場整備課が窓口となります。また、知事認可の場合は、ほとんどの県で商工担当部局が所管し、土木・建築担当部局が認可の協議を受けるという形式をとっています。組合は、年に1度行政庁に決算関係の書類を提出しなければなりません。また、行政庁は組合の業務・会計が法令や定款に違反していたり、運営が著しく不当であるときは、組合から報告を聴取したり、検査を行ったりすることができ、さらに必要があれば、業務改善命令や解散命令も行うことができます。このように、組合は行政庁の監督下にあり、責任をもった活動が義務づけられています。
 

組合に対する助成措置

組合は各種法律において助成措置が講じられ、その活動が支援されています

 
(1)金融面における助成
 事業協同組合及び協業組合に対しては、中小企業事業団や商工組合中央金庫による融資や、信用保証協会による信用補完制度等の措置が講じられています。
 
(2)税制面における助成
 事業協同組合に対しては、相互扶助を目的とし、基本的には営利を追求しない組織であるため、法人税率・法人事業税率の軽減、加入金の益金不算入、利用分量配当の損金算入、印紙税の非課税、組合の所有する事務所に係る固定資産税の非課税等各種の特例措置が講じられています。協業組合に対しては、加入金の益金不算入、印紙税の非課税、組合の所有する事務所に係る固定資産税の非課税等の特例措置が講じられています。
 

組合に対する競争入札参加資格審査の特例措置

国土交通省は競争入札参加資格審査の際に、組合に対し、次のような特例措置を講じて支援しています

 
(1)官公需適格組合の証明を受けた事業協同組合について
 国土交通省の直轄工事においては、官公需適格組合の証明を受けている事業協同組合に対して、受注機会の確保を図るため、総合点数の算定方法に関して次のとおりの特例措置を講じ、積極的に支援しています。なお、この特例措置は、発注者に対しその適用を希望する旨の申出をしたものについて適用されることになります。
 
[客観点数]
(1)希望工事種別ごとの年間平均完成工事高の評点
  当該組合及び各審査対象者(注※参照)の年間平均完成工事高の和
(2)技術力の評点
  当該組合及び各審査対象者の技術職員の数の和
(3)自己資本額及び職員数の評点
  当該組合及び各審査対象者の自己資本額及び建設業に従事する職員数のそれぞれの和
(4)経営状況分析の評点
  当該組合及び各審査対象者の平均値
(5)その他の審査項目(社会性等)の評点
  当該組合及び各審査対象者の平均値
 
[主観点数]

 希望工事種別ごとの工事成績(技術的難易度を勘案したもの)に応じて付与された点数(前4年間の実績)
当該組合及び各審査対象者の平均値(当該組合に完成した工事がない場合は平均値の算出に当該組合を含まない)

 

※審査対象者

 ・当該組合の組合員であること

 ・当該組合の理事又は当該組合の理事が役員になっている法人であること

 ・当該希望工事種別に属する工事を施工することについて建設業法第3条の規定による許可を受けている者であること

 ・一般競争参加資格の欠格条件に該当しないもの

 ・審査対象者数は10を超えてはならない

 

(2)協業組合について

 

 建設業における協業組合は、中小建設業者がその事業につき、協業して、施工能力の増大を図り建設工事の施工に当たることができる組織であり、中小建設業の体質の改善強化に資するものとして、国土交通省の直轄工事においては、客観点数及び主観点数の調整を行う特例措置を講じるなど、事業協同組合に比較してより一層手厚い支援を行っています。

 国土交通省の直轄工事においては、発注者は、当該協業組合が所期の事業をなし得るに至るまでの相当の期間、その協業の態様、協調の度合等を勘案して、客観点数及び主観点数についておおむね15%の範囲内でプラスに調整できることとされており、さらに、当分の間は、当該協業組合が施工実績に著しく劣る場合を除き、10%プラスに調整できることとされています。

 また、主観点数の算定について、設立から審査基準日の前日までの期間が2年以上の組合については、前回審査以降に新規組合員の加入があればその実績を加算でき、設立から審査基準日の前日までの期間が2年未満の組合について、審査前2年間で構成員に実績があれば加算できることとされています。

 さらに、客観点数においても、設立後2年までの間は各組合員の完成工事高等の合算が認められています。これに加えて、建設業における企業連携及び協業化の一層の促進を図る観点から、受注機会の確保面において、協業組合の設立が不利になることのないように、設立後5年間程度、直近下位の等級においても指名することができることとされています。

 なお、国土交通省直轄工事における競争入札参加資格審査の際の特例措置の比較表(参考資料3)を御覧ください。

 
 

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