7 社会、経済、くらしを支える多様な道路施策の展開
 
 
1.現状と課題
 
(1)道路をめぐる現状
 イ 社会・経済・くらしと道路の関わり
 1) 社会を支える
 道路は、国民生活に不可欠な、電気・電話・ガス・上下水道などのライフライン収容空間として活用されるばかりでなく、防災空間としての役割も果たしており、阪神・淡路大震災の際には、幅員の広い道路が延焼の防止に大きな効果を発揮した。
 また、国内旅客、貨物輸送における自動車交通の占める割合は年々増加しており、特に地方圏においては自動車交通が社会活動の基盤となっている。
 2) 経済を支える
 高速交通網の整備は、空港ターミナル機能の向上や地域の商業活動の活発化など、地域の経済活動の活性化、利便性の向上に寄与している。重厚長大型から加工組立型への産業構造の変化に対応して、必要な材料の調達、製品の輸送が容易な高速道路のインターチェンジ(IC)周辺に多くの工場が立地していることも経済を支えている一面である。
 3) くらしを支える
 野菜、果物、水産品、日用品等日常生活に必要な主要品目の輸送のほとんどを自動車輸送が分担している。阪神・淡路大震災の影響によって高騰したレタスの価格が、高速交通が確保されるにつれて次第に安定するなど物価の安定にも寄与している。
 また、高速道路網の整備は1日配達圏を拡大し、生活の利便性に寄与しているとともに、医療機関の少ない地域においても、高度医療、救急医療の利用が可能となってなど地域における高度医療を支援している。さらに、道路整備による広域的なサービス提供により、医療施設の共同利用等、行政の効率化が図られ、大きなコスト縮減が可能となっている(図2−7−10)
 
(図2−7−10)
 
 
(2)今後の道路政策の方向性
 現在我が国では、社会・経済において大きな潮流の転換が生じている。道路政策としても、こうした転換期を的確にとらえ、車中心の発想から脱却し「負の遺産」(交通渋滞、交通事故、環境問題等)を早期に解決する政策を展開するとともに、既存の制度・枠組みを適切に見直し、グローバル化するライフスタイルや価値観に対応した、個人・地域の選択の幅を広げる社会装置として、くらし・生き方から見た道路サービスを展開していく必要がある。
 
2.平成11年度、12年度の主要施策 
 
(1)新道路整備五箇年計画の概要
 21世紀を目前に控え、社会・経済・生活活動が一層効果的、効率的に展開されるよう、「新たな経済構造実現に向けた支援」「活力ある地域づくり・都市づくりの支援」「よりよい生活環境の確保」「安心して住める国土の実現」の4つの施策を柱とする新道路整備五箇年計画に基づき、計画的・重点的に道路政策を進める。その際、道路政策をより効果的・効率的に執行するために、道路政策の進め方の改革を一層進める。
 
(2)平成12年度の主要施策
 世紀の節目となる平成12年度は、以下の視点で道路政策を展開し、新世紀にふさわしい豊かで活力ある経済社会の構築を目指して取り組む。 
 イ 高度情報通信社会推進に向けた道路の情報化
 1) 道路交通システムの高度化(ITS)の推進
 建設省では、関係各省庁と連携し、交通渋滞・交通事故等の低減や利用者の快適性の向上を目的に、最先端の情報通信技術等を活用して創り出す新しい道路交通システムであるITS(Intelligent Transport Systems)を積極的に推進している。また、ITS仕様の道路「スマートウェイ」の実現に向けた本格的な取り組みを推進している。
 2) 情報ハイウェイの構築
 地震等の大規模災害時における即応体制の確保など、公共施設の管理の高度化による道路の安全性・信頼性の向上を図るため、道路管理用光ファイバーを整備するとともに、その収容空間として、情報BOX、電線共同溝、共同溝の整備を図り、道路地下空間の有効活用を推進する。
 ロ 少子・高齢社会に対応した生活空間の形成
 1) 豊かな生活空間づくり
 誰もが安心して社会参加でき、快適に暮らせる豊かな生活空間を創造するため、歩行者や自転車、高齢者や障害のある方など様々な人の利用する視点から、地域と連携して安全・快適で利用しやすい道路空間づくりを推進する。
 そのため、「歩行空間ネットワーク総合整備事業」や「自転車利用環境総合整備事業」を創設し、市街地の駅、商店街、病院、福祉施設等の周辺等において、バリアフリーで快適な歩行空間をネットワークとして整備するとともに、都市において快適かつ安全に自転車が走行できる自転車道等のネットワークと自転車駐車場の整備を重点的に推進する。
 2) 安全な道づくり
 基本施策として道路網の体系的整備を進めるとともに、緊急に安全を確保すべき道路について「特定交通安全施設等整備事業七箇年計画」等に基づき、都道府県公安委員会と連携して、交通安全施策を推進する。特に、幹線道路の事故多発地点において、事故の特性に即した事故削減策を集中的に実施し、事故多発地点解消を目指すとともに、住居系地区等においては、通過交通の進入を抑え、地区内の暮らしの安全を確保するため、「コミュニティ・ゾーン形成事業」を推進する。
 ハ 地球環境の保全と沿道環境の改善
 沿道環境の改善を図るためには、経済・社会活動を支えている幹線道路の役割と沿道の生活環境の保全の両立を図ることを基本理念に、低公害車の普及等の自動車単体対策とともに、自動車交通の円滑化を図るための幹線道路ネットワークの整備、ボトルネック対策や沿道環境への影響を緩和するための低騒音舗装、遮音壁の設置等の道路構造対策など総合的な取り組みを関係機関等が協力して進めることが必要である(図2−7−32)
 
(図2−7−32)
 
 
 地球温暖化防止に向け、効率的な国土利用や環境負荷の小さな地域構造を支える環状道路やバイパス等の道路ネットワークを整備するとともに、緑豊かな道路空間の創出と緑のみちのネットワークの形成、自転車利用の促進、低公害車の普及のためのSA・PAへの燃料供給施設の設置に向けた調査の実施、道路維持管理車両への低公害車の導入等を進める。
 ニ 都市構造の再編を図る環状道路の整備
 都心部に集中する交通を分散・導入させ、都心に起終点をもたない交通を迂回させるなど、都市圏の交通混雑を緩和することを期待されているのが、環状道路である。しかしながら世界の主要都市の環状道路の整備率を比較すると、東京や名古屋では未だ低水準である。
 道路の機能は多様であり、交通の円滑化、交通安全などの交通機能面のみならず、空間機能や市街地を誘導する機能、国土や都市の骨格を形成する機能も有していることから、環状道路の都市構造の再編に対する役割なども明確化しつつ、都市圏の環状道路の整備を重点的に推進する(図2−7−33)
 
(図2−7−33)
 
 
 ホ 都市圏の交通円滑化
 道路交通需要の大きな伸びや非効率な自動車の使われ方の増加等により、道路交通渋滞の状況は深刻化しており、全国で年間に発生する渋滞損失は約12兆円、国民1人当り年間約42時間にのぼり、環境問題、経済効率の低下等を引き起こしている。そこで渋滞の緩和・解消を図るために、各都市圏において都市規模、交通特性に応じてバイパス、環状道路の整備などの交通容量拡大策、パークアンドライドや時差通勤等の交通需要マネジメント(TDM)施策、交通結節点の改善やバス利用の促進等のマルチモーダル施策を組み合わせて総合的な都市交通施策を実施する(図2−7−34)
 
(図2−7−34)
 
 
 また、大きな交通渋滞原因の一つである路上工事縮減のため、工事件数の削減と年間を通じた平準化を推進するとともに、共同溝の整備、非開削工法の採用、埋設物件の浅層化などの施策を推進する。
 ヘ 個性豊かな地域・まちの形成
 都市活動を支える放射・環状道路等の体系的な整備を進め、沿道の民間建築投資を誘発し、土地の有効高度利用を促進する。さらに、大都市都心部や臨海部の大規模低未利用地等において土地区画整理事業や市街地再開発事業等の面整備により土地利用転換を進め、都市の再生・再構築を推進する。
 公共・公益施設の共同利用・整備等地域住民等の利便性の向上や地域固有の魅力ある観光資源を活用した観光による地域づくりを支援するとともに、都市と地方の交流、市町村間の連携等を支援する地域間連絡道路等の整備を進める。地方公共団体が一般道路事業と有料道路事業を組み合わせて高速自動車国道のインターチェンジ整備を行う「地域活性化インターチェンジ制度」を創設するとともに、駐車場等の休憩施設と地域振興施設が一体となって道を介した地域連携や、交流の核を形成するため「道の駅」の整備を進める。
 また、中心市街地の関係者と地元地方公共団体が一体となって策定する活性化計画に基づき、各種道路整備を総合的かつ短期集中的に実施する「賑わいの道づくり事業」を推進する。
 さらに、安全で快適な通行空間の確保、都市景観の向上、都市災害の防止、情報通信ネットワークの信頼性の向上等を図るため、新電線類地中化計画(平成11年度〜平成15年度、約3,000km)に基づき、電線類地中化を一層強力に推進する。
 ト 地域連携と物流効率化の支援
 1) 幹線道路網の構築
 高規格幹線道路の平成11年度末の供用延長は7,548kmであり、平成12年度についても、都市圏の環状道路、地域ブロックの循環型ネットワークの重点的整備を推進して289kmの供用を図り、年度末の供用延長を7,837kmとする予定である。
 一方、高規格幹線道路とこれに次ぐ全国的な幹線道路ネットワークである一般国道のサービスレベルには、大きな格差が存在する。このため、高規格幹線道路と一体となって、地域発展の核となる都市圏の育成や地域相互の交流促進、空港・港湾等の広域交通拠点との連結に資する路線を地域高規格道路として整備を進める。
 2) 物流効率化の支援
 物流コストの削減やユーザーニーズに対応した物流サービスを提供するため、関係省庁連携のもと社会資本整備、規制緩和、物流の高度化・効率化の推進を図る。
 物流拠点、重要港湾等を連絡する高規格幹線道路、一般国道等を中心とする約6万kmのネットワークのうち、約3.9万kmについては平成11年度末までに車両の大型化に対応した橋梁の補強等の整備を完了しており、残る約2.1万kmについては平成14年度までに整備を行う。
 また、中心市街地等においては、トラック荷捌き効率化事業等を推進するとともに、都市圏における社会経済情勢の変化に対応した物流施設整備のあり方について検討を進める。
 チ 更新時代を見据えた安全性・信頼性の高い道路空間の確保
 1) 更新時代を見据えた道路管理
 21世紀には国民的資産である道路の修繕・更新の時代を向かえることとなるが、これら増大する維持管理や修繕更新コストを抑制しつつ国民のニーズに応え、道路ストックの健全性、信頼性を維持し、次世代に良好な資産として引き継ぐための「道路ストック管理」が求められている。このため、緊急点検と計画的な維持管理を行うとともに道路管理の高度化・効率化を推進する。また、地域に密着した道路の清掃や植樹管理等についての支援等、積極的な住民の参加・連携の強化などのパートナーシップを背景とした道路管理を進める。
 2) 道路の防災対策・危機管理の充実
 我が国の国土は地震、豪雨、豪雪、急峻な地形、脆弱な地質等、厳しい自然環境下にあるため、多くの災害が発生している。災害を未然に防止しさらに迅速な復旧を図ることは重要であり、特に国民の生活を支える道路の防災対策を積極的に推進する必要がある。
 災害に強い広域幹線道路ネットワークの形成を進めるとともに、道路利用者からの情報収集、道路管理の情報化を図り、地域と連携した防災管理体制を構築する。
 また、積雪寒冷特別地域においては、地域に応じた適切な冬期道路交通対策を推進する。
 
(3)道路政策の進め方の改革
 イ 道路政策の進め方の改革
 1) 道路事業の効率化
 限られた財源の中で、投資効果を最大化するため、投資効果の早期発現を目指した投資の重点化、事業コストの縮減、多様な連携施策を推進する。
 2) 評価システムの導入
 道路政策の効率性、透明性の一層の向上を図るため、「道の相談室」やCS調査等による国民のニーズの把握と的確な対応、効率的かつ効果的な施策展開と事業執行を可能とする評価システムの構築、導入を進めている。また、社会的に大きな影響を与える可能性が高い新しい施策の導入にあたり、地域協力を得ながら、社会実験を積極的に実施し、施策効果の把握や地域住民等の合意形成を図る。
 3) 透明性の確保、パブリック・インボルブメント(PI)の実施
 国民ニーズへのより的確な対応及び円滑な道路政策の実現に向け、施策の立案や事業の計画・実施等の過程で、関係する住民や国民一般に情報を公開した上で、広く意見を聴取し、それらに反映する方式(パブリック・インボルブメント)の一層の導入を図る。
平成12年度は、「パブリック・インボルブメント(PI)実施指針」(仮称)を作成し、広域的な幹線道路の計画過程で幅広くPIを実施することとしている。
 4) パートナーシップの確立
 道路行政に関係する各種機関や国民等との相互理解を深め、円滑かつ効果的・効率的に施策を実施するため、相互に適切に役割分担した新しいパートナーシップを構築する。
 ロ 新技術の開発と活用、国際協力の推進
 1) 新道路技術五箇年計画に基づく技術開発
 平成10年度に策定した「新道路技術五箇年計画」に基づく技術開発を効率的・効果的に推進するため、公募型委託研究を積極的に実施するとともに、新道路技術五箇年計画の中間評価を実施する。
 2) 国際協力の推進
 OECD/RTR(経済協力開発機構/道路交通計画研究)、APEC(アジア太平洋経済協力会議)及びPIARC(世界道路協会)における共同研究を推進する。また、英国・米国・中国・韓国・仏国との間で道路技術ワークショップ、セミナー等を開催する。
 さらに、国際インフラ整備支援調査により、中央アジア地域を対象にした道路整備のためのマスタープランの策定を支援する。
 ハ 新たな道路構造基準の策定
 平成11年9月に「歩道における段差及び勾配等に関する基準」を策定し、高齢者や身体障害者等誰もが利用しやすい歩道の構造を規定した。これにより、沿道への車両の乗入れによる、いわゆる「波打ち歩道」を解消するよう、原則としてフラット型又はセミフラット型(歩道面の高さ5cm程度)の歩道形式の整備を推進することとしている。
 
(4)道路整備を支える道路特定財源制度、有料道路制度等
 イ 着実な整備のための財源確保の必要性
 道路特定財源制度は、道路整備に必要な財源が安定的に確保できるという「安定性」、自動車利用者の誰もが道路整備費を負担するという「公平性」、税負担が道路整備によって税負担者に還元され、その使途と負担の関係が明確であるという「合理性」を有しており、道路整備を推進していく上で非常に重要な役割を有している。
 ロ 有料道路制度を活用した道路整備
 1) 有料道路制度の意義・役割
 平成12年4月現在、高速自動車国道6,615km、都市高速道路606km、本州四国連絡道路164km、一般有料道路2,122kmの有料道路が供用されており、都道府県道以上の延長の5%を占めている。これらの路線を利用する交通量は一日約1,000万台(平成11年度実績)にのぼり、都道府県道以上における総走行台kmの17%(平成9年センサス)を分担している。
 国土の均衡ある発展や地域の活性化等を実現する上で、わが国の道路整備の現状は不十分であり、全国的な高規格幹線道路網の整備や大都市圏等に集中する交通需要への対応等、有料道路制度を活用した幹線道路網の拡充は緊急の課題である。
 2) 有料道路制度の活用等による道路整備の推進
 有料道路制度を活用した道路整備の推進にあたっては、各公団等における、より徹底した建設・管理費の節減とともに、平成12年度は、国費助成の充実、償還期間の延長など公的助成の拡充により、適正な料金水準のもと大都市圏環状道路(首都圏中央連絡自動車道、東海環状自動車道等)の早期整備及び東京湾アクアラインの利用促進を図る。
 3) 有料道路の今日的課題
 有料道路を取り巻く状況の変化に対応しつつ、国民や利用者の理解を得ながら、適正な負担のもとでの着実な整備と利用者ニーズへの対応を進めることが必要である。なお現在、道路審議会において、今後の幹線道路網の整備・管理のあり方、ETCの導入を踏まえた料金のあり方等について審議中である。 
 ハ 道路の機能開発と高度利用の促進に資する道路開発資金制度
 道路開発資金制度は、道路に関する公共の利益に資する事業への民間活力等の導入を促進することを目的として、昭和60年度に創設された制度である。その内容は、道路整備特別会計を原資とする道路開発資金貸付金(国費)及びこれと原則として同額の民間資金をセットにし、長期かつ低利の貸付けを行うものである。
 
 
 
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