(効率的な事業の実施)

 公共事業に対する批判として、省庁の縦割りによる重複投資が行われているのではないか、という批判や、日本の公共事業は割高ではないか、という批判がある。我が国の自然条件等から生じる特殊要因はあるものの、今後財政状況が一層厳しさを増すと予測される中で必要とされる住宅・社会資本整備を進めていくためには、以下に掲げるような公共事業の効率化、重点化等を図ることが必要となってくる。また、後述するように、公共施設等の整備等の促進に当たり、PFIや不動産の証券化等、民間資金を活用した住宅・社会資本整備の新たな手法を積極的に活用し、財政資金の効率的な使用を図ることも重要である。

(1)公共工事のコスト縮減
 限られた財源を有効に活用し、効率的な公共事業の執行を通じて、先進諸外国と比較して立ち遅れた社会資本整備を着実に進め、本格的な高齢社会到来に備えるには、早急に有効な諸施策を実施し、公共工事コストの一層の縮減を推進していく必要がある。
 このため、平成9年の関係閣僚会議決定「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」及びこれを踏まえた「公共工事コスト縮減対策に関する行動計画」に基づき、平成11年度までにコスト縮減のための各種の施策を実施し、それによって公共工事のコストを縮減することを目指している。この際、国民に分かりやすい指標を示すため、本行動計画においては、公共工事コスト縮減に関する具体的数値目標を10%と設定し、毎年フォローアップを行ってきたところである。
 なお、詳細については「第2 国土建設施策の動向」の「III 建設技術に関する総合的な取組み」を参照されたい。

(2)公共事業の重点化
 公共事業の目的は、現在及び将来の国民の安全で豊かな暮らしや活力ある経済発展を支えるために必要な社会資本を整備することであり、国民のニーズも踏まえつつ、真に必要な分野に戦略的・重点的な投資を行っている。
 平成12年度予算においても、このような観点から、都市の再構築や地域の活性化、連携・交流を支えるネットワークの整備、安全で安心できる国土づくり・地域づくりの推進など、現下の政策課題に対応した事業を重点的に実施することとしている。

(3)国と地方公共団体との的確な役割分担
 公共事業については、国と地方が適切な役割分担の下に協調・協力して事務を進めることが必要であり、「中央省庁等改革基本法」(平成10年法律第103号)、「地方分権推進計画」(平成10年5月29日)及び「第2次地方分権推進計画」(平成11年3月26日)等も踏まえ、必要な取組みを行ってきた。
 なお、補助金制度は地方公共団体の自主性を阻害するものではないか、との議論があり、従来からも、できる限り地方公共団体の創意と選択を活かしつつ、真に必要な事業を実施できるよう、補助採択基準の引上げ、補助制度の簡素合理化、メニュー化・統合化等制度の改善を行ってきたところである。さらに、平成12年度予算において新たに「国が箇所付けをしない」ことを基本とする統合補助金制度を創設し、地方公共団体の主体的な取組みや創意工夫を活かした事業を展開することとしている(図表1-4-19)。

(4)省庁間連携
 重点化や効率化等による投資の質の向上を図るため、北海道開発庁、沖縄開発庁、国土庁、農林水産省、運輸省との間で事務次官をメンバーとする「公共事業の実施に関する連絡会議」(平成8年8月21日設置)を開催し、これまでに延べ43の連携施策を実施しているところである。
 また、平成13年の国土交通省の発足に向け、国民にとってより良い行政サービスを提供することを目指して、北海道開発庁、国土庁、運輸省とも連携した政策展開の検討等に積極的に取り組んでいるところである。

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