(1)市場原理を活用するための環境整備

 市場原理を活用し、規制緩和の効果を十分に引き出すためには、行政が民間事業者の活動の舞台となる市場の環境を整備し、事業者が活発に競争できるようにすることが必要である。

1)公正な競争の促進
 民間事業者の完全に自由な活動を認めても、必ずしも競争が活発に行われない可能性がある。例えば、大手事業者が支配的な地位を占めている産業において自由な新規参入を認めた場合、新規参入事業者が既存事業者と対等に競争を行っていくことは困難である。特に、サービス提供のため不可欠な社会資本に豊富なアクセス権を有する既存事業者が存在する場合、新規参入事業者に対して圧倒的に優位に立つことになる。このような場合に活発な競争を展開させるためには、例えば社会資本へのアクセス権を新規参入事業者に有利に配分すること等により、行政が公正な競争条件を整備する必要がある。

2)新たなサービスの創出への支援
 国民のニーズに対応した新しいサービスの創出は、基本的には民間事業者の創意工夫に委ねられるべきものであるが、行政の支援により創造的ビジネス展開が促進される場合もある。例えば、事業者が環境関連の新規ビジネスを展開する場合、規制等の環境政策の動向に大きく左右される。このような場合に、行政が政策の方向性を明確に示すことができれば、事業者にとって将来の不確実性が減少し、安心して新規投資を行うことができると考えられる。
 また、ビジネスに大きな革新をもたらす新技術の中には、膨大な費用を要する基礎研究を要するものもある。この内、公共的性格の強いもの、国家としての産業競争力に関わるものについては、行政が積極的に支援を行う必要がある。

3)交通事業の基盤整備
 港湾、空港等主として交通事業者が利用する基盤は、交通サービス提供のための前提として大きな役割を果たす。前節で述べたように、国土交通省は社会資本整備においても可能な限り民間活力を活用していく方針である。しかし、多額の資金と長期の整備期間を要するこのような基盤の整備については、必ずしも民間単独での投資が望めるわけではない。したがって、可能な限り民間活力の活用を図りつつ、引き続き行政が一定の役割を果たす必要がある。

図表I-3-19 21世紀型交通政策における行政の役割
図表I-3-19 21世紀型交通政策における行政の役割

 

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