アジア諸国等との相互依存関係が深まる中で、従来の国内・国際物流の垣根も相対化されてきており、かつて国内諸地域間でやり取りされていた工業関連物資、暮らしの消費物資の輸送がアジア諸国との間でやり取りされるなど対アジア輸送は準国内輸送とみなせるような状況となっている。このため、国内から海外までの一貫したドア・ツー・ドアの物流サービスのスピーディーな展開がますます重要になってきている。これらアジアにおける物流の変化の中で、日本が国際競争力を維持・向上させるためには、多頻度・高速化やコスト削減等荷主の高度なニーズに対応した効率的な物流サービスの提供が可能となるような基盤整備が必要である。
特に、昨今になりIT革命進展や船舶の高速化に加え、海上運送の規制緩和による競争原理の導入、さらには東京湾口航路整備事業の漁業補償の解決等により、海上輸送を取り巻く環境を大幅に改善できる可能性が高まった。そこで、ハード施策とソフト施策を有機的に組み合わせることにより、船舶航行の安全性と海上輸送の効率性を両立させた海上交通環境として海上ハイウェイネットワークを構築する。
具体的には、以下の施策を推進していく。
1)湾口の国際幹線航路の整備
座礁をもたらす危険のある浅瀬等の存在により船舶航行のボトルネックとなる湾口の国際幹線航路において、浅瀬を撤去することなどにより、航行の安全確保を図るとともに、ボトルネックの解消による船舶航行の高速化を図る。特に首都圏の経済活動と国民生活を支える東京湾の安定的な海上輸送を支えるため、東京湾口航路等の整備に重点化する。
2)湾内航行のノンストップ化
ITを利用した新しい海上交通システムの整備により湾内航行のノンストップ化を図る。特に、14年度以降段階的に義務化されることとなる自動船舶識別システム(AIS
(注2))を活用した船舶の運航支援の高度化と管制の効率化について検討している。
3)中枢・中核国際港湾の整備
国際海運ネットワークの拠点となる中枢国際港湾
(注3)やこれを補完する地域の中核となる中核国際港湾等において、コスト・サービスともに国際水準を視野に置きつつ、国際的な社会資本として大水深コンテナターミナル等の整備を図る。
これらに加え、4)港湾諸手続のワンストップサービス化、5)港湾の24時間フルオープン化等港湾荷役の効率化・サービス向上の推進にも取り組んでいく(
第II部第10章
参照)。
(注1)シンガポール港では取扱コンテナ個数(TEU)の8割、高雄では5割がトランシップ。
(注2)船舶が自船の情報を周囲の船舶や陸上局に継続的に発信し、他船から同様の動静情報を自動的に取得するシステム。
(注3)中枢国際港湾-東京湾、伊勢湾、大阪湾及び北部九州における港湾。