第1節 地球温暖化対策の推進

1.現状と京都議定書締結へ向けた取組みの方向性

 地球温暖化問題については、1997年の気候変動枠組み条約第3回締約国会議で採択された京都議定書において、日本は2008年から2012年までの間に基準年比(1990年。HFC,PFC及びSF6については1995年)6%の温室効果ガス排出削減を行うことが定められた。その後、2001年にモロッコで開催された第7回締約国会議において、京都議定書の運用に関する細目を定める文書が合意された。これを受けて、同年11月12日、内閣総理大臣を本部長とする地球温暖化対策推進本部が開催され、1)現行の「地球温暖化対策推進大綱」の見直し、2)京都議定書締結の承認及び京都議定書の締結に必要な国内制度の整備・構築のための準備の本格化が決定された。

図表II-4-1 日本の地上気温の変化(1898〜2000年)
図表II-4-1 日本の地上気温の変化(1898〜2000年)

 国土交通行政は、関係省庁と連携しつつ、運輸部門や民生部門のうちの住宅・建築物に係る分野等について、地球温暖化対策を推進する立場にある。国土交通省では、このような動きに対応し、国土交通大臣を本部長とする国土交通省地球温暖化対策推進本部を同年11月16日に設置し、地球温暖化対策に取り組む体制を整備した。
 現行の地球温暖化対策推進大綱策定時の予測によると、我が国全体のCO2排出量の2割を占める運輸部門については、2010年の時点で何も対策をとらなければ8,100万t(炭素換算)まで増加すると見込まれており、これを6,800万t(ほぼ95年比と同レベル)に抑制することが求められている。したがって、運輸部門においては、2010年時点で約1,300万tのCO2排出削減を図るための施策を推進することが必要とされている。また、民生部門においては2010年において90年比と同レベルに排出を抑制するため、全体で約2,700万tの温室効果ガス排出削減が必要となっており、そのうち大きな割合を占める住宅・建築物分野の省エネルギーの取組みを推進する必要がある。

図表II-4-2 地球温暖化対策についての国土交通省の取組み
図表II-4-2 地球温暖化対策についての国土交通省の取組み

 しかし、運輸部門では、自家用乗用車の走行量の増加・大型化等により、99年度末までに排出量がすでに約23%増加(90年度比)しており、自動車からのCO2を抑制することが大きな課題となっている。このため、クリーンエネルギー自動車を含む低公害車、低燃費車について普及を推進するとともに、低コスト化、性能面の向上に向けた技術開発等を推進することや交通流対策による自家用乗用車対策のほか、物流効率化や公共交通機関の利用促進等に係る対策の強化が必要となっている。また、民生部門全体でも、新たな機器の普及、オフィスビル等の床面積増加等により、99年度末までに約17%増加しており、住宅・建築物の省エネルギー化等への取組みを推進する必要がある(<図表I-2-43>参照)。


 運輸部門及び住宅・建築物分野は、いずれも国民生活や我が国経済活動の基礎をなすものであり、CO2排出抑制のために交通量やエネルギー消費量の規制といった直接的手段を講じることは、CO2の排出削減効果以上に国民生活や経済活動に与える悪影響が大きいと懸念される。したがって、国土交通行政における地球温暖化対策については、自主的取組みやインセンティブ付与、技術開発の推進等を基本として、国民生活や経済活動への悪影響を最大限回避しつつ進めていく必要がある。

 

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