第I部 人口の減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政の展開 

1.我が国の活力・競争力向上など政策的意義の高い事業への重点化

 少子高齢化により社会保障負担が増大する一方、既存ストックの維持・更新費用の増大が予想される中で、新規の社会資本整備をばらまき的・総花的に行っていく余裕はなく、真に政策的に意義の高い事業に投資を重点化していくことがますます重要となっていく。
 特に、今後、労働力人口の減少や貯蓄率の低下など少子高齢化に伴って予想される負の影響を踏まえつつ、我が国の経済社会の活力を維持・活性化していくためには、経済の生産性を高め、国際競争力の強化に資する分野等への投資を重点的に行っていくことが強く求められる。
 このため、厳しい財政的制約の中で財源の適切な選択を行いつつ、高速交通体系の整備や、魅力ある都市への再生などの分野に重点的な投資を行っていくことが必要である。また、少子高齢化に伴う災害弱者の増加等に対応して、国民の安全・安心を確保するための基盤を着実に整備していくことも重要である。一方、例えば郊外部における新たな都市開発事業や、地方空港の新設などニーズの低下している分野については、投資の縮小や撤退など大胆な見直しを行っていくことが必要である。

 
図表I-3-1-1 近隣アジア諸国での大規模空港整備の進展

日本では、成田空港は、4000メートル、2180メートル滑走路が供用中、3200メートル滑走路が計画中、関西国際空港は、3500メートル滑走路が供用中、4000メートル滑走路が計画中、中部国際空港は3500メートル滑走路が計画中である。ソウルでは、3750メートル滑走路2本が供用中、4200メートル滑走路2本が計画中である。バンコクでは3700メートル滑走路2本が供用中、2本が計画中である。香港では3800メートル滑走路2本が、シンガポールでは4000メートル滑走路2本が供用中である。

 
図表I-3-1-2 アジア諸港に比べ相対的地位が低下している我が国の港湾

1980年から、2001年への世界のコンテナ取扱量の順位を見ると、神戸が4位から25位、横浜が12位から21位、東京が18位から変わらずと、我が国主要港は相対的に低下しているが、香港は3位から1位、シンガポールは6位から2位、釜山は16位から3位と、アジア諸国は順位を上げている。

 
図表I-3-1-3 各国主要都市圏の環状道路の整備状況の比較

環状道路の整備状況として、各国主要都市において計画延長、供用延長、整備率についてそれぞれ比較すると、日本の首都圏では518km、120kmで23%であり、パリでは320km、236kmで74%、ロンドンでは187km、187kmで100%、ベルリンでは222km、213kmで96%となっている。

 

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