第2節 少子高齢化する社会への対応 

2 つながりがもたらす豊かな少子高齢化社会

 豊かな少子高齢化社会を形づくるためには、前項でみた行政等による子育て支援や高齢者対策のみならず、地域・社会全体での取組みがなければ成り立たない。ここでは、子育て世帯・高齢者世帯とこれを取り巻く地域コミュニティの観点から、今後求められるものを考える。

(孤立化の可能性)
 今後の少子高齢化する社会においては、生産年齢人口の割合が減少し、これまでの社会とは異なる対応が求められる。
 世帯の状況をみると、近年、単身高齢者世帯が増加している。また、三世代世帯の割合が低下する(注1)とともに、共働き世帯は増加傾向にあるなど(注2)、子育て世帯の状況も変化していることがうかがわれる。世帯の個別化の傾向が続くと、個々人の単位で生活する人々が増えることとなる。このとき地域・社会との関わりが薄ければ、特に単身高齢者は孤立化する可能性も生じうる(注3)。世帯という血縁的なつながりのみならず、地域・社会全体において支えていくことも重要である。
 
図表96 年少人口と老年人口の合計の割合と生産年齢人口の割合

図表96 年少人口と老年人口の合計の割合と生産年齢人口の割合
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図表97 高齢者を含む世帯の構成の推移

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図表98 雇用者の共働き世帯の推移

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 また、高齢化による課題の一つに、まち全体の高齢化があげられる。第1章でもみたとおり、全国的にみれば小規模な地方公共団体において高齢化率は高い(注4)が、例えばニュータウン等の団地の高齢化といったように、局所的に高齢化率が高くなり、まちづくりの観点から対応が求められる場合もある。
 
図表99 団地の高齢化(千里ニュータウンの例)

図表99 団地の高齢化(千里ニュータウンの例)

(人とのつながりへのニーズ)
 国土交通省の調査において、人とのつながりの程度について尋ねたところ、家族など血縁的なつながりについては4人に3人の人が十分であると答えている一方で、地域とのつながりについては半数程度の人が十分ではないと考えていることがわかった。
 
図表100 人とのつながりの程度

図表100 人とのつながりの程度
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 また、高齢者は他の世代に比べ、地域とつながっておくことで災害など緊急時に助けてもらったり日々の暮らしを充実させたりすることへの期待が高いことがうかがえた。また、今後、地域とのつながりを強めたいという意向は、子育て世帯において高くなっている。
 
図表101 地域とのつながりに対する意向

図表101 地域とのつながりに対する意向
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 人との付き合い方は、対面に加えてインターネット等ITを利用したものも盛んになっている。他方で、国土交通省の調査において、現在でも多くの人々が対面で会う場が必要であると考えていること、また、地域の人々とのつながりを強化するために顔を合わせるような機会やつながろうとする個人の意識が最も必要であると考えていることがわかった。
 
図表102 人との付き合い方に関する考え方

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図表103 地域のつながりを強めるために必要なもの

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 地域活動をきっかけとして、地域とのつながりをもつことも考えられることから、取り組みやすい地域活動から参加したり、NPO等の団体による子育て支援や高齢者との交流などに協力したりすることにより、世帯や世代間のつながりを創出していくことが大切である。その際、交流の場として空き家などのスペースを活用し、地域の子どもやその親を支援することなども考えられる。
 
図表104 子育てを支援する交流拠点

図表104 子育てを支援する交流拠点


(つながりを活かした地域づくり)
 人とのつながりへのニーズもある中、地域・社会全体で子どもや高齢者を見守り支えていく取組みが求められている。特に、世帯の個別化の傾向が続く中では、子育て世帯、高齢者世帯を取り巻く地域コミュニティによって、地域全体による温かい子育て環境を醸成するとともに、高齢化がもたらす課題に対応していくなど、豊かな少子高齢化社会を形づくるべく取り組んでいくことが重要である。今後とも、人とのつながりの中で、少子高齢化時代の地域づくりに取り組んでいくことが求められる。


(注1)三世代世帯は、1989年に14.2%であったが、2009年には8.4%となっている(厚生労働省「国民生活基礎調査」)。
(注2)夫婦と子どものいる世帯(妻の年齢39歳以下)について、末子の年齢別に妻の有業率を2002年と2007年でみると、末子が3歳未満では29.1%から33.1%へ、3歳から5歳では46.1%から51.8%へ、6歳から8歳では58.0%から62.4%へ、9歳から11歳では68.6%から71.6%へと、それぞれ上昇している(総務省「就業構造基本調査」)。
(注3)単身高齢者の生活時間(睡眠時間を除く)を一緒にいた人別にみると、一人でいた時間が12時間2分で、睡眠を除く生活時間の76.8%を占めている(総務省「社会生活基本調査」(平成18年))。
(注4)第1章第2節図表27「市町村の人口規模と高齢化率(2005年)」参照。


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