第1節 ストック効果最大化を目指して

■2 ストック効果の「見える化」

 1では、ストック効果が企業の生産活動や地域経済にも貢献している例を見てきたが、その効果を最大化するためには、民間側にその効果に着目してもらい、最大限有効活用してもらうことが重要である。ここでは、インフラのもたらす多様なストック効果を民間事業者や国民などインフラ利用者に分かりやすく示すため、ビッグデータや利用者等へのアンケート調査等を活用することで客観的に把握し、公表している事例について紹介する。

■京都縦貫自動車道の例〜ビッグデータの利用〜
 近畿地方整備局は、携帯情報から得られる位置情報というビッグデータを活用し、2015年7月の京都縦貫自動車道開通による京都府北部地域の各観光地の訪問者数の分析を行った。「どこにどれだけの方が訪れていたのか」を詳細に把握分析することができ、各観光地で訪問者の数が増加していることが分かった(図表2-1-40、図表2-1-41)。
 
図表2-1-40 分析対象エリア
図表2-1-40 分析対象エリア

 
図表2-1-41 京都縦貫道開通後の訪問者数、宿泊者数(休日)
図表2-1-41 京都縦貫道開通後の訪問者数、宿泊者数(休日)

■中国横断自動車道(尾道松江線)の例〜アンケートの活用〜
 中国地方整備局は、中国横断自動車道の尾道松江線開通の影響を、事業所アンケート注41、道路利用者アンケート注42等により調査した。全線開通注43前の調査であったが、既に尾道松江線の開通が地域の事業活動に貢献していることや、旅行に行く機会の増加等、観光振興につながっていることがわかり、多様な観点から整備効果を捕捉することができた(図表2-1-42)。
 
図表2-1-42 中国横断自動車道(尾道松江線)開通による影響のアンケート
図表2-1-42 中国横断自動車道(尾道松江線)開通による影響のアンケート


注40 「混雑統計R)」データは、(株)NTTドコモが提供する「ドコモ地図ナビ」サービスのオートGPS機能利用者より、許諾を得た上で送信される携帯電話の位置情報を、(株)NTTドコモが総体的かつ統計的に加工を行ったデータ。位置情報は、最短5分ごとに測位されるGPSデータ(緯度経度情報)であり、性別・年齢等の個人を特定する情報は含まれない。
注41 2014年11月21日〜2014年12月15日の期間に、島根県、広島県の事業所1,118件を対象に実施。郵送配布・郵送回収とし、228件回収(回収率20.4%)。
注42 2014年10月12日〜2014年10月26日の期間に、島根県、広島県の21箇所の観光施設の訪問者を対象に実施。手渡し配布・郵送回収とし、7,261名より回収。
注43 全線開通は2015年3月22日。


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