まとめ

まとめ

 インフラユーザーである民間事業者に対するアンケート調査によれば、民間事業者の意識として、企業活動の生産性向上に関して移動(輸送)時間やコストの削減をインフラに高く期待しているなど注52、インフラに対する多様かつ密接な関わりを確認することができた。一方で、インフラを賢く使う取組みの提案については、積極的に参画意思を示す民間事業者は多くなく注53、どちらともいえないという回答が多い結果となった。
 また、国民(個人)を対象としたモニターアンケートによると、住民参加によるインフラ維持管理については、6割以上の国民が参加してみたいと回答するなど、高い参画意思が伺えた注54

 歴史的に見ると、江戸時代には、町人が自ら橋の整備を行い、それらを利活用することによって経済活動を支えるなどの事例が多く見られた。例えば、大阪の橋の9割は町人によって架橋された「町橋」であり、浪華八百八橋は、商人の経済活動を支え、日々の生活や町の発展を支える重要な役割を担ってきた注55。水路に多く囲まれた大阪において橋は必要なインフラであり、当時の商人がその機能・効果を良く理解し、その機能を最大限活用し、経済活動を支え、商都大阪の発展に寄与してきたものと考えられる。
 現代においても、ファナック(株)による栃木県の新工場立地、ダイハツ九州(株)の大分県中津港への新工場の建設・同地域への本社への移転、また、(株)新潟ジャムコの新潟県村上市の企業進出等、道路・港湾等の交通インフラ整備に合わせて、又はその動きを見越して、民間事業者が積極的にその利便性を活かすため、新たに工場等を建設する事例も多数見られるようになっている注56

 上記の事象については、それぞれ時代背景は異なるものの、民間主体がインフラの機能を認識し、インフラを最大限利活用し、その結果、経済活動や企業活動の向上につながっている点で共通が見られる。
 このように、インフラ整備によるストック効果に企業が着目し、その効果を最大限活用するようになれば、「企業の生産性向上」につながるものと考えられ、行政としても、インフラ整備によるストック効果の「見える化」・「見せる化」の取組みが重要であろう。
 例えば、第2章第1節でも紹介したように、ビッグデータやアンケート等の多様な手法を用いて、ストック効果を可能な限り客観的に把握し、公表すること(「見える化」)や、ストック効果を更に効果的に提供しユーザーと共有(「見せる化」)することにより、インフラユーザーがよりストック効果を実感しやすくなることが期待される。

 今後とも、以上のような観点を踏まえて、「賢く投資・賢く使う」取組み、ストック効果「見える化」等、戦略的なインフラ整備に取り組むことにより、「社会のベース」の生産性を向上させ、持続的で力強い成長に貢献していくことが求められる。


注52 特に第3次産業に絞ってみると「集客しやすさ、賑わい空間、マーケットの集約」等を他産業に比べ高く期待している結果となった。
注53 また、産業別に見ると、飲食・宿泊業については突出して多いが、基礎素材型製造業では極めて少ない、という結果になった。
注54 第1章第2節1参照
注55 出典:大阪市ウェブサイト
注56 第2章第1節1参照


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