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国土交通白書 2020

第3節 地域における移動手段を確保するために

■1 現状や将来予測に基づく課題

(1)事業者の経営状況の悪化

(輸送人員の減少)

 第1章第1節2に示すとおり、地方圏においては人口減少に伴い、地域鉄道・営業用バスともに輸送人員が減少傾向にある。この結果、交通事業者の経営は厳しい状況にあり、全国のバス事業者は約7割が赤字、特に地方圏においては約9割が赤字となっている。(図表I-3-3-1)。
図表I-3-3-1 一般乗合バス事業者の収支状況
図表I-3-3-1 一般乗合バス事業者の収支状況
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(担い手不足の深刻化)

 第1章第1節3に示すとおり、自動車運転の職業は有効求人倍率が高く、全職業平均の2倍以上となっており、担い手不足の傾向がある。また、生産年齢人口の減少が継続することで就業者数は産業全体で減少することが予測されるが、特に、道路旅客運送業(バス、タクシー運転手等)は55歳以上の就業者の割合が61.2%と全産業平均(30.5%)に比べ著しく高く、今後担い手不足が深刻化する懸念がある(図表I-3-3-2)。
図表I-3-3-2 就業者の年齢構成(2019年)
図表I-3-3-2 就業者の年齢構成(2019年)
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(2)人口の更なる減少

 2050年(令和32年)における人口増減の状況を見ると、全国の居住地域の約半数で人口が50%以上減少し、人口の増加が見られる地域は東京圏を中心とした都市部等の一部に限られる。また、人口規模が小さい市区町村ほど人口減少率が高くなる傾向があり、特に2015年時点の人口が1万人未満の市区町村で人口が約半分になるなど、地方部で著しい人口減少が起こると見込まれている(図表I-3-3-3)。その結果、小規模な市町村においては公共交通等の利用者が更に減少することから、交通事業者の経営はこれまで以上に厳しくなり、サービスが維持できなくなる可能性がある。

図表I-3-3-3 2050年における人口の状況(2015年からの変化)
図表I-3-3-3 2050年における人口の状況(2015年からの変化)