(ア)過去債務問題の背景


 イギリス国鉄は、1950年代の半ばよりモータリゼーションの進展等から経営が悪化し始め、一時的に黒字の時期はあったものの、それ以外は一貫して赤字経営を続けていた。1980年代初頭、景気後退や競争激化のため深刻な経営難に陥り、関連事業の民営化をはじめとする経営努力の結果、一旦、単年度黒字を計上するものの、1990年度以降には英仏海峡トンネル関連投資等への支出増により赤字に転じていた。
 イギリス国鉄は、1974年以降、運営上の欠損に関しては原則として政府から補償されることとされており、設備投資についても1975年以降は旅客輸送のうち、ローカル線等の輸送に関するものは補助されることとなっていたこと等から、イギリス国鉄の過去債務は我が国やドイツに比べ比較的少額(94年度首で約32億ポンド(約5,440億円:1ポンド=約170円で換算(平成8年9月末現在)。))であった。