(ア) 規制緩和の概要
(イ) 規制緩和の効果
同法の施行後、新規参入する事業者が増加した〔1−1−1図〕。9年3月末の一般貨物自動車運送事業者数(霊柩を除く)は、2年3月末に比べて、8,365事業者、23%増加している。
この間の輸送量についてみてみると、3年度から6年度にかけて、景気の低迷を反映して横ばい又は微増で推移したが、この間も事業者数は増加したため、1事業者当たりの輸送量は減少した。しかし、7年度からは景気の回復を受け、輸送量の増加率が事業者数の増加率を上回ったため、1事業者当たりの輸送量も増加に転じ、8年度には2年度の水準に回復した〔1−1−2図〕。
輸送効率についてみてみると、在籍車両の稼働状況を表す実働率、稼働車両の実車率は、いずれも低下傾向にあり、また、稼働車両当たりの輸送トン数も2年度以降減少しており、競争の激化により、輸送効率は低下している〔1−1−3図〕。
しかし、このような厳しい競争の中から、規制緩和によって積合せが自由になったことを利用して積合せ事業の全国展開を図る動きなどがみられ、市場が活性化してきている。
(b) 実質的な運賃水準の低下
トラック事業の単位当たり営業収入は、いわゆるバブル経済期には上昇したものの、バブル崩壊後は低下傾向にある〔1−1−4図〕。これは不況による貨物輸送量の低迷の影響が大きいと思われるが、7年度に輸送量が増加に転じた後も特に一般トラック(特別積合せ及び霊柩を除く。)の実質的な運賃の低下が続いており〔1−1−5図〕、事業者数の増加による競争激化がその背景にあるものと考えられる。
(c) 生産性の向上
従業員数は増加しているが、従業員数の増加率は、輸送量の増加率に比べて低い。また、従業員1人当たりの付加価値額は上昇している〔1−1−6図〕。
厳しい競争環境にあり、実質的な運賃水準が低下する中で、大手トラック事業者では、経費を抑えるため、比較的に人件費の安い中小事業者のトラックを傭車することによって対応する動きもみられる。
(d) 多様なサービスの展開
従来、トラック事業は、主としてメーカーや商店等企業の物流を対象としていたが、戸口から戸口への配達が行えるという自動車輸送の特性を活かした宅配便の急成長〔1−1−7図〕等により、一般家庭、消費者へとその対象を広げてきた。
宅配便は、当初、新たに参入する事業者も多くシェアのばらつきもみられたが、最近は上位5社のシェアが拡大し、寡占化が進んできている〔1−1−8図〕。しかし、運賃は、この間の消費者物価指数の上昇率とほぼ同じ水準にとどまっている〔1−1−7図〕。配達時間も短縮されており、ある事業者では、翌日配達エリアが約10年前に比べ、30%から60%に拡大している。また、クール宅配便、時間指定サービス等事業者の競争を通じた創意工夫による新しい輸送サービスが提供されるようになっている。
このほか、引越輸送についても、単身赴任者用の引越パック等の新しいサービスが出現してきている。
(ア) 規制緩和の概要
(イ) 規制緩和の効果
昭和61年度から平成8年度までにダブル・トリプルトラック化された路線は42路線で、このうち、33路線は3年度以降に実施された〔1−1−9図〕。
3年4月から8年4月までにダブル・トリプルトラック化された24路線について、ダブル・トリプルトラック化後1年間の輸送量の伸び率をその前3年間の平均伸び率と比較してみると、16路線で伸び率が上昇している。この24路線について、ダブル・トリプルトラック化後1年間の実際の輸送人員と事前3年間の平均伸び率から推定した輸送人員との差をダブル・トリプルトラック化による増加分とみると合計で約62万人となり〔1−1−10表〕、これは3年度から8年度までの間の全航空輸送量の増加分の約5%に相当する。
事前購入割引、幅運賃制度の導入により、季節、時刻、購入時期等によって運賃が変わることとなり、運賃の多様化が進んだ。
旅客人キロ当たりの旅客運賃収入の推移をみると、昭和61年度から平成3年度までは上昇傾向にあるが、4年度以降低下が続いている〔1−1−9図〕。旅客人キロ当たりの旅客運賃収入の低下は、景気の低迷の影響もあると思われるが、3年度以降ダブル・トリプルトラック化路線が増加し、競争が激化したこと及び事前購入割引、幅運賃制度の導入によるものと思われる。利用者も、約40%の者が、事前購入割引によって運賃が安くなった、飛行機が利用しやすくなったと考えている〔1−1−11図、1−1−12図〕。
各社が自主的に運賃を設定して届け出ることとなったことから、8年2月から3月にかけて他社の運賃設定をみながら運賃を値下げする動きがみられた。しかし、当初は18路線について他社と異なる運賃を設定する動きがみられたが、割高になった事業者が同額に値下げする等の対応をしたため、結果的には事業者によって運賃が異なったのは8路線にとどまった。
ダブル・トリプルトラック化により乗り入れ航空会社が増えるとともに便数が増加し、利用者の利便性が向上している。このことは、利用者からも高く評価されている〔1−1−13図〕。
航空事業における競争環境は厳しさを増しており、航空事業者は、コストの削減と生産性の向上に努めている。
航空事業における有効トンキロ(すべてのスペースが利用されたとした場合の輸送量)当たりの営業費用は、2年度までは上昇していたが、その後は低下傾向にある〔1−1−14図〕。
従業員数は4年度までは増加し、その後減少していたが、8年度には増加している〔1−1−15図〕。従業員1人当たり輸送量は上昇傾向にあり、8年度は2年度に比べ、24%増加している〔1−1−14図〕。
また、競争の激化に対応して、採算性の悪い路線については、運休又は減便等の動きがみられる一方で、競争力のある路線を強化する動きもみられるなど、今後の規制緩和の推進に伴い、航空事業者において、路線の整理・再編に向けての動きが生じる可能性もある。
幅運賃制度の導入に際し、航空各社は需要の時期的な波動を平準化する観点から、多客期、通常期、閑散期ごとにきめ細かく運賃を変え、また、1日のうちでも早朝等利用者の少ない時間帯の便の運賃を割り引くなどの工夫をして、全体として輸送効率を上げようとしている。
4月から12月までの9ヶ月間の1ヶ月ごとの利用人員の対前年同月比を7年と8年とで比べてみると、8年は7月、9月に比べて8月の伸び率の低さが目立っており〔1−1−16図〕、季節的な運賃の設定により、多客期で運賃が割高な8月からその前後の7月及び9月に需要がシフトしたことがうかがわれる。
このように時期によって運賃が変わることについて、利用者も肯定的に受けとめている〔1−1−17図〕。
(ア) 規制緩和の概要
(イ) 規制緩和の効果
9年3月末までに全国77の運賃ブロックのうち35ブロックで多重運賃が発生し、大阪、名古屋、京都においてはかなりの車両数が多重運賃となった(これら3都市合計で約2,800両の車両の運賃が多重化した。なお、9年4月以降は消費税率引き上げに伴い課税事業者と免税事業者で運賃が二重化(課税事業者は税率引き上げ分を運賃に転嫁、免税事業者は運賃据え置き)したため、ほとんどの地域で運賃は多重化している。)。同時に割引運賃等の設定の弾力化を図ったことから、需要の喚起、利用者ニーズに即したメニューの多様化が図られてきた〔1−1−18表〕。また、8年6月の観光ルート別運賃認可の弾力化により、9年7月現在727ルートで通常運賃とは別立ての割引運賃が設定されている。
さらに、9年度からのゾーン運賃制導入により、上限運賃額を下回る運賃を設定した事業者は、9年9月30日現在全国で29地区329事業者2,707両となっている。また、近距離旅客の運賃負担軽減とタクシー需要の開拓をめざして初乗距離を短縮した運賃を設定した事業者は、9年9月30日現在全国で、18地区129事業者5,378両となっており、運賃・料金の一層の多様化が進んできている。
増減車の弾力化を認めたことにより、5年10月以降約1,500両の期間限定の増車が東京地区においてなされた(このほか、東京地区では夜間の輸送力強化のため、約1,400両のブルーラインタクシーを導入している。)。
また、9年度以降の需給調整基準の弾力化により、例えば、東京地区では9年7月3,000両(うち300両を新規免許申請者に配分)の増車可能枠が公示され、かつ、最低保有車両数についても縮減が行われていることから、9年8月、13社657両から新規免許の申請があり、33年ぶりに新規参入が見込まれる。さらに、事業区域の統合・拡大により、より弾力的・効率的な事業運営が可能となることからも、事業の活性化が期待される(9年7月現在1,437事業区域まで統合)。
また、乗合タクシーの参入規制の弾力化により、コース数が6年7月の102から9年4月の161へと約60%増加し、深夜輸送等における利便向上が図られている。
(ア) 物流コストの削減等に資する諸規制の見直し
(イ) 旅客輸送サービスの向上等に資する諸規制の見直し
貸切バス事業の需給調整基準について、9年度から一定の実働率(年間平均60%等)以上の事業区域においては増車を認め、弾力化及び透明化を図っている。また、3年以内に現行の市郡単位等の事業区域を都道府県単位へ統合する措置とともに、事業区域及び車種ごとに定められている最低保有車両数について、最大で10両であったものを最大で5両に縮減する措置を講じたところである。
この需給調整基準の弾力化により全国で9年6月から8月にかけて、大型車1,426両、中型車735両の増車可能枠が公示され、また、最低保有車両数の縮減が行われたことから、新規参入の増加が見込まれる。
7年4月から、路線バス等において、営業政策としての運賃・料金の割引について、認可制を届出制へと緩和した。また、旅客鉄道においては、従来から届出制となっている営業政策としての運賃・料金の割引に加えて、標準的な特急料金を下回る特急料金やグリーン料金等について、認可制を届出制に緩和した。その結果、例えば、乗合バスでは、バス・バスやバス・地下鉄の乗り継ぎ割引、夏休み専用定期の導入等、旅客船では閑散期割引等の割引制度が出てきており、旅客鉄道では、一部の特急料金や、グリーン料金の引き下げが行われるなど需要に応じた運賃・料金の柔軟な変更が行われるようになっている。
旅客鉄道について、9年1月から総括原価方式の下での上限価格制が導入された。これによって、並行路線での競争力強化や乗り継ぎ利便の向上等のために、一部区間の運賃を引き下げる等の例が見られる。
(ウ) 国民生活の利便性の向上に資する諸規制の見直し
(注)前検査、後整備:従来、定期点検整備については、車検(継続検査)を受ける前に行うこととなっていたが、車検の後に行ってもよいこととし、整備の実施時期について自動車ユーザーによる選択を可能とした。
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