自動車の低公害化は、地球環境への負荷の低減のためにも有効である。従来のガソリン自動車、ディーゼル自動車といった自動車に比べてCO2の排出抑制等の面ですぐれている低公害車の開発及び普及促進が進められている。現在実用段階にある低公害車としては、メタノール自動車、ハイブリッド自動車、圧縮天然ガス(CNG)自動車、電気自動車の4種類があり、その概要は次のように、またその導入状況は図のようになっている〔1−2−27図〕。
アルコールの一種であるメタノールを燃料とする自動車である。メタノールは主に天然ガスより生産されるので、石油代替性にすぐれている。現在は集配トラック等に使用されているが、今後の普及のためには燃料供給施設の設置等の必要がある。
(b) ハイブリッド自動車
複数の動力源を組み合わせて低公害化や省エネルギー化を図る自動車であり、従来車と同様にガソリン・軽油を燃料とするため、専用スタンド等の特別な設備は必要なく、また、補助動力等を使用することによりCO2排出量を減少させることが可能である。当初は、制動時に発生するエネルギーを電気または油圧として蓄積し、発進・加速時にエンジンの補助動力としてこれを使用するタイプが主流であり、平成3年から路線バスに導入されていた。最近では、エンジンの出力を車軸への直接出力と発電機及びモーターを介して車軸に伝える間接出力とに分離し、両者を最適な比率に組み合わせて走行する等の新しいタイプも開発され、9年12月には乗用車として量販されるものも登場し、地球温暖化防止を図る上で注目される。
(c) 圧縮天然ガス(CNG)自動車
天然ガスを燃料とする自動車である。CO2排出量はディーゼル車に比べて2割程度削減される。7年2月に技術上の基準が整備され、検査の上で一般車両と同様の扱いとなり、路線バス、共同集配トラック等に使用されている。
(d) 電気自動車
バッテリーに充電された電気によりモーターを回転させて走行する自動車である。走行時におけるCO2排出は全くない。現状では、動力性能や一回の充電による走行距離の制約により用途は限られているが、高性能・低コストのバッテリーの開発や充電施設の設置等により、用途の拡大が期待できる。
低公害車の普及促進のためには、一層の技術開発による性能の向上、大量生産による価格の低減等が必要である。特に、低公害車は従来車に比べて生産コストが高いことから、普及促進によるコスト低減を図るため、低公害車の開発や使用に関して次のような支援措置を講じている。
運輸省では、10年度に先駆的低公害車実用評価事業として、実用化のめどのついた低公害車の検査を適切かつ合理的に実施するため、先駆的低公害車を導入する者に対し、その購入に要する費用の一部を補助するとともに、導入された先駆的低公害車について、実際の使用段階における使用状況及び低公害性能や安全性能をモニタリングすることにより技術的情報を的確に把握し、新しい機構が採用されている先駆的低公害車の検査基準の整備を図ることとしている。
(イ) 税制措置等
4年度より、エネルギー需給構造改革投資促進税制として、低公害車またはその燃料供給施設について、所得税または法人税に係る一定の特別償却または税額控除が認められている。また、自動車取得税、固定資産税等についても優遇措置が講じられている。そのほか日本開発銀行や北海道東北開発公庫による公的融資措置がある。
また、5年度より、(社)全日本トラック協会等による運輸事業振興助成交付金を活用した低公害車の導入またはその燃料供給施設に対する助成措置があり、9年度末現在、これを活用したリース契約による低公害車が452台走行している。
前述したような低公害車の普及とともに、従来のガソリン自動車・ディーゼル自動車についての燃費の向上に取り組んでいる。
我が国の自動車の燃費性能の向上は、第2次石油危機以降、昭和54年に施行された「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に基づき、運輸省と通商産業省の連携のもとで燃費改善目標値の設定による指導、また燃費の公表等により図ってきたが、60年度には当初の目標値を達成した。
しかし、その後、自動車の大型化、オートマチック車の増加〔1−2−28図〕、RV車の普及、安全装置の装備による車両重量の増加等により燃費が悪化する傾向にあることから、運輸省では通商産業省と連携して、新たな燃費目標値を定め燃費の向上を図ってきた。こうした状況の中で、地球温暖化防止京都会議における京都議定書の採択を受けて、より一層燃費の向上を図るため、省エネ法の改正により平成11年4月から燃費に係る基準をトップランナー方式(従来における最高の省エネルギー性能を持つ自動車を基準としてそれ以上の水準をめざす方式)の考え方に基づき強化し、22年度までに7年度比15%ないし20%超の燃費向上をめざすこととしている。10年7月には、運輸技術審議会に「自動車の燃費基準の強化について」を諮問したところであり、総合エネルギー調査会との合同審議を経た答申に基づいて具体的な燃費基準の策定等を行っていくこととなる。
以上の自動車単体自体に係る施策に加え、消費者が自動車を購入する際に低燃費車を選択するように誘導し、低燃費車への代替の促進を図る施策が有効である。10年6月の「地球温暖化対策推進大綱」の中でも、低燃費自動車の一層の普及促進を図るため、自動車関係税制を含めあらゆる政策手段について検討することとされている。これを受けて運輸省では、同年9月に低燃費自動車の一層の普及促進策について運輸政策審議会に諮問を行い、10年度末を目途に答申を得ることとしている。
鉄道車両では、VVVF(電圧可変・周波数可変)制御等のエネルギー効率のよい制御方法の採用や、アルミ合金・ステンレス鋼の軽量な車体の採用により、省エネ型車両の導入をすすめている。VVVF制御については、4年度よりエネルギー需給構造改革投資促進税制として、これを採用したモーター用回転数制御装置について、所得税または法人税に係る一定の特例措置が認められている。
船舶では、推進抵抗の軽減、船体の軽量化、エンジンの効率改善、船内エネルギーの有効活用等エネルギー消費効率の向上をめざした技術開発がすすめられ、これらの成果が実船に活用されてきている。
航空機では、搭載品の軽量化等による燃費改善とともに、エネルギー効率のよい高性能新型航空機の導入をすすめている。また、大規模空港等において地上駐機時に地上電源を使用することによって、エネルギーの消費効率の向上を図っている。
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