4 道路交通の円滑化


(1) 渋滞時とスムーズな走行時の二酸化炭素排出量の比較

 前述のような自動車の増加に伴って、都市交通における渋滞問題が顕在化してきており、自動車の走行速度低下によるCO2排出量の増加を招いている。乗用車の表定速度とCO2排出量の関係をみてみると、時速10kmのときに比べて、時速40kmのときにおける1kmあたりのCO2排出量は半分以下となっており〔1−2−37図〕、地球温暖化防止の観点からも、渋滞を解消し、適正な速度で自動車が走行できる環境づくりが求められている。

(2) 交通需要マネジメント(TDM)

 5年11月、各都道府県において「新渋滞対策プログラム」を策定し、この中で、パーク・アンド・ライドや相乗り・時差通勤などを道路交通の需要サイドに働きかける「交通需要マネジメント(TDM)」に新たに取り組むこととした。そして、6年度に運輸省、警察庁及び建設省が連携して、交通需要マネジメント施策に積極的に取り組む都市を支援する「総合渋滞対策支援モデル事業」を創設し、渋滞対策協議会において、事業実施都市の指定状況や取り組み及びこれによる効果等の報告等を行い、各地における交通需要マネジメントの取り組みの推進を図っている。
 現在、札幌市、北九州市等13都市において、総合渋滞対策支援モデル事業として、パーク・アンド・ライド、企業の通勤シャトルバスの運行、時差通勤・フレックスタイムの導入、公共交通機関利用促進、物流効率化、関係者によるTDMシンポジウムの開催等の具体的な交通需要マネジメント推進のための施策を実施している。

(3) 高度道路交通システム(ITS)の導入

 「高度道路交通システム(ITS)」は、最先端の情報通信技術を用いて人と道路と車両とを一体のシステムとして構築することにより、道路交通の安全性の確保、輸送効率の向上等による道路交通の円滑化等の実現を図るものであり、8年7月に、運輸省、警察庁、通商産業省、郵政省及び建設省の関係5省庁により「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」が策定された。ここでは、ITSの開発分野を9つに分類し、各分野ごとに利用者を設定した上で、提供すべきサービスを「20の利用者サービス」として具体的に提示している。運輸省では、本構想に基づいて先進安全自動車(ASV)の開発、バス運行、トラック輸送でのITSの活用等を進めていくこととしている(第2部第6章参照)。

(4) エコドライブの推進

 CO2排出抑制のためには、ドライバーの意識向上と協力が不可欠である。駐停車時の無用なアイドリングの停止、適正な速度での走行等の「エコドライブ」に国民全体で取り組むことは、現代の自動車社会の中において極めて重要であり、CO2削減について大きな効果が期待されるものである〔1−2−38表〕。
 運輸省としては、個人レベル・企業レベルでのCO2排出抑制に向けて自動車ユーザーとしての意識向上を図るための啓発活動を実施するほか、エコドライブの推進を国民的活動として展開していくため、関係団体等からなるエコドライブ普及推進協議会を設立し、運送事業者等を対象としたエコドライブコンテストや、一般ドライバーへの普及啓発活動等を進めている。


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