貨物輸送について、近年の輸送機関別輸送トンキロあたりのCO2排出量をみると、最も少ない鉄道を100とした場合、内航海運164、営業用普通トラック819、自家用普通トラック1,381となっている〔1−2−34図〕。
我が国の国内貨物輸送は、機動性にすぐれたトラック輸送を中心とする体系になっているが、CO2排出量の少ない物流体系を形成するには、トラックに比べてエネルギー効率がよく、CO2排出量の少ない輸送機関である鉄道や内航海運の輸送分担率を高めるモーダルシフトを推進する必要がある。9年4月に策定された「総合物流施策大綱」及び10年6月に策定された「地球温暖化対策推進大綱」の中でも、鉄道及び内航海運の活用を図ることとされている。特に長距離雑貨輸送については、鉄道・内航海運が占める割合を現在の約40%から2010年(平成22年)には約50%に向上させることが目標とされ、以下のようなモーダルシフトの推進のための施策を推進している。
鉄道貨物輸送力増強策として、東海道線を走行する貨物列車の編成長大化を図るため、運輸施設整備事業団からの無利子貸付により、貨物ターミナルの改良、待避線の有効長の延長、供給電力量を増強するための変電所の整備等を行ったほか、平成10年度には武蔵野線、京葉線の貨物列車走行対応化事業を実施することとしている。また、効率的な鉄道貨物集配システムの構築を行っていくこととしている(第2部第5章参照)。
内航海運では、運輸施設整備事業団の共有建造方式を利用し、内航コンテナ船、内航RORO船等の整備をすすめ、輸送力増強と輸送コストの低減に努めるとともに、10年5月には内航海運暫定措置事業を導入することにより、船腹調整事業の解消を達成して、輸送効率化を進めやすい環境整備等を行っている(第2部第7章参照)。
また、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルへの陸上輸送半日往復圏(トラック輸送で1日2往復が可能となる圏域)の人口カバー率を21世紀初頭には約9割に向上させることを目標に、着実に内貿ターミナルの整備をすすめている。コンテナデポやフォークリフト等の複合一貫輸送施設、機器の整備に対しても融資措置を行っている。今後とも港から陸上の輸送を担うトラックとの連携を強化するためアクセス道路の整備等を含め、ハード、ソフト両面からの強力な対策を推進することとしている。
(3) 港湾整備による国際海上コンテナ貨物の国内陸上輸送距離削減
現在、我が国では国際海上コンテナ貨物の約4割が地方圏で生産・消費されているにもかかわらず、地方圏の港湾で取り扱われている国際海上コンテナ貨物は約1割であり、大部分の貨物については三大湾及び北部九州の中枢国際港湾へトラックによる陸上長距離輸送を行っているのが現状である。
そこで、トラックによる国際海上コンテナ貨物の国内陸上輸送距離を削減するため、中枢国際港湾のみならず、各地方圏の中核となる中核国際港湾(全国8港)において、コンテナターミナルの拠点的整備をすすめている。
都市内物流及び地域間物流において、荷主ニーズの多様化・高度化等を背景にトラック輸送への依存度が高まっている一方で、トラックの積載効率はほぼ横ばいで推移している。このため、トラックの積載効率を向上させることにより、総走行距離を減少させ、CO2排出量の削減を図ることが求められている。トラック全体の積載効率については、21世紀初頭までに約50%とすることが目標とされ、以下のような諸施策を講じている。
都市内物流においては共同集配システムの整備を行っている。共同集配システムとは、商業業務集積地の近郊に共同集配センターを配置し、そこで商業業務集積地内に流出入する貨物を集約し、トラックの積載効率を向上させ、当該地域のトラック走行台数の削減を図るものである。共同集配の実施においては表のような効果が確認されており〔1−2−35表〕、行政、荷主及びトラック事業者等の連携のもと、福岡市の天神地区をはじめとして全国的に取り組みがすすめられている〔1−2−36表〕。
なお、都市における共同集配事業は、トラック走行台数の減少による市街地内の交通環境の改善等を通じて、中心市街地の活性化にも大きな役割を果たすことから、中心市街地整備改善活性化法により、税制上の特例措置が設けられている。
(イ) 地域間物流における幹線共同運行
6年11月より地域間物流においてトラックの幹線共同運行が実施されている。幹線共同運行とは、土曜・日曜等の閑散期において、複数の特別積合せ事業者が幹線区間の輸送を共同で行い、幹線トラックの積載効率を向上させようとするものである。9年度末現在、全国で21区間、のべ49事業者が参加して行われている。これにより、積載効率の向上が確実にみられ、地域間物流の効率化に寄与している。今後とも共同運行の実施区間の拡大と事業者の参加を促すことにより、幹線共同運行を推進し、地域間物流の一層の効率化を図ることとしている。
(ウ) 自家用トラックから営業用トラックへの転換推進
自家用トラックについては、複数荷主による積合せができず片荷輸送も多いことから、営業用トラックと比較して積載効率が低い場合が多いため、自家用トラックから営業用トラックへの利用の転換を推進している。
トラック1台あたりの積載量の増加によるトラック輸送の効率化を図るため、トレーラー化及び車両の大型化を推進している。5年に車両総重量について規制緩和が実施され、従来の基準である車両総重量20トンまでから、大型トラックは最大25トンまで、セミトレーラーは最大28トンまでとされた。さらに10年4月には、一定の路線について、国際規格であるISO(国際標準化機構)規格の40フィート及び20フィートコンテナをフル積載した状態でのセミトレーラーの通行が可能とされた。トレーラー化や車両の大型化の一層の促進を図るためには、これらに対応した物流インフラの整備が不可欠であり、シャーシプールの整備に対する公的融資等を行っている。
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