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海の上では、衝突を防止するため「行会い船の航法」「横切り船の航法」「追越し船の航法」「各種船舶間の航法」などの様々な航法が決められていますが、
相手船の状況がわからなければ、どの航法で避ければ良いのか、判断することができません。
そこで、夜間に灯火を表示するのと同じように、その状況に応じて昼間(日出から日没までに薄明時を加えた時間)には形象物を掲げることが定められていま
す。
船で使用される形象物には以下の5つがあります。
A 球形形象物 | B 円すい形形象物 | C 円筒形形象物 | D ひし形形象物 | E 鼓形形象物 |
錨泊中等 | 機走中の帆船等 | 喫水制限船 | えい航船等 | 漁ろう中の漁船 |
※すべて黒色と定められています。定められた形状を網で形作ったものが一般的です。 |
それでは、船の形象物のうち、錨泊中の形象物、えい航中の形象物について説明します。
1 錨泊中の形象物
錨泊している船舶は、前部のもっとも見えやすい位置に、Aの球形形象物を掲げます。
「漁ろうに従事している場合」、「工事や作業に従事している場合」、「水先業務に従事している場合」は、錨泊中であっても別の形象物を掲げる決まりがあ
りますが、それ以外の船舶が錨泊中には、球形形象物を掲げることになっています。
例外として、長さ7m未満の船舶は、錨泊場所が狭い水道など他の船舶が通常航行する水域でない場合、形象物を掲げなくてもよいことになっています。
錨泊中の形象物
(前部に球形形象物1個)
2 えい航中の形象物
引船が他の船舶や物件を引いている場合、その物件の大きさから全長が数百メートルになることもあります。
引船を見たときに、1隻のみで航行しているように見誤ってしまうと、その引かれている物件に気づかないで曳索等に接近することがあるので注意が必要で
す。
また、船舶その他の物件を引いている航行中の動力船は、そのえい航物件の後端までの距離が200mを超える場合は、もっとも見えやすい場所にDのひし形
形象物1個を掲げます。
えい航中の形象物
(えい航物件が200mを超える場合、ひし形形象物1個)
引いている物件が、木材などのように相当部分水没していて周りの船から見えづらい場合は、そのえい航物件の最後部にDのひし形形象物1個を掲げます。
また、その物件が200mを超える場合は、最後部のひし形形象物に加えて、最前部にもひし形形象物1個を掲げます。
昼間であっても、引いている船から離れたところで、海面上にわずかしか出ていないものは発見しづらいものです。ひし形の形象物はえい航のサインですので忘れずに!
えい航物件の相当部分が水没している場合の形象物
(その物件の最前部、最後部にひし形形象物1個)
◎ もう少し詳しく知りたい場合は |
灯火及び形象物 通則 海上衝突予防法 → 第20条 |
航行中のえい航船等 海上衝突予防法 → 第24条 |
錨泊中の船舶及び乗り揚げている船舶 海上衝突予防法 → 第30条 |
錨泊船や引船は港内などでよく見かけることができます。
昼間であれば形象物を見なくても、すぐにそれとわかることが多いと思いますが、どんな形象物が掲げられているか、確かめてみてはいかがでしょうか。
次回、昼間の航海 船の形象物(その2)では、「各種船舶間の航法」の対象となる、帆船、漁ろうに従事している船舶、操縦性能制限船、運転不自由船が掲
げなければならない形象物について説明します。