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序章

われわれが、この報告で試みようとしていることは、首都機能移転という壮大な歌劇の序曲を奏でることである。

わが国における首都機能移転の歴史をたどると、天皇の御代ごとに都が移っていた古代史の世界を除けば、そこには必ずといっていいほど秩序の混乱か武力闘争が伴っていた。

われわれがチャレンジしようというのはこういう首都機能移転ではない。わが国史上初めて未来への夢と希望を抱きながら大多数の国民の合意を図りつつ平和裡に行おうとするものである。

この報告は、当調査会が国会等の移転に関する法律に基づく調査会として設置されて以来、最も心をくだいてきた課題「如何にして多数の人々の理解を得て首都機能移転を推進することができるか」について何らかの答えを出そうとするものである。

当調査会は、まず最初に「今なぜ首都機能移転が必要か」について議論した。その流れは第1章1「転換期を迎えた日本とその21世紀における新しい方向」及び2「首都機能移転の意義」において詳述してあるが、一言でいえば「変革とそれへの的確な対応」である。

滔々(とうとう)たる社会の変革の流れに的確に対応しようとする方法は、首都機能移転以外にもいろいろあるだろう。しかし、その意義、もたらされる効果、後の世代にも及ぶ影響力、その他首都機能移転自体がそれ自身内在的に持つ変化を促進する力を考えた場合、それは抜きん出たインパクトを持つ。

3「首都機能移転の効果」は、こうした効果をできるだけわかりやすく根拠を示しつつ説明してみようとしたものである。ここで触れられた「移転の効果」の一つひとつが多くの国民に共感を持って迎えられたらと思う。

4「新首都時代の創出」は、まさにわれわれが描こうとする「新首都の創造」と「その時代の展望」である。

まず、われわれはどんな新首都を創ろうとしているのか、そしてそれにはどんな問題点や考慮すべき事項があり、それらをどう克服していったら良いのか、当調査会なりの解決策を探ってみた。

そして、新首都が創り出す新しい時代の展望である。様々な個性が自由に躍動し、透明な政治や行政のシステムが確立し、豊かな交流が実現して、地域社会もいきいきとよみがえってくる。そんな時代を描いてみた。

次に当調査会では、「新首都にはどのような機能が移転するのか」「新首都はどのような都市か」など新首都の具体的なイメージと、首都機能移転及び新首都づくりのプロセスと手法について議論した。

第2章「移転の対象は何か」では、新首都にはどのような機能が求められているかを明らかにし、第3章「新首都はどのような都市か」では、新首都のビジョンとして都市のイメージ、都市の形態などを明らかにしてきた。成熟した民主主義社会の下で国民に開かれた新首都とは何か、21世紀のわが国の進路を示すキーワードとして、「平和」「文化」「環境」を表象する新首都とは何か、広く国民各層の議論に供し、イメージの共有を図りたい。

第4章「首都機能移転はどのように進められるのか」では、まず、地震等大規模災害に対する脆弱性の克服を急ぐとともに、様々な面からわが国の変革を促進するため、首都機能移転の早期実現が求められていること、そのための手順として、新首都の発展段階に応じ、また、今後起こり得る種々の変化や変革に的確に対応できるよう、段階的、弾力的に移転を進めるべきであることを述べた上で、特に建設開始から約10年で国会を開催することを想定した第一段階の新首都像を明らかにするとともに、新首都を建設するという特別な公共性等に着目して、都市づくりの制度・手法として、環境の形成・保全、土地対策、計画・事業実施の主体、開かれた手続きなどについて、新首都づくりに真にふさわしい制度等の具体的な提案を行っている。

さらに、当調査会では、「新首都はいつ、どこへ」という、新首都の場所を選定するための基準、方法、移転の時期の目標について議論を行うとともに、首都機能移転後の東京の整備のあり方についても議論し、今回の当調査会における調査審議を総括した。

第5章「新首都はどこへ」では、今まで議論されてきた、新首都の基本理念を体現し、移転の意義と効果を発揮させるために新首都に求められる要件を明らかにし、その選定基準を示すとともに、多くの国民や移転先地の地元の合意形成を図りつつ、公正・透明な手続きで移転先地を選定する方法について提案を行っている。

第6章「いつ移転するのか」では、世紀を画する年に首都機能移転のメルクマールを置き、21世紀にふさわしい国政全般の改革の契機とすることを目標とするとともに、これに向けて専門的選定機関を設け、今後2年程度を目途に移転先候補地を選定し、国会に報告することを提案している。

第7章「世界都市「東京」の新たな出発」では、東京を住みやすく働きやすい安全な都市としていくため、首都機能移転跡地の適切な利用のプログラムを検討する体制を国と東京都等で整備することを提案している。

明治維新以来100有余年、東京はわが国の首都として、また、あらゆる機能を吸引したわが国最大の都市として輝き続けてきた。やがて新世紀を迎え、首都機能の移転がスタートした後も、数十年の間は、東京は新首都と並ぶわが国の政治・外交の表舞台としてあり続けるであろう。重ねて東京には、世界の市場を三分する極の一つとして営まれてきた経済活動の集積と、江戸開府以来約400年の都市活動のバイタリティに支えられた文化の蓄積が行われてきた。首都機能移転後も、東京はいわば経済首都、文化の都たる誇り高い大都市として光彩を放ち続けるであろう。

首都機能移転については、古くは明治時代から幾多の議論がなされ、特に昭和30年代以降からは、具体的な地名やアイデアなど様々な提言がなされてきた。今、首都機能移転は、実現に向けて大きく前進しようとしている。当調査会では、今後、国民各層の間でさらに具体的、現実的な議論が可能となるよう、新首都の具体像や場所の選定基準等、誰もが胸の中に描き得る検討材料を提供することに努めてきた。様々なアイデアが集約され、磨き上げられて、国民の合意のもとに首都機能移転が一歩一歩実現に向けて近づいていくことを望むところである。

新世紀は、すでに目前である。

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