齋藤 氏
そろそろ時間が来たようであります。最後に、この首都機能移転問題のポイントと言いましょうか、こういうことが必要であるというご提言をいただきたいと思うんですけれども。パネリストの皆さんには、色紙にキーワードをお書きいただいて、それを基にご提言いただければなと思います。では、石井さんの方からお願いいたします。
石井 氏
私は、我田引水的ですが、「21世紀に光を! 新しい都市・文化の創造」。何か明るい光が欲しい。それが、新しい都市、文化の創造だということを考えております。
齋藤 氏
21世紀に光を。その光というのは、今20世紀は暗闇だということですかね。
石井 氏
やっぱり今暗いことが一杯あった。そして、21世紀になった今、やっぱり何か明るい光を見つけたいというその気持ちが非常に皆強いと思います。そういうことで、21世紀に光、要するにオリンピックのトーチのような、そういうものを掲げてどこかに行く行き先を見つめたいという、そういう気持ち。そして、それは何かと言うと、新しい都市、文化を創造することだと思います。
齋藤 氏
石井さん、その光という意味なんですけれども、今日本の社会というのは、希望とか、夢とか、理想とか、そういうのを失っていると思うんですが、それと置き換えてもよろしいんでしょうか。
石井 氏
そうです。ライトアップするという意味ではございません。
齋藤 氏
ありがとうございました。ケント・ギルバートさんお願いいたします。
ギルバート 氏
「旧体制を是正してからでないと・・・」。漢字をど忘れしちゃったので、申し訳ないんですけれども、旧体制を是正してからでないと、安心していられません。
齋藤 氏
旧体制というのは、どういう体制なんですか?
ギルバート 氏
旧体制というのは、つまりこういう開発プロジェクトですよね。これのいろんな不正もあるでしょうし、そういう関係ない思惑もある。だから、そういう旧体制から断ち切って、もっとこのプロジェクトを本当にやるべきかどうかという、変な利害関係なしに、21世紀のビジョンに基づいて考えるんだったら、またいいかもしれないけれども、旧体制の延長線上に過ぎないと思っていますから、このままでは賛成しにくいです。
齋藤 氏
ありがとうございます。白石さんお願いいたします。
白石 氏
私は、「"どこ"より、"なぜ"、"どんな"が重要」というふうに書きました。今はもう既に候補地の選定に入っておりますけれども、是非、今の東京で何が駄目なのかという是非論について、再度議論をさせていただきたいと思います。
齋藤 氏
ありがとうございます。須田さんお願いいたします。
須田 氏
「公開と参加」と書いてあります。どこかで聞いた言葉ですけれども、私は、首都機能移転には、一番大事なことはこれだと思うんですね。つまり、国民に情報を公開して、情報を開示して、そして国民がこの議論に参加をして、最後は、国民の世論で決めていく。首都機能移転というのは、21世紀の国づくりの根幹でございますから、国民の参加がなくしては、これは意味がないわけであります。私は、それをキャッチフレーズにいたしました。明治以来と言いますか、世界的に首都機能移転、ないしは遷都というものが行われるのは、大体独裁者がやるか、革命によって行われるのがほとんどなんですね。平和的に、国民の意思で行われたというケースは、非常に少ないと聞いております。日本の21世紀こそ、まさにそういう国民世論の中で、その結集の中で、平和的に首都機能移転ができる。これこそ、21世紀の日本の国の門出に誠にふさわしいことだと思いますので、それを期待しております。
齋藤 氏
ありがとうございました。月尾さんお願いいたします。
月尾 氏
「制度改革」。ケント・ギルバートさんが言われたことと近い意見です。これまで箱物とか、土地がらみの話で、議論がされすぎたので、どういう制度にするかということを議論する。それが終われば、首都の形というのは、ほとんど自動的に決まってしまいます。これから100年程度の単位で、日本をどういう制度で運営していくかということを、議論すればいいというふうに思います。
齋藤 氏
ありがとうございます。寺島さんお願いいたします。
寺島 氏
変な言葉なんですけれども、「パラダイムを変える勇気」と書いておいたんですけれども。要するに、最後に僕が発言しておきたいのは、特に経済のセクターで生きる大人の責任ということを言っておきたいんですね。つまり、一つの国で、自分の国の若者に挑戦するテーマとか、プロジェクトとか、働く場を提示し、設計するということが、大人社会の責任なんですね。この間スペインのバルセロナで、サクラダファミリアという教会が100年たって続けているプロジェクトを見て来て、日本の若者がボランティアでもって、建築だとか、美学だとかに関わっている若者が働いています。「なぜこんなことで働いているの?」と聞いたら、「自分が挑戦できるような、情熱を燃やすようなテーマが欲しかった」。我々は、失われた10年も結構だけれども、自分達の国の若者に、挑戦したいと思うようなテーマを見せていない。首都機能移転だけがそうだなんていう意味ではありませんよ。だけど、やはり我々の知恵を絞って、この種のプロジェクトを実現していくような勇気が必要だと思います。国際社会へのメッセージということも、もう一つ言っておきたいんですね。つまり、一体日本はどうしようとしているんですか。私、先週もパリでOECDの会議に出て、「いや、改革をやろうとしているんですよ」。「何を?」。「構造改革って何?」。饒舌に30分喋ったら、喋るかもしれないけれども、1分で日本は21世紀こういう国にしたいと思っているんだということを凝縮するシンボリック・マネジメントとしても、やはりこの種の目玉のある話に肉付けしながら進んでいくというのが、私はいいなと、自分では思っています。
齋藤 氏
ありがとうございます。では、舩橋さんお願いいたします。
舩橋 氏
最後に、個人的な意見を述べさせていただきたいと思います。「草木国土、悉皆仏性」と書きました。「悉皆」は、「しつゆう」とも言いますけれども、これは、僕は日本人が昔から持っていた、一つの世界観というか、そういうものだと思います。自分達は、日本の国土、そしてそこに草が生え、木が生え、動物がいる、そういうものの中で生かされてきたんだ。生かされてきたというこの気持ちを持って、この問題にこれから国民全体が取り組んで欲しい。関心を持って欲しいなということを思っております。以上です。
齋藤 氏
ありがとうございます。先程一つ思いましたけれども、最近電車の中で、マナーの悪い人に注意をした人が殺されるとか、あるいは安全なはずの小学校で、小学生が殺されるといったなんとも不気味で、痛ましい事件が多いのが、気にかかります。今を生きることに精一杯、あるいは自分さえよければいい、自分達の世代が良ければいい。そうした刹那主義と言うんでしょうか、そういうふうな発想、傾向が見られるということが、とても気にかかります。社会全体が冷めていると言うのか、あるいは心の連携を失ってしまったと言うのか。いつから今中心、自己中心になってしまったのか。そういう意味では、この首都機能移転問題というのは、先人たちが一生懸命作ってきた国、それを将来どういうふうにして次の世代、将来世代にバトンタッチするのか。それを考えるよい機会でもありますし、絶好のテーマだと思います。いわゆる行き当たりばったりではない、しっかりと考えていくことが、今求められているような気がいたします。小泉内閣の誕生をきっかけにしまして、構造改革が今大きな関心を呼んでいます。首都機能移転の問題は、何か置き忘れたような印象を受けていますが、首都機能移転問題そのものも、私は構造改革の一つだと思います。首都機能移転論議を高めるために、一体どうすればいいのか。今日、皆さんからいろんな方策が出されましたけれども、それをどう実行に移していけるかどうかだろうと思います。国会、政治家の皆さんに頑張ってもらうことも、もちろん重要でしょうけれども、日本の国を支えている私達1人1人も、一体どういう国にしていくのかということを考えることも、非常に重要なことではないかと思います。そういう意味で、これから私達も、この首都機能移転の問題に積極的に関わっていきたいと思います。今日は、パネリストの皆さんから、いろんな議論が出されました。今日は、答えが出たとは思えませんけれども、どういう問題があるのかということがおわかりいただけたと思います。首都機能移転論議の一つのヒントになれば、これが幸いであります。長時間ご静聴ありがとうございました。パネリストの皆さん、ありがとうございました。