(平成11年12月時点の整理)
積極論 | 慎重論 |
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我が国は大きな転換期を迎えており、移転が必要 ・今日の日本は強い閉塞感の中にあり、特に若者達の間には「世の中は変わらない、大きな夢はない」という声が強い。移転は、「日本は変わる、変えられる」という自信を全国民に与える。 ・移転が内在的に持つ「時代の変化を大きく促進する力 (社会的触媒機能)」を諸改革の構図の中に持ち込むことで、大きな展望が開かれ、戦略が見えてくる。移転は、未来への出発点である。 ・移転は、日本が多様な形で近隣諸国との交流を深め、相互の信頼感を培い、アジア太平洋地域の一員として、内外に開かれた国家システムを構築する意思を表明するもの。決して我が国固有の利益を追求するものではない。 ・移転の意義については、その時々の社会情勢に応じて力点の置き方は異なるものの、移転決議の当時から現在まで一貫して、「国政全般の改革」「東京一極集中の是正」「災害対応力の強化」の3つの柱に集約されている。 移転先は、21世紀の我が国を象徴する新都市となる ・未来につながるプロジェクトとして、 ・京都・奈良で日本の心を学び、東京で日本の近代化の歴史、経済を体感し、新都市で21世紀の日本が世界に対して果たすべき役割を学ぶことになれば素晴らしい。 ・外交や国際交流を重視し、訪問客、観光客の多い国際政治文化都市−国際的に人を呼び込める都市−を目指すべき。 ・自然との共生や環境負荷の小さな都市など、21世紀の都市像やライフスタイルを世界にアピールすべき。新都市は家族がそろって住めるヒューマンな都市とすべき。 今こそ移転の決断を ・国会は移転決議、移転法の制定で国会等の移転を国民に約束してきた。財政難、地価沈静化、行革、地方分権の進展を理由とする先送り論には、いらだちを感じる。 ・移転決議以来ほぼ10年が経過し、既に議論は出尽くしている。もうそろそろ結論をだすべきではないか。 |
移転の理由が希薄である ・四百年にわたる確かな文化的伝統を保持している東京から首都機能を移転させるのは、歴史への冒涜である。 ・アジアや世界の中で大きな役割と責任を期待されている日本の首都を軽々しく移転することは、歴史の流れに対する逆噴射だ。 ・移転の論拠も、東京一極集中であったり、大地震対策であったり、国政全般の改革であったり、その時々の都合でくるくると変わっている。原点にかえって論議をし直すべきではないか。 移転の発想は古く時代錯誤 ・情報化の進展で'Anywhere you can do anything'という社会になれば、首都の持つ地理的意味は薄れてくる。いずれにしろ重層的・複合的な情報通信ネットワークの形成は重要である。 ・ハコモノづくり中心の移転は古い発想で、地方分権、規制緩和や成熟時代への対応こそが急がれる課題。ツケを後生に残すのはやめて欲しい。 ・行き詰まれば移転するのでは、焼畑農業的発想。 |
積極論 | 慎重論 |
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(1)国政全般の改革 ・移転と諸改革は、いわば車の両輪のようなもので、両者を関連づけて一体的に進めることが国民の理解を得る早道。 ・これまで分権を何度も試みたが、はかばかしい成果が得られていない。移転は小さな政府を実現し、分権を徹底的に進める良い手段になるだろう。 ・今の政治、行政システムは制度疲労している。今のままのシステムを21世紀に持ち越さないで欲しい。 首都機能移転は地方の自立性を高める ・東京に政治・行政機能があるため、政策立案の視点は、東京中心の見方となり、経済効率を重視する傾向。情報中立性のある所に公務員を置き、情報の公平性を確保することが大切。 ・政策決定の中枢を担う移転先には、楽しい会話やおいしい食べ物など気持ちの余裕が生まれるような恵まれた環境が何よりも必要。狭いビルの狭い部屋で100年後の日本を柔軟に考えろといっても、ストレスで行き詰まってしまう。 ・「新しい政治・行政都市」を目指す新都市の政治・行政システムでは透明性、効率性が重視され、情報公開や行政事務の公正で迅速な処理など徹底されるべきであ。このようなシステムが全国の地域に広がることによって、住民参画型の行政が進展することとなる。 ・首都機能を東京から移転して、東京を「巨大」とはいえ「一地方」とすれば、これまでの「大きな中央」「小さな地方」という国と地方の力関係が変わらざるを得なくなる。その効果として、東京中心の序列意識が崩れ、政策立案の視点も生活者優先的なものに変化し、全国各地域の自立性が高まると期待される。 |
・改革の必要性は是認するとしても、移転とそれを結びける必然性はない。移転すれば改革が進むという保証はなく、地方分権や規制緩和を先行すべき。 ・機能の分散こそ重要で、その考えを突き詰めていけば、移転という方法ではなく、中央政府のスリム化を進め、道州制、連邦制を選択するということにいきつくのではないか。 |
(2)東京一極集中の是正 ・東京圏には国土の3.6%に人口の4分の1にあたる3300万人が集中している。23区への通勤人口はこの10年間に26%も増え、322万人となっており、他の先進国では見られない通勤ラッシュが続いている。 ・東京の地下鉄が1キロ300億円、高速道路が1キロ1000億円もする中で、東京改造は一朝一夕には実現しない。 ・一極集中の背景として、東京に住むことが一種のステータスと考えるような東京中心の意識構造が根強く残っており、さらに東京と地方の間に文化面、情報面での格差を生ずるに至っている。 ・インターネットのホームページ数など情報発信における一極集中はさらに激しくなっている。 ・東京では地価や維持費が高く、国連加盟国189カ国のうち在日大使館を東京に置いていない国は65、うち22カ国は北京など国外にある大使館が兼務している。これでは、日本のことを他国のフィルターを通して見ることになり、外交上マイナスではないか。 ・東京を頂点とする太平洋ベルト地帯への集中は、「多様性を尊重した創造よりも画一化による効率」「生活の質よりも経済成長優先」の価値感に基づくものであり、過密の弊害や国土利用のゆがみをもたらした。 ・機能面での一極集中の結果、東京に来なければ何も解決しない事態になっており、その解決のために移転を行うことは大きな意味がある。 ・平成8年以降は社会増に転じており、また今後10年余りの間は引き続き人口が増大すると予測されている。その後人口が減少に転ずると言っても、過密の状態が幾分緩和するだけで、一極集中の是正とはほど遠い状態。注)東京圏人口シェア(国立社会保障・人口問題研究所試算) ・ここ数年の不況の中でも東京の人口が増加していることからすれば、経済社会情勢が好転すれば何時人口が増加基調に反転しないとも限らない訳で、予断を許さない。 東京の過密解消効果は小さくない ・約210haの移転跡地の利用で、東京を生活空間として再生する契機となり、防災性の向上が期待できる。 東京の活力低下にはつながらない ・うっとうしい役所や国会が移転し、ふるさとが東京に戻る方が望ましいという意見が、東京居住者の中にもある。 東京を頂点とする序列意識が打破され、国土の再編が期待できる ・移転が日本人の「気持ちの規制緩和」につながり、東京中心の意識構造が是正され、情報、文化面での多元化が進む。 ・企業の東京への立地指向が変化し、一極集中とコインの裏表となる地域の活性化につながる。 ・移転により、東京圏も一地方圏として、他の地方圏との間に様々な面で公平な競争が生まれ、日本全体の活力が増す。 ・東京に官公庁があることで地方から大勢の人が陳情と称して訪れるのは、参勤交代のようなものだ。 ・東京に集まる情報は偏っており、東京中心型システムの改革が必要。移転により、東京のフィルターを経由せずに地域の情報を発信しあうことで、地域が活性化することが期待できる。 |
・人口減少期に入れば東京一極集中は過去の遺物となり、今後の大きな問題ではなくなる。東京の吸引力は既に減退し始めている。 ・ネットワーク社会となり、地方分権や規制緩和が行われれば、首都に集まる必要性(陳情行政)は大幅に減少する。 ・東京が首都であることに支障はなく、今後とも地理的、気候的条件等から見てむしろ最適地である。現在の東京の都市インフラの集積は貴重で、今更他地域に移すのは資源の浪費に他ならない。 東京の過密解消効果は小さい ・業務核都市整備等の「展都」の推進による首都圏の再整備こそが最も現実的かつ有効な対応策。 ・職住近接で魅力ある生活は東京でも可能。都心部の土地を高度利用すれば、ゆとりのあるオープンスペースが生み出せる。 ・変な形で移転され跡地がどうなるかという方が心配。移転の費用を捻出するために、土地等を売却されでもしたら大変なこと。 世界都市東京が国際競争力を失う |
(3)災害対応力の強化 ・ナショナルセキュリティや我が国の防災対応力の強化を考えれば、移転は不可欠。リスク分散の考え方からすれば、移転後の首都機能も分散した方が良い。 ・東京が被災した場合には、新都市が危機管理・復旧の司令塔として機能し、救助活動・災害復旧を迅速に行うことができる。東京では参集も容易ではなく、十分な危機管理的な対応を行うことは困難。 ・阪神・淡路大震災のときは、国会、中央省庁とも東京で正常に機能していた。そして短期間に多くの法律を成立させ計画をつくり、予算を成立させ、その後の復旧・復興に大変大きな力となった。 注)阪神・淡路大震災では発災後の2ヶ月間に16本の特別立法が制定され迅速な救援・復旧活動が行われた。 東京圏の防災性向上が期待できる ・移転跡地の活用等により、移転を契機に東京の防災性の向上が期待できる。 |
・首都の防災性向上は行政情報の電子化で対応すべき。 ・安全保障上、政治機能が民間機能と一体の方が良い。 ・霞ヶ関、永田町は最も耐震性の良いところ。直下型地震の被害範囲は20〜30キロ圏であり、応急対策は可能。 首都機能移転よりも東京の災害対応力を強化すべき ・木造住宅密集市街地における防災まちづくりを重点的に進めるべき。 |