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国会等の移転ホームページ

移転に係る主要論点1

首都機能移転に係る主要論点

(平成11年12月時点の整理)

I 移転の必要性
1.総論 (歴史観等)
積極論 慎重論

我が国は大きな転換期を迎えており、移転が必要
・我が国は、これまでも、大きな時代の転換期において、首都(政治の中心)移転を実施し、新しい時代にふさわしい政治、行政システムをつくることに成功してきた。平安京への移転は、宗教のイデオロギーから政治を解放することに成功し、鎌倉への移転では荘園制度に変わる所領安堵、すなわち土地の私有制を確立してその後の武家社会の基礎がつくられた。このように、首都移転が我が国の歴史上プラスの効果をもたらしてきたことは明らかであり、時代区分も、奈良、平安、鎌倉、室町、江戸などと、その時代の首都(政治の中心)の名で呼ばれている。

・今日の日本は強い閉塞感の中にあり、特に若者達の間には「世の中は変わらない、大きな夢はない」という声が強い。移転は、「日本は変わる、変えられる」という自信を全国民に与える。

・移転が内在的に持つ「時代の変化を大きく促進する力 (社会的触媒機能)」を諸改革の構図の中に持ち込むことで、大きな展望が開かれ、戦略が見えてくる。移転は、未来への出発点である。

・移転は、日本が多様な形で近隣諸国との交流を深め、相互の信頼感を培い、アジア太平洋地域の一員として、内外に開かれた国家システムを構築する意思を表明するもの。決して我が国固有の利益を追求するものではない。

・移転の意義については、その時々の社会情勢に応じて力点の置き方は異なるものの、移転決議の当時から現在まで一貫して、「国政全般の改革」「東京一極集中の是正」「災害対応力の強化」の3つの柱に集約されている。

移転先は、21世紀の我が国を象徴する新都市となる
・欧米文明に追いつき追い越す拠点としてつくられた従来型の首都である東京の役割は終わった。新しい都においてはガーデンアイランズ(庭園の島)の模範となる都市像や新しいライフスタイルのモデルを見せることが重要。東京の二の舞は避けなければいけない。

・未来につながるプロジェクトとして、
(1)住環境と情報インフラ整備のための中核事業
(2)環境保全型実験都市への挑戦
(3)文化性重視の新首都建設
(4)国際中核都市としての新首都構想
(5)政治と経済の分離のメリットの探究
を実現する「高付加価値型新首都建設」の推進に当たっては、若者、女性の感性を取り込み、1万人のNPOに知恵を出してもらう。

・京都・奈良で日本の心を学び、東京で日本の近代化の歴史、経済を体感し、新都市で21世紀の日本が世界に対して果たすべき役割を学ぶことになれば素晴らしい。

・外交や国際交流を重視し、訪問客、観光客の多い国際政治文化都市−国際的に人を呼び込める都市−を目指すべき。

・自然との共生や環境負荷の小さな都市など、21世紀の都市像やライフスタイルを世界にアピールすべき。新都市は家族がそろって住めるヒューマンな都市とすべき。

今こそ移転の決断を
・この種の問題については、パラダイムジャンプが必要。国権の最高機関である国会が指導力を発揮して、道筋を示して欲しい。トップの燃えるような思いが伝わらないといけない。

・国会は移転決議、移転法の制定で国会等の移転を国民に約束してきた。財政難、地価沈静化、行革、地方分権の進展を理由とする先送り論には、いらだちを感じる。

・移転決議以来ほぼ10年が経過し、既に議論は出尽くしている。もうそろそろ結論をだすべきではないか。

移転の理由が希薄である
・首都移転は、新しい政治権力が古い権力と訣別して新しい政治を起こす時に行ったり、また、他のあらゆる方法では乗り越えられない時に最後の切り札として行うもので、国家の本質にかかわる深い理由が必要だが、今回の議論にはそれが見あたらない。

・四百年にわたる確かな文化的伝統を保持している東京から首都機能を移転させるのは、歴史への冒涜である。

・アジアや世界の中で大きな役割と責任を期待されている日本の首都を軽々しく移転することは、歴史の流れに対する逆噴射だ。

・移転の論拠も、東京一極集中であったり、大地震対策であったり、国政全般の改革であったり、その時々の都合でくるくると変わっている。原点にかえって論議をし直すべきではないか。

移転の発想は古く時代錯誤
・インターネット時代に物理的な都市所在地を問題にするのはどうしようもないアナクロニズム(時代錯誤)。 ただ、国土庁の首都機能移転のホームページは良くできている。

・情報化の進展で'Anywhere you can do anything'という社会になれば、首都の持つ地理的意味は薄れてくる。いずれにしろ重層的・複合的な情報通信ネットワークの形成は重要である。

・ハコモノづくり中心の移転は古い発想で、地方分権、規制緩和や成熟時代への対応こそが急がれる課題。ツケを後生に残すのはやめて欲しい。

・行き詰まれば移転するのでは、焼畑農業的発想。

2.具体的な意義と効果
積極論 慎重論

(1)国政全般の改革
移転は国政全般の改革を促進する

・移転は国政全般を根源にさかのぼって見直すための重要な機会、契機。政経分離を形としてみせることで、国政全般の改革を強く国民に印象づけ、改革を加速させる手段として大きな効果が期待できる。

・移転と諸改革は、いわば車の両輪のようなもので、両者を関連づけて一体的に進めることが国民の理解を得る早道。

・これまで分権を何度も試みたが、はかばかしい成果が得られていない。移転は小さな政府を実現し、分権を徹底的に進める良い手段になるだろう。

・今の政治、行政システムは制度疲労している。今のままのシステムを21世紀に持ち越さないで欲しい。

首都機能移転は地方の自立性を高める
・地方分権推進法は分権の第一歩であり、移転による分権の更なる推進が必要。

・東京に政治・行政機能があるため、政策立案の視点は、東京中心の見方となり、経済効率を重視する傾向。情報中立性のある所に公務員を置き、情報の公平性を確保することが大切。

・政策決定の中枢を担う移転先には、楽しい会話やおいしい食べ物など気持ちの余裕が生まれるような恵まれた環境が何よりも必要。狭いビルの狭い部屋で100年後の日本を柔軟に考えろといっても、ストレスで行き詰まってしまう。

・「新しい政治・行政都市」を目指す新都市の政治・行政システムでは透明性、効率性が重視され、情報公開や行政事務の公正で迅速な処理など徹底されるべきであ。このようなシステムが全国の地域に広がることによって、住民参画型の行政が進展することとなる。

・首都機能を東京から移転して、東京を「巨大」とはいえ「一地方」とすれば、これまでの「大きな中央」「小さな地方」という国と地方の力関係が変わらざるを得なくなる。その効果として、東京中心の序列意識が崩れ、政策立案の視点も生活者優先的なものに変化し、全国各地域の自立性が高まると期待される。


移転より地方分権・規制緩和を優先すべし
・正面から改革に取り組まずに、移転すれば、閉塞感が打破できるとか、国政改革、地方分権が進むと考えるのは情緒的だし、見方を変えれば現実逃避。

・改革の必要性は是認するとしても、移転とそれを結びける必然性はない。移転すれば改革が進むという保証はなく、地方分権や規制緩和を先行すべき。

・機能の分散こそ重要で、その考えを突き詰めていけば、移転という方法ではなく、中央政府のスリム化を進め、道州制、連邦制を選択するということにいきつくのではないか。

(2)東京一極集中の是正
東京一極集中は今後も大きな問題である

・東京一極集中は、通勤問題、住宅問題、交通混雑、災害に対するもろさ等の諸々の弊害を生んでおり、既に許容限界を超えている。

・東京圏には国土の3.6%に人口の4分の1にあたる3300万人が集中している。23区への通勤人口はこの10年間に26%も増え、322万人となっており、他の先進国では見られない通勤ラッシュが続いている。

・東京の地下鉄が1キロ300億円、高速道路が1キロ1000億円もする中で、東京改造は一朝一夕には実現しない。

・一極集中の背景として、東京に住むことが一種のステータスと考えるような東京中心の意識構造が根強く残っており、さらに東京と地方の間に文化面、情報面での格差を生ずるに至っている。

・インターネットのホームページ数など情報発信における一極集中はさらに激しくなっている。

・東京では地価や維持費が高く、国連加盟国189カ国のうち在日大使館を東京に置いていない国は65、うち22カ国は北京など国外にある大使館が兼務している。これでは、日本のことを他国のフィルターを通して見ることになり、外交上マイナスではないか。

・東京を頂点とする太平洋ベルト地帯への集中は、「多様性を尊重した創造よりも画一化による効率」「生活の質よりも経済成長優先」の価値感に基づくものであり、過密の弊害や国土利用のゆがみをもたらした。

・機能面での一極集中の結果、東京に来なければ何も解決しない事態になっており、その解決のために移転を行うことは大きな意味がある。

・平成8年以降は社会増に転じており、また今後10年余りの間は引き続き人口が増大すると予測されている。その後人口が減少に転ずると言っても、過密の状態が幾分緩和するだけで、一極集中の是正とはほど遠い状態。注)東京圏人口シェア(国立社会保障・人口問題研究所試算)
1995:26% → 2025:27%

・ここ数年の不況の中でも東京の人口が増加していることからすれば、経済社会情勢が好転すれば何時人口が増加基調に反転しないとも限らない訳で、予断を許さない。

東京の過密解消効果は小さくない
・移転により過密の弊害の緩和効果がある。 注)調査会報告によれば、最大60万人の人口減のほか、地下鉄混雑がピーク時の霞ヶ関・永田町間で10%程度緩和、首都高都心環状線の交通量が3%減少。

・約210haの移転跡地の利用で、東京を生活空間として再生する契機となり、防災性の向上が期待できる。

東京の活力低下にはつながらない
・3,000万人を超える東京圏の人口に比べれば、移転人口はわずかであり、直接的には活力の低下につながるような規模ではない。東京は、将来的にも経済、文化の中心となる。むしろ、働く場としてだけでなく生活の場としてとらえ、ゆとりと活力ある都市に整備していく転機とすべき。

・うっとうしい役所や国会が移転し、ふるさとが東京に戻る方が望ましいという意見が、東京居住者の中にもある。

東京を頂点とする序列意識が打破され、国土の再編が期待できる
・東京に何もかも集まりすぎていて、不利益を被っているのは地方だ。このままでは、何も変わらない。今後、何百年にもわたって東京が日本の首都であり続けることは考えられない。

・移転が日本人の「気持ちの規制緩和」につながり、東京中心の意識構造が是正され、情報、文化面での多元化が進む。

・企業の東京への立地指向が変化し、一極集中とコインの裏表となる地域の活性化につながる。

・移転により、東京圏も一地方圏として、他の地方圏との間に様々な面で公平な競争が生まれ、日本全体の活力が増す。

・東京に官公庁があることで地方から大勢の人が陳情と称して訪れるのは、参勤交代のようなものだ。

・東京に集まる情報は偏っており、東京中心型システムの改革が必要。移転により、東京のフィルターを経由せずに地域の情報を発信しあうことで、地域が活性化することが期待できる。


東京一極集中は今後大きな問題にはならない

・日本の人口は2007年頃ピークを迎え、その後減少すると見込まれる。東京都・東京圏への人口集中圧力も大幅に弱まっている。
注)東京圏は2011年頃をピークに人口減少時代に入ると見込まれる。

・人口減少期に入れば東京一極集中は過去の遺物となり、今後の大きな問題ではなくなる。東京の吸引力は既に減退し始めている。

・ネットワーク社会となり、地方分権や規制緩和が行われれば、首都に集まる必要性(陳情行政)は大幅に減少する。

・東京が首都であることに支障はなく、今後とも地理的、気候的条件等から見てむしろ最適地である。現在の東京の都市インフラの集積は貴重で、今更他地域に移すのは資源の浪費に他ならない。

東京の過密解消効果は小さい
・移転に伴い東京から減る人口はわずか数十万人にとどまり、過密解消効果は小さい。

・業務核都市整備等の「展都」の推進による首都圏の再整備こそが最も現実的かつ有効な対応策。

・職住近接で魅力ある生活は東京でも可能。都心部の土地を高度利用すれば、ゆとりのあるオープンスペースが生み出せる。

・変な形で移転され跡地がどうなるかという方が心配。移転の費用を捻出するために、土地等を売却されでもしたら大変なこと。

世界都市東京が国際競争力を失う
・グローバルな都市間競争の中で、東京の魅力をそぎ、東京の国際競争力を低下させることは避けるべきで、土地の高度利用や都心居住で東京の魅力を高めることが先決。

(3)災害対応力の強化
政治・行政と経済の中枢を分離することにより、リスク分散が図られる

・東京は直下型地震が何時起こってもおかしくはなく、その際、政府をはじめ金融・経済、大企業など国の中枢機能が大打撃を受け、国家機能の損失という未曾有の危機に直面する。移転により政治・行政と経済のヘッドクォーターが同時被災することを免れ、国際スケールで予想される深刻な危機を最小限にとどめることができる。

・ナショナルセキュリティや我が国の防災対応力の強化を考えれば、移転は不可欠。リスク分散の考え方からすれば、移転後の首都機能も分散した方が良い。

・東京が被災した場合には、新都市が危機管理・復旧の司令塔として機能し、救助活動・災害復旧を迅速に行うことができる。東京では参集も容易ではなく、十分な危機管理的な対応を行うことは困難。

・阪神・淡路大震災のときは、国会、中央省庁とも東京で正常に機能していた。そして短期間に多くの法律を成立させ計画をつくり、予算を成立させ、その後の復旧・復興に大変大きな力となった。 注)阪神・淡路大震災では発災後の2ヶ月間に16本の特別立法が制定され迅速な救援・復旧活動が行われた。

東京圏の防災性向上が期待できる
・東京の防災対策は避けて通れない緊急課題ではあるが、抜本的な防災構造化には長い時間と費用がかかる。

・移転跡地の活用等により、移転を契機に東京の防災性の向上が期待できる。


首都機能移転よりも機能の二元化を行うべし

・今やるべきことは、機能の二元化。東京に大地震があっても即応できる体制を整えなければならない。一挙に首都機能を移転しようという発想は古い。展都・重都によるリスクの分散と情報バックアップ体制の整備が優先されるべき。

・首都の防災性向上は行政情報の電子化で対応すべき。

・安全保障上、政治機能が民間機能と一体の方が良い。

・霞ヶ関、永田町は最も耐震性の良いところ。直下型地震の被害範囲は20〜30キロ圏であり、応急対策は可能。

首都機能移転よりも東京の災害対応力を強化すべき
・何十年かかるかわからない移転に期待するより、緊急対応として東京の危機管理対策を講ずるべき。

・木造住宅密集市街地における防災まちづくりを重点的に進めるべき。

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