国土交通省国土政策局国土情報課

兵庫県西宮市

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取り組みの概要

西宮市では、GISへの取り組みは早く、昭和50年(1975年)に建設省の都市情報システム(UIS)の実験モデル都市となったのがきっかけで、開発を始めた。その後、住民基本台帳を基盤とする総合行政情報システムにおける統合(「宛名DB」)データベースと連携するべく西宮市位置座標方式(宛名DBに絶対的な位置座標を付与)を確立し、あらゆる業務を簡単に地図上に展開できるようになり、阪神・淡路大震災での実践的活用はもとより、GISの全庁的且つ本格的な運用へと展開していった。

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当該団体のGIS利活用推進に関する基本情報

個別型
GIS
統合型
GIS
公開型
GIS
担当部署の
設置
推進組織の
設置
庁内共用の
事例
庁外共用の
事例
その他
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GISに関するこれまでの取り組み

GIS構築への取り組み

  • 1975年 建設省(当時)では、都市計画支援を目的とした都市情報システム(UIS: Urban Information Systems)の開発研究が実施され、西宮市においてパイロットモデルの運用実験が行われたが,システムの実用化までは至らず、莫大な労力及び経費を投入しただけで、大失敗に終わった。
  • 1984年 この大失敗を糧に、総合住民情報システムと連携する西宮市位置座標方式を確立(統合「宛名」データベースの住民コードに絶対的な位置座標を属性として付与)するも全庁的なGISの意識は低く、思うように普及しなかった。
  • 1990年 第3次GIS開発として、日常業務処理の中に定型業務として、普及・拡充を目指すが、机上論(実践展開できず)のGISに止まり、消滅の危機に瀕する中、水面下で現場で使えるGISを自己開発する。
  • 1995年 これにより、阪神・淡路大震災での被災者支援業務の一環としての実践的な利活用に繋がり、大成果(被災者台帳を基盤とする各種被災状況分析・関連図や復旧・復興関連図出力等々)を収める。
  • 1998年 全国初の「都市計画用途地域図照会システム」や西宮市をあらゆる角度からくまなく地図案内できる地理情報サービス「道知る兵衛」を開発・稼動(いずれもWebGIS)
  • 2001年 前出の阪神・淡路大震災時における経験・教訓から緊急時・災害時における災害弱者を支援する「地域・安心ネットネットワークシステム」を開発・稼動させる。
  • 2003年 市民の健康づくり、まちづくりを基調とする心と身(からだ)の健歩マップ「ちずナビ隊」の開発・稼動や子供のための情報教育の一環としての教育GIS(「EduGIS」)への取り組みやWebGIS「道知る兵衛」の他自治体への無償提供を開始するなど、その後も住民のための自治体GISの普及・拡充を目指してきた。

GISの構成

  • インターネットを利用した「にしのみやWebGIS」サイト(http://webgis.nishi.or.jp/)を構築し、住民向けに地理情報閲覧サービスを行なっている。
  • 具体的には、白地図(1/2,500と1/10,000)、都市計画情報、建築基準法指定道路台帳、道路認定路線網図、下水道台帳、遺跡分布地図、道路台帳(現況)、防災情報(平成25年4月現在)。
  • その他、「新道知る兵衛(地図案内サービス)」、「心と身(からだ)の健歩マップ ちずナビ隊」、「介護事業者おしえてネット西宮」、「震災写真情報館」を提供している。
  • イントラネットを利用した住民支援を中核にするGISを横断的に展開し、業務の効率化・高度化を目指す統合型GISを構築している。
  • 西宮市の特色は、住民基本台帳と各種情報を串刺しにした、宛名データベースである。これに絶対的な位置座標を結び付けることで、各種台帳情報をGIS上に可視化し、業務のシームレスな連携・連動の高度化、効率化に役立てている。

その他

【西宮市情報化推進計画】

  • 2001年~2005年 第1次情報化推進計画では「電子自治体の実現」を目標とし、地域公共ネットワークの整備や職員用ノートパソコンの配備など情報通信基盤整備を概ね完了した。
  • 2006年~2010年 第2次情報化推進計画では「心かよう開かれた電子自治体」を基本理念に電子申請、電子入札、施設予約等のオンライン化やコンビニ収納の導入、内部事務の効率化や情報セキュリティ対策などを実施。
  • 2011年~2015年 第3次情報化推進計画として「ICTガバナンスの強化・確立」を目標として、①ICTによるコミュニケーションの活性化、②ICT活用による全体最適化の推進、③情報セキュリティの強化、を重点分野として取り組むこととしている。中でもGISは②の分野において「統合型GISの利便性向上と効率的運用」が掲げられている。
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地方公共団体情報

団体名 兵庫県西宮市
団体連絡先 住所:兵庫県西宮市六湛寺町10番3号
団体URL http://www.nishi.or.jp/
団体種別 市区町村
人口 482,640人(平成22年国勢調査)
担当部署 情報システム課
窓口連絡先 0798-35-3521
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当該団体の個別事例詳細

    「宛名データベース」と住所辞書(兵庫県西宮市)

    担当部署:情報システム課

    取り組みの背景

    • 宛名データベースとは、各課の業務で共通する情報をまとめたデータベースであり、独自のキーを利用して、各業務情報を串刺しに検索できるというものである。宛名データベースには住所データも記録されており、これに絶対的な位置座標情報を付与することにより、様々な業務情報を地図上に表示することが可能になった。
    • そもそも西宮市では、第2次開発時、第1次開発時の反省から、業務で使えるGISを目指し、住所辞書と呼ぶ座標テーブルのコンセプトをまとめ、これを用いたGISを開発した。このシステムは、担当部署で通常業務の中で利用する情報を活用できることから、地図入力・更新の手間や費用を削減するものとして期待されたが、現在のようなネットワーク環境はなく、情報の連携が容易に行えないため、なかなか現場からの評価が得られない状態であった。
    • その後、ネットワーク環境も整備され、各課の保有する業務情報も宛名データベースを利用して密に連携を図れるようになったことから、この間の失敗を糧に、「現場で使えるGIS」及び「住民のためのGIS」構築をキャッチフレーズに方向転換し、ようやくGIS活用の基盤が揃った。
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    取り組みの内容

    • 各業務で扱う情報は基本的に宛名データベースと結びつけることが可能であるので、GISのみならず、様々な業務において、情報連携の要として利用されている。
    • 阪神・淡路大震災以降、被災者支援システムを「宛名データベース」を利用して迅速に立ち上げ、災害応急に活用し、全国から注目された。
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    得られた効果

    • 各課が保有する業務情報は、この宛名データベースを通して、住所に結びつけることができ、住所辞書を利用することにより、直ちにGISで利用することができるので、データ入力・更新の手間、費用がかからない。
    • 共通に使える情報と、各課保有の情報をGIS上で重ね合わせることで、直ちに分析を行ない、政策判断に活用することができる。
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    今後の展開

    • 西宮市で始まった「宛名データベース」は、現在全国地域情報化推進協議会(APPLIC)のGIS―WGの中で全国の利用を想定した「地名辞書」という形で発展している。
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    参考にしたい工夫ポイント

    (1)地名辞典(住所辞書)、アドレスマッチングの活用

    • 全国地域情報化推進協議会(APPLIC)では、利活用シーンについてのまとめを行なっており、台帳情報の位置を単に可視化するだけでなく、住民サービスの向上に結びつける事例を整理している。

    (2)情報連携を行う仕組みの整備

    • 多種多様な業務情報を連携させるための仕組みをしっかり整備しておくことにより、情報を素早く引き出せたり、同種の情報の重複を防ぐことができる。

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    関連サイト

    【1】サイト名「地域情報プラットフォームにおけるGIS共通サービス基本提案書」

    URL:http://www.applic.or.jp/2012/tech/APPLIC-0002-2011-06.pdf

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    住民のためのGIS構築(兵庫県西宮市)

    担当部署:情報システム課

    取り組みの背景

    西宮市の開発の経緯から、数々の失敗を糧に、現場で簡単に使えて、住民にとって役に立つGIS構築に方向転換し、自前で開発できるようにしていたところに、阪神・淡路大震災時での利活用へと繋がった。ここでの被災者支援業務は勿論、GISの有効活用により、危機管理下におけるGISの重要性が再認識された。その後、WebGIS「道知る兵衛」(施設案内)を開発・公開し、更にOSS版汎用型WebGISへと展開し、真の住民のためのGISの普及・拡充に努力している。

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    取り組みの内容

    インターネットを利用した情報提供サービスとして、以下のものがある。

    1. 「にしのみやWebGIS」:市民向け地理空間情報(白地図(1/2,500と1/10,000)、都市計画情報、建築基準法指定道路台帳、道路認定路線網図、下水道台帳、遺跡分布地図、道路台帳(現況)、防災情報)の情報提供。
    2. 「新道知る兵衛:地図案内サービス」:西宮市の独自のデータ(文化・公共・防災関連施設等)はもとより、NTTタウンページに掲載されている施設やお店などを多様な角度から検索し、地図表示・目標物からの道案内。
    3. 「心と身(からだ)の健歩マップ~ちずナビ隊~」:市民が心身の健康づくりをするためのウォーキングマップを探索・策定したり、施設のバリアフリー整備状況を迅速に検索できる。
    4. 「介護事業者教えてネット西宮(高齢者あんしんネット西宮)」:介護サービス事業者の検索。
    5. 「震災写真情報館」:阪神・淡路大震災当時の被災写真データベースを地理情報と連携させて公開。

    他に、イントラネットとして、文化財管理システムや、行政情報ネットワークと連動した地域安心ネットワークを構築している。

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    得られた効果

    • 自己開発方式のため、住民ニーズに迅速に対応したGIS、地理空間情報の提供が可能になる。
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    今後の展開

    • 第3次西宮市情報化推進計画では、統合型GISの利便性の向上と効率的運用として、ホームページで公開している地理情報システムの再構築、クリアリングハウスの活用推進とGISサービスの多様化及び質の向上、地図の共有、運用のための業務フローの整備、GIS技術に関する人材育成が示されている。
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    参考にしたい工夫ポイント

    (1)住民ニーズに対応するための体制づくり

    • WebGISの技術を持つ職員を育成することにより、独自開発を行い、住民ニーズに対応している。

    (2)WebGISを利用した住民向け地理空間情報提供

    • オープンデータの中で紹介される、行政情報は道路、建物、防災情報を始めとして市民生活に密接な関係を持つ地理空間情報が多い。西宮市では、既に「にしのみやWebGIS」として公開しているが、更に目的を問わず再利用可能な形での提供も考えている。

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    関連サイト

    【1】サイト名「国土交通省【平成19年度GISセミナー】事例紹介「西宮市のGISの取組 - 真の住民のための自治体GIS」」

    URL:http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/gis/gis/seminar/h19_seminar/19kekka2.html

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    危機管理下におけるGISの重要性(「被災者支援業務(システム)」での有効活用)(兵庫県西宮市)

    担当部署:西宮市情報センター

    取り組みの背景

    阪神・淡路大震災の被災時に、BCPはもとより、迅速な被災者支援業務を履行するためのシステム作りが最も重要であると考え、すぐさまホストコンピュータベースで自己構築して利用した。その後、OSS版汎用Webシステムへ移行し、全国自治体向けに無償で公開・提供している。
    被災直後の自治体が必要とする機能を全て含むものとして被災者支援システムを構築している。

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    取り組みの内容

    被災者支援システムは、以下の8つのサブシステムから構成される。

    1. 被災者支援システム:各団体の住民基本台帳を基盤初期データとして被災者台帳に取り込み使用する。被災者台帳、被災住家台帳の2つで刻々と変化する被災状況を管理し、罹災証明書の発行・管理や義援金配布、支援金の給付管理等を行う。
    2. 避難場所関連システム:避難者EXCEL等を利用して避難場所の入・退所情報を管理する。
    3. 緊急物資管理システム:全国からの救援物資等の管理を行なう。
    4. 仮設住宅管理システム:仮設住宅と入・退居者の管理を行なう。
    5. 犠牲者・遺族管理システム:犠牲者とその遺族の異動履歴を管理する。
    6. 倒壊家屋管理システム:倒壊家屋の解体申請の受付、解体・撤去作業の管理を行なう。
    7. 復旧・復興関連システム:被災状況の把握・集計・分析を行い、被災者支援業務及び復旧・復興計画の一環として利用。
    8. 要援護者支援システム:要援護者の検索・参照はもとより、被災者台帳と日々活用する要援護者台帳とが、災害時において連動して管理できる。

    ※「2」~「8」の機能はすべて、「1」の被災者台帳とリンクしており、災害時に必要な情報を統合的に管理することができる。また、各情報を地図上に展開することも可能。

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    得られた効果

    • 無償で提供された自治体OSS版汎用型Webシステムとして利活用できる。
    • 事前準備及び訓練することにより、真の住民のための危機管理対応がいざと言う時に可能となる。
    • 危機管理下におけるあらゆる被災者支援業務がスムーズに履行できる。
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    今後の展開

    • LASDEC(一財:地方自治情報センター)の受託事業として、西宮市情報センターが運営主体となって被災者支援システム全国サポートセンターを運用展開しているが、更なる各自治体での利活用を通じて、より発展させることができることを願う。
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    参考にしたい工夫ポイント

    (1)阪神・淡路大震災のノウハウの活用

    • 阪神・淡路大震災時の教訓・ノウハウを生かした内容となっており、利用団体は、そこからスタートし、地域の実情報にあった変更を行なうことができる。
    • また、東日本大震災でも利用実績があり、そこでの教訓・ノウハウも反映させている。

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    関連サイト

    【1】サイト名「西宮市情報センター|被災者支援システムの概要」

    URL:http://www.nishi.or.jp/homepage/n4c/hss/

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