EVENT
2025-10-25

国土交通省は2025年10月25日に、「【アイデアソン】LINKS:POWER of DATA x DATA 2025」を開催した。国土交通分野にかかわるさまざまなオープンデータの潜在的な有用性を引き出すためのアイデア創出・開発イベントだ。今回は一般公開済みのデータ7件に加えて、新たに7件のサンプルデータが公開された。参加者は8チームに分かれて、データの活用アイデアを創出し、発表した。
文:羽野 三千世 編集:ASCII STARTUP
国土交通省では、これまで活用されてこなかった膨大な行政情報をAIの力で構造化されたデータとして再構築し、これを活用した政策立案やオープンデータ化による新たなビジネス創出につなげる取り組みである「Project LINKS」(以下、LINKS)を2024年4月にスタートした。データの有用性を引き出すため、2025年度は、「LINKS:POWER of DATA x DATA 2025 国土交通省のオープンデータ活用イベント」と題し、キックオフイベント、アイデアソン、ハンズオン、ハッカソン、ライトニングトーク、「公共交通オープンデータチャレンジ 2025 ~powered by Project LINKS~」の6つのイベントを実施する。
10月25日には、一連のイベントの第2弾となるアイデアソンがオンラインで開催された。LINKSのオープンデータを使って、社会課題や身近な困りごとを解決するアイデアをチームで競う。今回は、G空間情報センターで公開済みの「貨物自動車」「モーダルシフト」「無人航空機」「内航海運」「倉庫」「自動車事故」に関連するデータ、「GTFS(交通関連情報)」関連データに加えて、アイデアソン限定で以下のサンプルデータが用意された。

当日は、以下5名がメンター/審査員として、各チームへアドバイスを行った。
また、当日の司会とファシリテーターをエンジニア兼タレントの池澤あやか氏が務めた。

それでは、アイデアソンに挑んだ各グループの成果発表の内容を、メンターたちの評価コメントとともに紹介していく。
住宅設備機器メーカーの事業企画担当者とVR/AIエンジニアの2名で構成されるチーム・モノジロウ。住宅設備機器メーカー勤務のメンバーが日頃の仕事で課題に感じていた物流の問題を、LINKSの倉庫データを使って解決するアイデアを発表した。
給湯器、エアコン、配管などの住宅設備は、製造元のメーカーから卸売業者を介して、購入元の工務店や住宅設備の施工事業者へ配送される。工務店や施工事業者は必要なものをすぐに入手したいので、近くの倉庫から配送してほしいが、どの卸売業者の倉庫が近いか、倉庫に在庫があるかどうか、という情報は知るすべがない。
そこで、同チームは、卸売業者が各社の在庫を共有するプラットフォーム「モノジロウ」のアイデアを発想した。モノジロウで発注すると、一番近い卸売業者倉庫から品物が発送されるというものだ。LINKSの倉庫データのうち、倉庫の位置情報を活用する。品物が最短で届くメリットに加え、物流コストやCO2排出量の削減にもつながるとした。




チーム・あきさんは、国土交通省の管内図データなどを活用して、安心して川遊びをするためのアプリケーションのアイデアを発表した。
河川敷で花火やBBQ、遊泳、船遊び、ドローンを飛ばすなどのアクティビティを楽しもうとしたとき、それらが許可されているのか、行いたければどこに申請すればいいのか、利用者にとってはわかりにくい。このアプリケーションでは、マップ上で目的地にピンを刺し、日時とアクティビティを入力すると、その場所でどのようなアクティビティが禁止されているかどうかがわかるというものだ。
LINKSの管内図データにおける河川に関するデータやドローンのデータに加えて、法令検索データポータルe-Govのデータなども活用する。さらに、生成AIを組み合わせることで、法令の解釈や行政機関への申請についてのアドバイスを得られるようにしたいと構想を説明した。



チーム・地域の魅力みつけ隊は、地域観光を活性化するためのデータ活用として、LINKSの観光地域づくり法人(DMO)形成・確立計画データ、自家用有償旅客運送データ(公共ライドシェア)、一般旅客自動車運送事業(路線バス・貸切バス、タクシー)データの3つに注目した。
観光地のPRや活性化、土産物の企画といった施策は、自治体ごとに実施されるケースが多い。自治体の枠を超えた広域観光エリアを新たに定義できれば、人気のないエリアを近隣観光エリアへ包括して魅力を押し上げたり、民間事業者が自治体横断の新たな土産物や観光サービスを提供したりといったことにつながる。
そのために、同チームはLINKSの観光関連データ、公共ライドシェア・バス・タクシーの移動手段データに、フリーWi-Fiのデータから取得する実際の人流データを組み合わせて、広域観光エリアを創出するための新たなオープンデータを作るアイデアを打ち出した。観光客が自治体をまたいでどのように移動しているか、自治体が把握していないスポットに人が集まっているのはなぜか、データから広域観光エリアの構想がみえてくる。



チーム・フェリーナビのメンバーは、LINKSの一般旅客定期航路事業データ、および内航海運業データを活用し、いつ・どこで・どのような船が就航しているかを可視化するアプリケーション「フェリーナビ」のアイデアを発表した。
LINKSのデータに加えて、船舶愛好家であるメンバーが独自に調査・公開している小型船舶の情報もアプリケーションに追加している。船に乗ることや船を鑑賞することに情熱を燃やす船舶愛好家の利用を想定している。
シンプルなアイデアだが、メンターからは、特定分野の愛好家向けのオープンデータ活用は大きなムーブメントにつながる可能性があると好評。アプリケーションのデザインを洗練させることで、より多くの愛好家に響くとのコメントだった。



チーム・GTFSデータ探偵団は、GTFS(交通関連情報)のバス路線情報の誤りを迅速に修正するためのアイデアを発表した。現在、GTFSのバス時刻表や路線情報のデータの誤りは、利用者からの偶発的な報告や監査によって発見されている。そのため、誤りの検知や修正には時間がかかるケースが多い。
同チームは、オープンソースソフトウェアのバグ修正のプルリク「プルリクエスト:Pull Request)と同じように、バス路線情報の誤りを利用者が報告する仕組みを考案。重要度に応じたSLAを設定し、さらに誤り報告の自動エスカレーションや、誤り報告をGTFSのフォーマットにマッピングして自動で差分抽出する機能を設けることで、修正リードタイムの短縮やヒューマンエラー解消につなげる。
GTFSデータを提供する側の立場であるメンターは、データの品質向上のための具体的なアイデアである点を評価。ぜひ実現してほしいとコメントした。



チーム・大崎アジャーズは、地方での配送の課題を解決するプラットフォーム「No-Waste Delivery」のアイデアを発表した。
公共交通機関が乏しい地方都市では自家用車への依存度が高い一方で、自ら運転することが難しい高齢者などが”買い物難民”になる問題が深刻化している。食品や日用品の購入に配送サービスを利用するにしても、そもそもドライバー不足が社会的な課題となっているうえに、人口が少ない地域では配送1件にかかるコストが高くなり、配送事業者が不採算に陥りがちだ。
同チームが発想した「No-Waste Delivery」は、配送量が多い時間帯の配送料を安く、配送量が少ない時間帯の配送料を高く調整するプラットフォームアプリだ。LINKSの貨物自動車運送事業データに含まれる輸送回数、輸送あたり重量、積載量などのデータを活用している。
同チームは、今回は時間内に詳細を詰め切れなかったが、地方の利用者や高齢者と運送事業者の双方にメリットのある仕組みなどを考えていきたい、と今後の展望を語った。メンターからは、アルゴリズムのモデルや実際に動くシミュレーションなど、ぜひ形にすることを挑戦していってほしいと期待が寄せられた。



チーム・M2JKは、「混雑しない観光地だけを教えてくれるMAP」アプリのアイデアを発表した。
“週末の予定がぽっかり空いてしまった”――そんなときに手軽に旅行に行けるような、“混雑していない”を基準に、おすすめの観光地を調べることができるというもの。GTFS-RTデータで観光地の混雑具合を可視化。訪問者数や季節などの情報をもとに、比較的混雑していない観光地のみをマップアプリに表示する。また、過去のデータを活用して、“今月は空いている可能性が高い場所ベスト10”といった情報を視覚的に示すなどして、リコメンド表示することも検討したいと考えているという。
メンターからは、より詳細な範囲(例えば1km四方など)での混雑度の表示や、ユーザーの嗜好を踏まえた観光スポットの混雑度、同じスポットでも時間帯での混雑度の違いなどを表示できるようになると、さらに使いやすく良いものになりそうだといったコメントがあった。


チーム・投げ銭空き家は、「LINKSデータで進む・見える『空き家』再生」と題し、空き家の活用を促進するプロジェクトのアイデアを発表した。
空き家問題の解消に向けては、国や自治体が空き家情報を公開し、購入希望者をマッチングする仕組みを提供している。同チームが考案したアイデアは、マッチングにとどまらず、空き家の再生過程を情報としてLINKSのオープンデータに追加して公開し、まちづくりの一環として支援者を巻き込みながら問題解決に取り組もうというもの。
このプロジェクトでは、自治体が空き家物件を購入し、投げ銭やオークション形式で再生にかかる資金支援者を募集。そして、物件を再生していく過程を公開し、さらなる支援を得ながら、空き家の再生を進めていく。再生が完了したら、譲渡や売却するという流れだ。空き家が再生していく状況をオープンデータに随時追加し可視化していくことで、“変わっていく様子が見える”活きたオープンデータとし、データのさらなる活用にもつなげようという狙いがある。
メンターからは、行政の現場では空き家は活用だけでなく解体も課題になっているので、再生だけでなく「解体」する選択肢も入れてはどうかと提案がなされた。また、空き家に残された家財などの情報をオープンデータの項目に追加し、廃棄するのではなく販売することも全体のスキームに組み込むというアイデアも出された。



審査の結果、グランプリに輝いたのは、地方での配送の課題解決を図るプラットフォーム「No-Waste Delivery」を発表した大崎アジャーズ。オーディエンス賞には、船舶愛好家のためのアプリを発表したフェリーナビが選ばれた。

グランプリ受賞の感想として大崎アジャーズの代表者は、「まさか受賞できるとは思っておらず、とてもびっくりしている。どうデータを活用していくのか、それによってどういった“痛み”を取り除けるのか、みんなで模索しながら取り組み、なんとか成果発表のプレゼンにすることができた。皆様、ありがとうございました」と述べた。
最後に、今回のアイデアソンの総評として、各メンターが感想を述べた。
羽田野氏 ワクワクするアイデアをたくさん出していただき、ありがとうございました。今回はアイデアソンなので、実現できることよりも、『こんなことができたらうれしい』ということが大事でしたが、今後のハッカソンではアイデアが形になるのを楽しみにしています。
田村氏 さまざまな難しいデータを読み解きながら、いろいろなアイデアを出していただいて、とてもうれしかったです。今後さらにアイデアを練って、ハッカソンなどに挑戦していただきたいと思います。
久田氏 今回は時間も短く、オンライン開催ということでいろんなツールも使ってバタバタしながらも、素晴らしいアイデアがたくさん出てきて、私も勉強になりました。ハッカソンの前にはハンズオンも行いますので、参加いただけたらうれしいです。
西尾氏 一日という短い時間で忙しいスケジュールの中、さまざまなアイデアが出て、とても面白かったです。今後は実際に動くものを作らなくてはならないので、ハードルも上がってきます。ハンズオンの機会も活用して技術力を高めていただけたらと思います。
内山 オンラインでは初開催となった今回のアイデアソンでしたが、非常に斬新かつフィージビリティ(実現可能性)がありつつも、我々の発想では出てこないデータの使い方を示していただきました。LINKSのプロジェクト自体への示唆が深いものもあり、今回のアイデアソンを開催してよかったと感じています。今後のハッカソンや「公共交通オープンデータチャレンジ 2025 ~powered by Project LINKS~」にも、ぜひチャレンジしてください。ありがとうございました。
関連サイト
LINKS https://www.mlit.go.jp/links/
【アイデアソン】LINKS:POWER of DATA x DATA 2025 https://asciistartup.connpass.com/event/368062/
