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LINKSのイベント開催記録やコラム

LINKSの行政オープンデータ、私たちはこう使う――10人がノウハウを伝授
LINKS:POWER of DATA x DATA 2025 ライトニングトーク

EVENT

2025-12-19

「Project LINKS(リンクス)」のライトニングトークイベントが、2025年12月19日に開催された。Project LINKS(リンクス)は、国土交通省が2024年にスタートした行政情報のオープンデータ化プロジェクトだ。これまで活用されてこなかった膨大な行政情報をAIの力で構造化されたデータとして再構築し、政策立案やオープンイノベーション創出につなげる取り組みである。

文:羽野三千世 編集:ASCII STARTUP


 2025年度は、「LINKS:POWER of DATA x DATA 2025 国土交通省のオープンデータ活用イベント」と題して、キックオフイベント、アイデアソン、ハンズオン、ハッカソン、ライトニングトーク、「公共交通オープンデータチャレンジ 2025 ~powered by Project LINKS~」と、6つのイベントを実施する。

 一連のイベントの第5弾となる「ライトニングトーク(LT)」は、登壇者がProject LINKSを使った作品や体験、アイデアなど、LINKSに関する自由なテーマでプレゼンをするオンラインイベント。オープンデータに興味がある個人、企業、自治体向けに、活用アイデアやノウハウを紹介する機会として開催された。当日は、過去にLINKSのアイデアソンやハッカソンに参加者やメンターとして関わった10人が登壇し、各自持ち時間5分でLTを行った。

 それでは、LTの内容を順に紹介していく。

ハッカソン参加をきっかけに起こった変化とは(なかしま氏)

 「アイデアソンにはじめて参加した気づき」と題して登壇した“なかしま氏”は、アイデアソンに参加した前後での自身の変化を語った。

 同氏は、地域が抱える課題を解決したいとの思いから、アイデアソンに参加。国土交通省が推進するプロジェクトを調べて、既存の行政区域にこだわらない広域的な視点で、道路、公園、上下水道といった社会インフラを“群”としてとらえ統合的に維持管理する取り組みに「群マネ(地域インフラ群再生戦略マネジメント)」に注目した。

 「群マネ」の枠組みと、アイデアソンで提供された空き家バンクのデータを組み合わせて、空き家を抱えている自治体同士が手を組むためのアプリを構想した。実際に、アイデアソンの前後で、オープンデータを使って自治体のマッチング支援アプリ「マッチン群マネ」を開発したという。

自治体のマッチング支援アプリ「マッチン群マネ」

 「空き家バンクのデータを見てみると、データが入っている割合が少ないカラムがあったり、プライバシーへの配慮から住所が特定できないようになっていて位置情報が使えなかったり、課題も見つかった」と同氏。自身の変化として、空き家バンクのデータを使ったアプリ開発をきっかけに、日々の生活の中で様々なオープンデータを見るようになったという。さらに、参加したことで、自分でも「こんなアプリ作ろうかなと思わせてくれるキッカケになった」と話した。

 最近では、寒冷地における冬季の道路凍結を解消するための“焼き砂ボックス”のオープンデータと、LINKSの交通事故データ、積雪予報などを組み合わせて交通事故予測をするアプリの開発に取り組んでいるという。

焼き砂オープンデータとLINKSデータを活用した交通事故予測アプリ


公共交通オープンデータの可能性は無限大(TinyKitten氏)

 フロントエンドエンジニアの“TinyKitten氏”のLTのテーマは、「公共交通オープンデータ × モバイルUX:複雑な運行情報を『直感』に変換する技術」。同氏が開発しているスマートフォンアプリ「TrainLCD」の実装例を紹介しながら、公共交通データの有用性を語った。

 「TrainLCD」は、鉄道車両内のドア上部などに設置されたディスプレイに停車駅案内、運行情報、乗換案内などを表示する「トレインビジョン」を、スマートフォン上で使えるようにするというコンセプトのアプリだ。

トレインビジョンをスマホ上に再現する「TrainLCD

 同氏は「開発者サイトで公開されているデータを使うと、トレインビジョンがスマホ上にここまで再現できる」と紹介。同開発者サイトには300件以上のデータが公開されている中で、JSON、静的GTFS、Protocol Buffers(GTFS-RT)の主に3種類の形式のデータがあると説明。静的GTFSでは時刻表や路線、停留所などの情報、GTFS-RTでは運行情報などのリアルタイムデータが提供される。同氏が特に有用性を感じているのはGTFS-RTだという。

 TinyKitten氏は最後に、「現代のちょっとした交通の不便さというのは、データを使うことで私たち自身で課題解決にチャレンジできる」と語った。


オープンデータを楽しく使って裾野を広げる(keita氏)

 今年度のハッカソンで、船に関する様々なデータを地図上にプロットするアプリ「フェリーファンサイト」を開発した“keita氏”。同氏は、子どもと接する機会の多い福祉の仕事をしており、子どもたちの「船に乗りたい」「船を見たい」という声が開発のきっかけだったという。

 「船は他の交通機関と異なり、移動手段というだけではない。乗ることそのものを楽しむ遊覧船、食事が目的の屋形船、川下りのボートなどエンタメ要素がある」。「フェリーファンサイト」は、フェリーだけでなく、長距離のクルーズ船から短距離の渡し舟、湖のスワンボートに至るまで様々な種類の船の位置を網羅的に探すことができるサイトだ。

 ハッカソン後も、データや機能を追加して「フェリーファンサイト」の拡充を続けている。航路図に沿って船をアニメーションで動かしたら、全国の船運行状況が視覚的にわかるようになり、見ているだけで楽しいと好評だったそうだ。シェアサイクルのポート情報と同じフォーマットを使って、スワンボートや貸しボートが全国のどこにあるかを検索できる機能も追加した。

スワンボートがどこにあるか検索できる機能を追加

「オープンデータを楽しく使うことで、データに興味を持ってアプリを開発する人が増えてほしい」――そうした思いで、keita氏は引き続き活動を続けていくと語った。また、「フェリーファンサイト」は2025年12月30日に、機能を追加して「フェリーウィキ」としてリニューアル公開された。今後もさらなる開発が続いていきそうだ。


ハッカソンで勝つための5つのポイント(ドウェイン.json氏)

  次に発表した“ドウェイン.json氏”は、今年度のハッカソンでグランプリを受賞したチームのメンバーだ。同氏は「『面白さ』<『インパクト』で勝つ ハッカソン優勝チームの戦術」と題して、今回の勝因と今後ハッカソンで勝ち抜くためのノウハウを紹介した。

 ハッカソンでは、物流事故リスクを地図上に可視化するダッシュボードを作成した。LINKSの物流事故のデータを使って、過去に事故が発生した場所を赤でプロット、これから事故が発生するリスクがある場所を機械学習で抽出して青でプロットしている。

ハッカソンでグランプリを受賞した成果物「物流事故ヒートマップ可視化システム

 同氏は、チームがグランプリを受賞した要因は、次の5つだと分析する。1つ目は、チームの課題選定。面白いプロダクトではなく、課題解決のインパクトが大きいプロダクトの開発に挑戦するチームに参加することが大切だ。2つ目は、技術選定。ハッカソンは短い開発期間で成果物を完成させることが最優先になる。選択肢の中から最も簡単な技術を採用することが重要だ。

 3つ目は、バイブコーディング(AIと人が対話しながら開発を進めていく手法)の採用。その際のポイントとして、複数人が並行してAI開発をすることは避けること。1人がバイブコーティングで最小構成のものを作り、その後メンバー全員で追加開発する。4つ目は、ドメイン有識者へのヒアリング。このチームでは、成果物アプリの想定ユーザーである国土交通省の職員に、アプリ上でどのような情報が見たいか意見を聞いて開発に役立てた。そして5つ目は、「不要な開発はしない」ことだ。

ハッカソン優勝を支えた5つのポイント

 最後に同氏は、2026年度もLINKSのハッカソンに参加して「オープンデータのコミュニティを盛り上げて行きたい」と述べた。


不人気データにも活用の可能性がある!(yusa-san氏)

 「LINKS:POWER of DATA x DATA 2025 Hackathon を目一杯楽しんでみた」と題して登壇した“yusa-san氏”は、今年度のハッカソンでゲームのようにオープンデータを学べる「LINKS Data Guesser」を作成した。レンタカーや公共ライドシェアの台数といった様々なデータから、「どの都道府県か」を当てる高難易度のクイズゲームになっている。

「LINKS Data Guesser」の画面。「レンタカーの保有台数(都道府県別)」から都道府県を当てるゲーム

LINKSのオープンデータには、なかなか活用されていないものもある。同氏は国土交通省でLINKSデータを整備する仕事にも従事しており、クイズゲームアプリを開発した背景には、活用が少ないオープンデータの魅力を伝えたいという思いがあったと述べた。


AIの時代、ハッカソン参加に壁はない(松xR氏)

 「非エンジニアでも出来る! 仮説だけで始める公共データ活用開発 with AI」と題してLTを行った“松xR氏”は、AIがあれば誰でもハッカソンに参加できる時代だと語った。

 同氏も今年度のハッカソンに参加し、車を使わずに電車で初日の出を見に行くためのアプリ「初日の出ハンター」を開発。GTFSデータの駅情報と国土数値情報の海岸線データを使って、「電車の駅から2㎞以内の東南東(初日の出の方角)に海岸線がある」、かつ「東南東方向5㎞以内に再度海岸線が出てこない(陸がなく日の出が見える)」条件の地点を抽出し、地図上にプロットしている。

電車で初日の出を見に行くためのアプリ「初日の出ハンター

 プログラミングを趣味とする同氏だが、普段はExcelさえ使わない企画職だ。それでも、「仮説があり、実行するAIがあればできるはず」と、AIをフル活用。開発にあたって、まず3つの仮説を立てた。(1)海岸線の地形や鉄道網のデータは正確なオープンデータとして存在するはず。(2)距離計算や海岸線との交差は計算できるはず。緯度経度の計算は未経験だが、標準的な計算方法が存在するだろう。(3)緯度経度があれば地図にプロットできるはず、と考えた。

海岸線の地形データはSHP(Shapefile)形式のベクトルデータとして、鉄道網のデータはGeoJSON形式で入手できた。そして、交差や距離の計算は、AIがTurf.jsというライブラリを提案してくれた。使ってみると、緯度経度から、駅を中心に海岸線データと交差するかどうかを判定する計算がすぐにできた。データの抽出もAIと一緒に実施。「ただし、AIに“抽出して”と頼んでもうまくいかないので、計算ロジックを相談し、目的のデータを抽出するスクリプトをAIと一緒に作成して、そのスクリプトを自分で実行するという作業だった」と解説した。

 フロントエンドは、フロントエンド制作に特化したAIサービス「v0」を活用。地図情報の取得や地点のプロットのように、標準的な実装が確立しているロジックについては一発で完成したという。「AIの時代なので、得たい成果と仮説があれば誰でも開発ができる」と語った。


熊被害の原因分析に挑戦(massan氏)

 “massan氏”も今年度のハッカソン参加者だ。昨今の熊被害の原因分析のためのプラットフォーム「Local City Hunter」を開発した。熊などの野生動物が人の生活圏内に入ってくる原因として、空き家データに反映される里山の後退や森の植生変化があるのではと仮説を立て、LINKSの空き家データ、植生が判別できる衛星画像、ヒグマの出没情報サイトのデータなどを地図上に集約した。開発の背景について同氏は、「ハンター、警察、住民、役所職員などのステークホルダーが共通で使うプラットフォームになることを想定して作った。情報のサイロ化の課題を解決したい」と説明した。

「Local City Hunter」。森の植生変化を示している画面

 ハッカソンには、同氏とAIだけのチームで挑んだ。人がアイデアを出し、Chat GPTがPM・壁打ち・デバッグを担当。AI IDE(統合開発環境)のKiroが開発をするというチーム構成だ。「生成AIがどこまで開発できるかに挑戦してみた」という。

AIを活用してハッカソンに挑戦したmassan氏。ハッカソン後も使用するAIを代えながら開発を継続している

 massan氏はハッカソン終了後も、Local City Hunterの追加開発を続けている。イベントで無償提供されたKiroのクレジットを使い切ったので、“後任”としてCursorを迎えた。現在は、Cursorの後任となるClaudeが開発を行っている。今後は、情報のサイロ化を解決するために、AIを使ってプラットフォーム上のデータを自然言語で共有することなどを検討していくという。


津波による物流網への影響と回復力をシミュレーション(Sho氏)

 “Sho氏”は「日本の兵站(へいたん)レジリエンスを勝手に監査してみた」と題して、LINKSデータの活用アイデアの例を紹介した。

 兵站レジリエンスとは、「災害時などに物流網の一部が破壊されても、物資の供給を完全に途絶えさせず、速やかに回復する能力」と定義される。同氏はLINKSの倉庫データに注目し、倉庫同士のつながりを可視化。さらに、国土数値情報の洪水浸水推定区域データと津波浸水想定のデータを使って、津波が発生した際の倉庫の被災状況と、被災を免れた最寄りの倉庫へ接続するシミュレーションができるデモサイトを開発した。

津波発生時の倉庫の被災状況と代替倉庫への接続をシミュレーション
デモ画面。名古屋市周辺で津波や洪水が起こった場合をシミュレート。赤い点が被災した倉庫で、緑の点が被災を免れた倉庫を示す


オープンデータを“オーディオビジュアル化”(まどか氏)

 “まどか氏”は、今年度のハッカソンでLINKSのオープンデータを音の特徴(音量、周波数、リズムなど)を使って映像を生成する仕組みにチャレンジ。ドローンの飛行申請情報を使ってオーディオビジュアル化した作品を示した。

ドローンの飛行申請情報をオーディオビジュアル化

 制作にあたっては、ドローンの許可申請の緯度経度情報を8系の平面直角座標系に変換。飛行高度も映像表現に使用しており、一定の高度を越えている申請は赤くしている。実際に制作してみた感想として、「ドローンの情報はデータ量が非常に多く、全国各地の緯度経度などが網羅されていた。そのため、ビジュアル化してみたら日本地図が現れた」と語り、位置情報や数値情報のデータが充実していると作品の充実にもつながると話した。


ドローン関連データとGTFSは秀逸、課題も(西尾氏)

 最後の登壇者は、LINKSのアイデアソンやハッカソンにメンターとして参加している株式会社MIERUNEの”西尾氏”。「GISエンジニアから見たLINKSデータ」をテーマにLTを行った。

 メンターとしてLINKSのデータを扱った感想として、まず、ドローンとGTFSのデータの充実度合に驚いたという。「“いつ・どこで”の時空間の骨格が最初から存在している。地図、ルート検索、混雑回避、運行状況など生活に直結する使い道が多いと感じた。」

 一方で、使いづらさも感じたという。「GISのユースケースを想定すると、点(施設)や線(経路)としての位置精度が必要。データ粒度が市区町村単位だと活用の幅がせまくなってしまう」とのことを述べた。

 また、データ整備の過程で、元データ様式の異なるデータが1行にまとめられてCSVに押し込まれているケースがあった。GISでの活用しやすさの観点では、分けられるデータは分けたほうがよいのではないか、と同氏は提案。今後の改善提案として、LINKSデータとその他のデータを併用するために、データに自治体コードを振ってほしいと述べた。

 最後にLINKSの特徴として、ハッカソンなどを通じてデータに関する「フィードバックループが回っていることが“激アツ”」だと西尾氏。使いにくいデータがあったとしても、それを報告することで改善され、反映される。そしてデータをまた使い、フィードバックする――というループが素晴らしいと述べ、視聴者にも「ぜひLINKSのデータを気軽に使って何かをつくってみてほしい。そして、何かあればフィードバックしてほしい」と語りかけた。


データを活用しながら課題の修正と反映を繰り返すエコシステム構築を目指す

 最後に、国土交通省 総合政策局 公共交通政策部門 モビリティサービス推進課 総括課長補佐 Project LINKS テクニカル・ディレクター 内山裕弥がコメントを述べた。

 「LINKSのイベントに初めて参加してくださった方も、いつも参加してくださっている方も、ありがとうございました。最後にMIERUNEの西尾さんにもコメントいただいたように、LINKSのデータも、ハッカソンなどで実際に使ってみて初めて、データの課題や修正点が見えてきます。LINKSプロジェクトでは、そうしたフィードバックを積極的に取り込み修正し、オープンデータに反映するエコシステムを作っていきたいので、今後も引き続きLINKSのデータを活用していただきたいです。」


関連サイト

LINKS https://www.mlit.go.jp/links/

【ライトニングトーク】LINKS:POWER of DATA x DATA 2025 https://asciistartup.connpass.com/event/377258/


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