Archives

LINKSのイベント開催記録やコラム

行政データのポテンシャルを引き出し生まれた、事故リスク予測アプリなどの新たなプロダクト
LINKS:POWER of DATA x DATA 2025 ハッカソン

EVENT

2025-11-29 ~ 2025-11-30

 国土交通省は「LINKS:POWER of DATA x DATA 2025」のハッカソンイベントを、2025年11月29日、30日の2日間にわたって開催した。「Project LINKS(以下、LINKS)」は、国土交通省が2024年度から取り組んでいる行政情報のオープンデータ化プロジェクト。これまで活用されてこなかった膨大な行政情報をAIの力で構造化されたデータとして再構築し、これを活用した政策立案やオープンデータ化による新たなビジネス創出につなげる取り組みである。

 2025年度は、「LINKS:POWER of DATA x DATA 2025 国土交通分野のオープンデータ活用チャレンジハッカソン」と題して、キックオフイベント、アイデアソン、ハンズオン、ハッカソン、ライトニングトーク、公共交通オープンデータチャレンジ 2025 ~powered by Project LINKS~と、6つのイベントを実施。LINKSオープンデータのユースケースを開発し、その有用性を探っていく。

 11月29日と30日にAWS Startup Loft Tokyo(東京都品川区)で開催されたハッカソンでは、実際にLINKSが提供するオープンデータを使って新しいサービスを作り上げ、その活用度、アイデアや独創性、技術やUIの完成度をチームで競った。
 会場提供に加えて、参加者にはAWSからAWS Workshop Studio アカウントが提供され、イベント期間中AWSサービスを利用しながら開発に挑んだ。

 今回のハッカソンでは、G空間情報センターやオープンデータポータルにて提供中の「モーダルシフト」「GTFS(交通関連情報)」のデータの他、「貨物自動車」「無人航空機」「内航海運業」「倉庫」「自動車事故」のデータについてはレコード数やデータの種類を追加してイベント限定で提供。
 加えて、「組織管内図」「観光DMO」「レンタカー」「空き家・空き地バンク」「鉄軌道事業」「公共ライドシェア」「路線バス・貸切バス・タクシー」の7つのデータについては、当イベント限定で新規提供された(計14データ)。

当日は、以下6名のメンターが各チームへアドバイスを行った。

  • 株式会社Eukarya  LINKS Veda開発チームリーダー 土屋 和真 氏
  • 株式会社MIERUNE Engineering Manager 西尾 悟 氏 
  • 株式会社アナザーブレイン 代表取締役/みんキャプ運営委員会 委員長 久田 智之 氏
  • 株式会社team-7 渡邊 徹志 氏 
  • 東日本旅客鉄道株式会社 イノベーション戦略本部 羽田野 湧太 氏
(左から)土屋 和真 氏、西尾 悟 氏、久田 智之 氏、渡邊 徹志 氏、羽田野 湧太 氏

 審査員は、以下の3名が務めた。

  • 東京大学先端科学技術研究センター 特任准教授 吉村 有司 氏
  • Code for YOKOHAMA 代表、情報アーキテクト 小林 巌生 氏
  • 国土交通省 総合政策局 公共交通政策部門 モビリティサービス推進課 総括課長補佐/Project LINKS テクニカル・ディレクター 内山 裕弥

 また、当日の司会とファシリテーターをエンジニア兼タレントの池澤 あやか 氏が務めた。

(左から)審査員を務めた吉村 有司 氏、小林 巌生 氏、内山 裕弥、司会・ファシリテーターを務めた池澤 あやか 氏

 それでは、各チームの作品を紹介していく。

ハッカソンの様子

オープンデータを活用して日常から“小さな幸せ”を見つける

車を持っていない人でも鉄道で辿り着ける初日の出スポット紹介(チーム「松xR」)

 車を使わず電車で“初日の出”の写真を撮りに行きたい――。チーム「松xR」は、その願いを叶えるためのアプリケーションを開発した。

 GTFSデータの駅リスト、国土地理院の地図情報、国土数値情報の海岸線データを活用し、「電車の駅から2km以内の東南東(初日の出の方角)に海岸線がある」、かつ「東南東方角5km以内に再度海岸線が出てこない(すなわち、海に開けている)」条件の地点を抽出し、地図上にプロットする。コーディングAIのClaude 4.5 Opus、UIデザインAIのv0を使って、フロントエンドの開発はほぼAIで行ったという。

チーム「松xR」

大型フェリーから屋形船まで各地の船に関する情報を集約(チーム「フェリーファン」)

 とにかく船が好きで「船に乗りたい。船がみたい」との思いから、チーム「フェリーファン」は、内航海運業データの位置情報(緯度・経度)に着目し、船に関する様々なデータを地図上にプロットして可視化するWebアプリケーションを開発した(https://linkingopendata.com/fune/)。

 閲覧できる主なデータは「船舶データ」や「港湾」「船員状況」「船舶事故報告」などの情報のほか、「長距離/地域内フェリー」や「離島航路」「レストラン船・屋形船」「渡し舟」「スワンボート」などまで多岐にわたる。飛行機好きがリアルタイムの飛行情報を見て楽しむように、船好きが大型フェリーから渡し舟に至るまでリアルタイムに船舶の航行情報を追うことができる。同チームでは今後も開発を進めていくという。

チーム「フェリーファン」

ドローンの飛行計画申請手続きをもっと楽しくしたい(チーム「E×3」)

 Dips(ドローン情報基盤システム)からドローンの飛行計画申請をする作業をもっと楽しく有意義な体験にしたい――。チーム「E×3」はLINKSの無人航空機飛行計画データに着目し、アプリ「SKY LOG」を開発した。

 同アプリは、Dipsへ飛行計画を申請する際に事故事例をチェックする、人気の飛行エリアを確認する、飛行中にチャットボットから注意事項などのメッセージがもらえるといった機能を実装する。飛行終了申請後には、お気に入りのドローン空撮写真とコメントを投稿し、「いいね」ボタンで反応がもらえるようになっている。日々、ドローン飛行申請業務を行っている同チームリーダーの「煩雑な申請手続きを楽しくしたい」という強い思いから生まれたアプリだという。

チーム「E×3」

映像演出やクイズゲーム、熊対策にもオープンデータを活用

 オープンデータの新しい活用可能性にチャレンジした3チームの作品を紹介する。

山手線の時刻表データをもとにしたVJ作品(チーム「LINKS VJ」)

 チーム「LINKS VJ」は、GTFSの電車時刻表データと国土地理院の地図データ(緯度経度、標高)を使って、JR山手線の動きと地形データから「かっこいいVJ(映像演出)」を作るシステムを開発した。

 実際にバックエンドのデータベースを参照しながら、フロントでリアルタイムにVJを作成するところまで実装。実際に走行する車両の位置情報をもとに上空300mからの車両周辺の街のビジュアルを映像化し、音楽に合わせて手元で映像の演出を多様に変化させるデモを披露した。

チーム「LINKS VJ」

データの特徴をヒントに都道府県を当てるクイズ(チーム「モビリティと地図を愛する会」)

 チーム「モビリティと地図を愛する会」は、LINKSの様々なオープンデータの数値を手掛かりに、都道府県を推理して当てるクイズゲームを開発した。

 手掛かりとなる“地域性を浮き彫り”にする指標として、観光目的等で使用されることが多いと考えられるレンタカーのデータ「貸渡実績報告書データ(レンタカー事業)」、過疎化の進行度や住宅事情を反映する「空き家・空き地バンクの登録物件・成約データ」、住民の足となる地域交通の現状を示す「自家用有償旅客運送データ(公共ライドシェア)」、ドローンの申請が活発なエリアが分かる「無人航空機飛行計画データ」、そして最もヒントとなる「人口データ」を使用。これらのデータから見て取れる特徴から該当する都道府県を当てるという難易度の高いゲームに仕上がっている。

チーム「モビリティと地図を愛する会」

地域の安全をテクノロジーで守る――熊出没の原因分析にデータを活用(チーム「Local City Hunter」)

 チーム「Local City Hunter」は、近年大きな問題となっている熊出没の原因分析にオープンデータの活用を模索した。熊などの野生動物が人の生活圏内に入ってくる要因としては、人口減少や空き家データに反映される里山の後退、森の植生変化による餌の減少などがあると仮定。北海道のヒグマ出没情報サイト(ひぐまっぷ)のデータや空き家データ、衛星画像などで取得できる森の植生のサンプルデータなどを地図上に集約した。

今回は実装が間に合わなかったが、住民や行政職員、警察などそれぞれのニーズ・役割に応じたリアルタイムな情報の可視化や情報の切り替えを行えるようにしたいと語った。

チーム「Local City Hunter」

ドローンや物流データを駆使、配送の課題解決へ

 今回のハッカソンでは、物流の課題解決にチャレンジしたチームの活躍も目立った。

ドローンが飛び交う時代を見据えた航路計画/予約システム(チーム「AirBee」)

 ドローン配送の実現を目指す学生メンバーが集結した、チーム「AirBee」。LINKSの「無人航空機」データを活用し、空間ID(z/f/x/y=粒度/高度/東西/南北で表記されるボクセル情報)を用いてドローンの航路計画を作成、プレビューするアプリケーション「DIPS-NEXT」を作り上げた。

飛行の開始点・終点を指定すると飛行禁止エリアを避けた航路が提示され、そのまま航路の予約申請手続きができるというもの。将来、ドローンや空飛ぶ車が飛び交う時代がきたとき、高度によって航路を分けることが必須になる。誰がどの空域をいつ飛ぶのか、今後「DIPS-NEXT」に時間軸を追加してドローン自動官制システムへ進化させたいとする。

チーム「AirBee」

事故が起こりやすい場所を予測して地図上に可視化(チーム「ACCVIS」)

 チーム「ACCVIS」は、物流事故リスクを地図上に可視化して、流通・小売り企業や運送会社、保険会社、国土交通省へ申し入れるシステムを開発した。

過去に交通事故が発生した場所、事故が頻発している場所を地図上にプロットして可視化。さらに、LINKSの自動車運送事業事故データに人口情報を追加し、機械学習モデルで将来的に事故が起こりやすい場所を予測して地図上に表示する機能を実装した。予測には、事故現場の緯度経度、人口、事故種類、天気のデータ、経済損失スコアのサンプルデータを使用している。次に事故が起こると予想される地点を可視化して物流関係各所へ申し入れることで、道路開発や法規制、配送の効率化に貢献したいとする。

チーム「ACCVIS」

災害発生時の貨物路線と物流への影響を可視化(チーム「あれ、なくなるかも?」)

 チーム「あれ、なくなるかも?」は、貨物路線や貨物駅で障害が発生した際の物流への影響を可視化するアプリケーションを開発した。

LINKSの倉庫業データ、GTFSデータ、国土数値情報の鉄道時系列データを使い、貨物路線・貨物駅・倉庫の位置を地図上に表示。アクシデント発生箇所をタップすると、品目ごとの貨物輸送量、倉庫からの出荷量のデータから、どの品物が何割輸送できなくなるかの数字を算出して提示する。貨物路線の運休により、消費者に届かなくなるものが視覚的に把握できるようになっている。

チーム「あれ、なくなるかも?」

“まとめ配送”で買い物困難な過疎地域への配送に挑む(チーム「大崎アジャーズ」)

 チーム「大崎アジャーズ」は、過疎化や高齢化で増加している買い物困難者の問題、運送業の不採算化と人手不足の問題を同時に解決するためのアプリケーション「まとめてGO!」を開発した。

近隣に商店や公共交通機関がなく買い物に行くことが困難な過疎地域への配送は、運送会社の移動コストが高くなる。「まとめてGO!」は、近隣宅へまとめて配送する仕組みによって配送料金を最適化。買い物困難者の配送料負担を抑えながら運送会社の採算化を図るものだ。GTFSデータと倉庫業データを利用して、買い物困難スコア(バス停からの遠さ、バス本数)と配送困難スコア(倉庫からの距離)で配送料金を決定。ここから、“まとめ配送”による割引を適用する2段階のプライシングで最終的な配送料金を確定する。近隣の人が配送を依頼するとプッシュ通知がくる機能、配送料金算出、確定した配送料金とまとめ配送による割引率を通知する機能までアプリに実装した。

チーム「大崎アジャーズ」


グランプリは物流事故リスク予測アプリを開発した「ACCVIS」が受賞

 グランプリに輝いたのは、物流事故リスクを予測・可視化するアプリケーションを開発したチーム「ACCVIS」。審査員の国土交通省 内山は、「オープンデータ活用のポテンシャルを引き出すという、今回のハッカソンの趣旨に一番合っていました。アプリの完成度も高く、データをどう使うとうまくいくか、非常によく考えていただいた点を評価しました。」と、作品についてコメントした。

グランプリを受賞したチーム「ACCVIS」(写真左の3名)と審査員を務めた内山裕弥(写真右から2人目)

 吉村氏が審査員特別賞に選出したのは、空間IDを用いてドローン飛行航路を可視化したチーム「AirBee」。航空経路のシミュレーションというだけでなく、都市計画・都市デザインの分野にも応用できそうなシステムであった点、航路の計算コストの最適化についても考慮していた点を高く評価したという。また、今回のハッカソンの総評として吉村氏は、「このイベントは、みんなで社会の問題に挑み、自らのアイデアで解決を図る場でもあります。社会課題の解決につながる新しいアイデア、サービスが生まれた有意義なハッカソンでした。」とコメントした。また、同チームはオーディエンス賞も受賞した。

審査員特別賞とオーディエンス賞を受賞したチーム「AirBee」(写真左の4名)と審査員を務めた吉村有司氏

 小林氏による審査員特別賞は、ドローンの飛行計画申請を楽しくするアプリを開発したチーム「E×3」に贈られた。「行政サービスの使い勝手は煩雑な面もある中で、そこをデータで改善していけることを示されました。いい作品の裏には作り手の強い思いがあり、その熱意も評価しました。」と小林氏。ハッカソンの総評として、「AIを活用しながらプロダクトを動かすところまでしっかり作り込んでおり、ハッカソン自体のレベルも上がっていると感じました。AIを使うことで、社会のニーズに向き合ってその解決アイデアを考え、実現することにより集中できるようになりました。みなさんとても良いアイデアをお持ちなので、今後もぜひ挑戦していただきたいです。」と述べた。

審査員特別賞を受賞したチーム「E×3」(写真左の4名)と審査員を務めた小林巌生氏

 最後に、LINKSのテクニカル・ディレクターを務める国土交通省の内山が、全体を振り返り挨拶を述べた。「今回は2回目のハッカソンでしたが、オープンデータの使い方のレベルが格段に上がっています。創意工夫をしてデータを使いこなしてもらえると、データを用意する側の励みにもなります。」と語り、今回のハッカソンを締めくくった。

国土交通省 総合政策局 公共交通政策部門 モビリティサービス推進課 総括課長補佐 内山裕弥

■関連サイト

LINKS
https://www.mlit.go.jp/links/

【ハッカソン】LINKS:POWER of DATA x DATA 2025
https://asciistartup.connpass.com/event/368083/


PageTop