旅客運送事業の統合的データベース整備による実態把握と区域可視化
タクシー、乗合バス、貸切バス、公共ライドシェアの各事業者が提出する輸送実績報告書は、現在、Excel様式で作成され、電子メールにより運輸局に提出されるものが多く、その他にはPDF形式(紙面提出によるスキャンPDFを含む)も含まれます。そのため、タクシーの営業区域や公共ライドシェアの運行区域は文字情報で把握されているものの、統合的なデータベースは整備されていないのが現状です。
こうした課題を踏まえ、各事業の輸送実績データを統合的に管理する仕組みを構築することで、事業者数、運転者数、営業収入を自治体単位や事業者単位で正確に把握するとともに、それらの情報を地図上に可視化し、地域間の輸送実績の比較分析に活かすことを目指しました。
LINKS VedaおよびLINKS BIを用いた実証では、「乗合バスの輸送実績の可視化」「タクシー・バスの運転者数の地域別分析」「乗合バスのコスト構造(輸送コスト)の可視化」の3つのテーマについて検証を行いました。

Project LINKSでは、専門知識がないユーザーでもデータを簡単に構造化しチャット機能や可視化アプリケーションで利用できるノーコードのシステム「LINKS Veda」および可視化ツール「LINKS BI」を開発し、行政情報の再構築を行っています。
「LINKS Veda」は、国土交通省が行政手続等を通じて保有するワードやエクセル、PDF、紙などの「非構造データ」を「構造データ」として再構築するためのソリューションです。LLM(大規模言語モデル)を用いて自然言語を解析し、非構造データから意味情報を抽出。指定されたカラムに格納することで、テーブルなどに構造化されたデータを自動生成します。
また、「LINKS BI」は、LINKS Vedaで作成したデータをそのまま投入し、チャットによる分析指示を可能とする「対話型BI」を実装することで、ユーザーが欲しいアウトプットを手軽に作成することが可能となります。

「LINKS BI」は、以下に示す機能を有しており簡単に分析結果を可視化できます。
①過去のチャット履歴…これまでに行った分析の履歴を一覧で確認
②現在のチャット履歴…現在の分析テーマに関するAIとのやり取りを表示
③チャット入力欄…AIに対して指示や質問を入力するための欄
④分析結果の表示…テーブルやグラフなどの可視化結果を表示

| 元データ名 | 一般旅客自動車運送事業(乗合・貸切:バス)の輸送実績報告書データ 第2号~第3号様式 |
| データ作成方法 ・内容 | Excel/PDF形式のデータをLINKS Vedaにより構造化 |
| データ構造化後の主な項目 | 管轄運輸支局 三重 事業者名 株式会社〇〇交通 延実在車両数(台) 200 輸送人員(人) 300,000 営業収入(千円) 300,000 |
| 年次 | 2022~2024年度 |
| 範囲 | 全国 |
| レコード数 | 2022年度:3,082 2023年度:3,421 2024年度:3,975 |
| 原典情報 | 国土交通省 輸送実績報告書【提出用指定様式】<一般乗合・一般貸切共通> https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk3_000113.html |
| 元データ名 | 一般旅客自動車運送事業(乗用:タクシー)の輸送実績報告書データ 第4号様式 |
| データ作成方法 ・内容 | Excel/PDF形式のデータをLINKS Vedaにより構造化 |
| データ構造化後の主な項目 | 管轄運輸支局 島根 事業者名 有限会社〇〇タクシー タクシー運転者数(人) 10 事業用自動車数(台) 20 走行キロ 60,000 |
| 年次 | 2023~2024年度 |
| 範囲 | 全国 |
| レコード数 | 2023年度:41 2024年度: 884 |
| 原典情報 | 国土交通省 輸送実績報告書【提出用指定様式】<一般乗合・一般貸切共通> https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk3_000113.html |
| 元データ名 | 一般旅客自動車運送事業(乗合・貸切:バス)の事業概況報告書データ 第1号様式 |
| データ作成方法 ・内容 | Excel/PDF形式のデータをLINKS Vedaにより構造化 |
| データ構造化後の主な項目 | 事業者基本情報_住所 佐賀県〇〇市〇〇 事業者基本情報_住所_緯度 33.XXXXX 事業者基本情報_住所_経度 130.XXXXX 乗合_営業収益_運送収入_旅客運賃(千円) 21,674 貸切_営業収益_運送収入_旅客運賃(千円) 155,774 |
| 年次 | 2023~2024年度 |
| 範囲 | 全国 |
| レコード数 | 2023年度:(乗合)101、(貸切)120 2024年度:(乗合)488、(貸切)620 ※別途年次不明あり |
| 原典情報 | 国土交通省 事業概況報告書【提出用指定様式】<一般乗合・一般貸切共通> https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk3_000113.html |
その他のデータ
1.乗合バスの輸送実績の可視化
輸送実績報告書から事業者数・営業収入・輸送人員などの基本項目を都道府県別に集計し、グラフで可視化します。これにより、全国的な傾向を視覚的に把握でき、乗合バス事業の地域特性の分析や、課内での迅速な情報共有を支援します。

2.タクシー・バスの運転者数の地域別分析
タクシー登録簿や輸送実績報告書を基に、運転者数を都道府県別に集計し、地図上で可視化します。これにより、タクシー、乗合・貸切バスの運転者の地域分布を視覚的に把握でき、人材不足地域の特定や労働力確保に向けた施策の検討を支援します。

3. 乗合バスのコスト構造(輸送コスト)の可視化
営業費用の構成や人件費の内訳など、都道府県別の輸送コストをグラフで可視化し、地域間比較を可能にします。これにより、各地域のコスト構造の傾向を客観的に把握でき、運賃改定審査における合理的な判断や審査プロセスの効率化を支援します。

国土交通省職員を対象に、有用性検証会を実施しました。現場業務への高い親和性が確認され、機能拡張や活用範囲の拡大に向けた可能性も明らかとなりました。


\ 利用者の声 /

PDFを読み込むだけで構造化データに変換され、信頼性の低い数値も検出できる点は、実務上非常に有用だと感じました。今後、複数データ統合時の異常値抽出機能が加われば、より実践的なツールになると考えます。
統計の専門知識がなくても対話形式で分析できる点は大きな強みです。チャット側から、利用者の状況に応じた分析メニューを提案してくれる機能が加われば、より幅広い担当者が活用しやすくなると考えます。
