わが国は世界的に見ると降水量が多く、水が豊かな国ですが、河川の流量は4月から5月頃の雪解け期、6月から7月頃の梅雨期、9月から10月頃の台風期のような水量が多い時期と水量が少ない時期を繰り返し、一年を通じて変動が大きくなっています。
生活用水や工業用水は季節や曜日によって使用量が変動しますが、毎日の河川の流量の変化ほどは大きく変動しません。そのため、安定的な水利用を可能にするためには、河川の流量の変動に係わらず、1年を通じて一定の水量を河川から取水できるようにすることが必要です。
そのため、ダムや堰等の水資源開発施設を建設しています。
水を取水しようと考えている地点の河川の流量を想定してみます。
ダム等が無い自然の状態の河川の流量は、図の破線で示すように梅雨期、台風期には多いが、少ないときもあり、1年を通じて一定量の取水を行おうとすると、Aの分の水量しか取水することはできません。
そこで、ダムを造って梅雨期や台風期のような河川の流量が多いときに水を貯え(図の緑色の部分)、河川の流量が少ないときに、ダムから水を流して河川に補給をすると(図の青色の部分)、河川の流量は赤線のような変動に変わり、1年を通じてA+Bまで取水を行うことが可能になります。
図で示したBの水量のように、ダムの建設により、新たに利用することが可能になった水量のことを、ダムの「開発水量」ということがあります。
水資源開発施設としては、主として次の施設の整備によって、新たな水量が利用可能となります。また、河川から農地や浄水場等の水を利用する場所まで水を導水するための水路が、併せて整備されます。
これまでに、わが国では約800カ所の多目的ダムと、約1,900カ所の農業用水、水道用水、工業用水に関する専用ダムが建設され、年間約186億m3の 都市用水の安定的な取水が可能となりました。 現在、わが国では年間約259億m3の都市用水を使用し、その約77%は河川からの取水に依存していますが、そのうちの約53%は水資源開発施設の整備によって安定的な取水が可能となった水量となっています。 特に、人口や経済活動が集中している関東臨海部の生活用水については、河川から取水する水量の約91%が水資源開発施設の整備によって安定的な取水 が可能となった水量となっています。
わが国でこれまでに建設されたダムの貯水量を合計すると、発電や治水のために使われる容量を全て含めて約 300億m3になります。
わが国は、国土面積が小さいこと、河川の距離が短く勾配が急であることなどから、巨大な貯水池の建設は困難な条件におかれています。そのため、これまでに 多くのダムが建設されましたが、わが国のダムの全ての貯水量を合計してもアメリカのフーバーダム1つの貯水量よりも小さく、エジプトのアスワンハイダムの貯水量の2割にも及びません。
(注)日本ダム協会資料より
(注)フーバーダムHPより