前(節)へ   次(節)へ
第I部 観光の状況

第2章 国際観光振興の回顧、総括と今後の展開

第4節 国際観光振興政策の今後の展開

3 MICE分野の国際競争力の強化



  (1) 都市におけるマーケティング戦略の高度化

 グローバルに展開するMICE誘致競争の激化に対応するためには、顧客となる国際団体や会議参加者、競合相手となる海外主要都市を念頭に置いたマーケティングの視点からのアプローチが必要である。海外主要都市は、リサーチの徹底、重点誘致分野の設定、競合相手との差別化をはじめとした様々なマーケティングの取組について高度化を進め、成果を挙げている。日本もMICE競争力強化のためのマーケティング戦略の構築・高度化を行い、それを実施していくことが急務である。
 マーケティング戦略を構築する上では、マーケットリサーチの強化が最重要事項の一つである。誘致の対象分野、会議のローテーション・規模・施設要件・成長性等の分析はもちろん、顧客となる国際団体・参加者のニーズなど関連するあらゆる事項を、徹底的にリサーチする必要がある。
 また、マーケティング活動を行うに当たっては、多くの海外主要都市が各々の誘致戦略において重点的に誘致活動に取り組む分野を設定しているように、都市戦略を実現するため、また、限られた人的・財政的リソースの中で誘致成果を最大化するために、重点分野の設定や絞り込みを行うことが効果的である。
 さらには、MICEは、産業・科学技術振興等のツールとして都市の競争力強化、経済発展に寄与するとともに、海外からの集客を通じた地域への経済効果の発生や文化交流にも資するものである。MICEの果たすこれらの機能に着目し、産業振興や地域経済振興などの観点から、MICEを都市戦略の中に位置づけて、活用していくべきである。
 海外の競合都市と差別化を図っていくこともまた重要である。差別化の要素は、プロモーション・ブランディング、価格設定、会議施設・宿泊施設、観光資源、会議内容の質等多岐にわたる。都市自らが、これらのMICEプロダクト(注)を積極的に作り込んでいくという強い意識と取組の強化が求められる。

  (2) MICE推進体制の構築

 MICE分野の国際競争力を向上させるためには、国内外の関係者の連携を強化することが非常に重要である。
 我が国は、医療・科学技術分野やビジネス分野で高い影響力を有するリーダーや団体に恵まれているが、その財産を活用しきれていない。MICE誘致においてこれらのリソースを活用した組織的な連携体制を構築し、活用する取組の1つとして、海外主要都市で導入されているMICE分野のアンバサダー制度等の導入を進めるなど、積極的に取り組んでいく必要がある。
 また、海外市場・競合都市・個別案件等に関する情報を入手するためには、MICE関連の国際団体への積極的な参加と活用、急速に成長しつつあるグローバルな都市アライアンスへの参画など、国際的なネットワークの構築・充実が欠かせない。したがって、今後、都市・コンベンションビューローが、それら国際的ネットワークに積極的に関わっていくことが必要である。
 MICE誘致は都市間競争であるとは言え、国対国の競争段階においては、チームジャパンとして我が国への誘致を実現し、関係者全体としての利益を確保するため、国内の都市・コンベンションビューローが連携・協力していくことが必要である。
 グローバルレベルで競争できるコンベンション都市の育成に向け、以上のような取組を行う意欲の高い都市を国として重点的に支援していく。

(注) 
「MICEプロダクト」とは、ロジスティクス、会議内容の質等のMICEの価値を構成する要素を意味する。

前(節)へ   次(節)へ
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport