● 政策課題勉強会(平成26年9月10日(水))
テーマ:「需要側の視点からみた要介護者等の旅行の現状と課題−介護者対象の意識調査をもとに−」
講演者: 水野 映子氏((株)第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部 研究開発室 上席主任研究員)
<講演内容>
要介護者(介護を必要とする人)が増加する中、その旅行にも注目が集まっている。要介護者の家族を対象に実施した
アンケート調査(※1)から、要介護者と行った旅行の実態や効用、要介護者と旅行しない理由や旅行することへの不安、
旅行環境(設備・サービス・情報)に対する評価などに関する結果を紹介した上で、要介護者やその家族が旅行する上で
の課題を提示する。
(※1)家族を「現在、介護している」と答えた人800名を対象としたインターネット調査(2011年11月実施)
【アンケート調査結果の概要】
○要介護者との旅行経験
・「旅行経験者(要介護者と一泊以上の旅行を実施)」は28.5% (旅行非経験者:71.5%)
・「旅行非経験者のうち、要介護者との旅行を検討したことがある人」は32.0%
○要介護者との旅行の実態
・形態は「個人旅行」が92.1%、旅行の同行者は「家族・親戚」が89.9%、利用交通機関は「自家用車」が70.6%
・旅行での行動は「温泉浴」が60.5%、「自然の風景を見る」が54.8%
○旅行の効用
・要介護者は8割前後、介護者は7割台が「楽しめた」、「気分転換ができた」、「旅行に満足できた」と回答
・旅行経験者の8割以上が、旅行は要介護者の「心身のためになる」、「親孝行になる」と回答
○要介護者と旅行しない理由(旅行非経験者の回答)
・『介護者のあきらめ・不安感』:「要介護者が旅行するのは無理だと思うから」が40.6%、
「要介護者と旅行することに対して不安を感じるから」が23.3%
・『要介護者の旅行意欲の低さ』:「要介護者が旅行したがらないから」が31.5%
・『介護者の時間的・経済的余裕のなさ』:「自分に時間の余裕がないから」が24.7%、
「自分にお金の余裕がないから」が20.6%
○旅行に対する不安
・「宿泊先での入浴」、「目的地での移動」、「目的地までの移動」、「移動中のトイレ」などを困難と考える
旅行非経験者が8割前後。但し、実際旅行した際に困難と感じた旅行経験者は4割前後。
○旅行環境に対する評価
・旅行経験者、非経験者ともに、9割近くが「設備・サービス・情報に不足感」、全体として9割前後が「旅行環境
の改善を希望」
【需要側の視点からみた課題】
○意識面
・旅行に対する不安の解消に向け、「設備・サービス」や「情報」が必要
・本人(介護される側)の潜在ニーズの確認が必要。「旅行したくない」は本音なのか。
○情報面
・要介護者との旅行に関する「既存情報の周知や活用」、「情報内容の充実」が必要
○設備・サービス面
・旅行の最大の目的は「入浴(特に温泉)」であるため、今後「入浴のための設備・サービス」にも注目