- 日時:平成29年12月18日(月)・19日(火)
- 会場:さいたま新都心合同庁舎2号館5階会議室
- 参加者:約160名(主に国、都道府県、政令市の河川担当者)
- プログラム:PDF
全国多自然川づくり会議は、多自然川づくりに対する知見の蓄積や意識の向上を目的とし、平成15年頃から国・都道府県・政令市の河川担当者を対象として毎年開催しています。
12月18日、19日の二日間にわたり、さいたま新都心合同庁舎2号館5階会議室において、「平成29年度全国多自然川づくり会議」を開催しました。
- 勉強会
- 4名の講師の方から多自然川づくりに関する解説や技術的なポイントについて講義を頂きました。
- 分科会発表・討議
- 9つの地方ブロック会議(計111事例)において選ばれた28事例の発表を行いました。
- 基調講演①「治⽔と環境の統合技術としての多⾃然川づくり -豊かな河川空間を⽬指してー」
- (株)吉村伸一流域計画室 吉村代表からご講演を頂きました。
- 基調講演②「地域と協働した川づくり ―上西郷川における実践―」
- 九州大学 林助教からご講演を頂きました。
- 全体発表
- 28事例から選ばれた代表4事例について、発表及び討議を行いました。
また、代表4事例について、表彰を行いました。
- 【平成29年度】計111事例
- 【平成28年度】計116事例
- 【平成27年度】計117事例
- 【平成26年度】計108事例
- 【平成25年度】計108事例
多⾃然川づくりの基本
国⼟交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 課長補佐 田中 孝幸
河川環境施策の変遷や、多自然川づくりの背景及び取組み状況を踏まえ、多自然川づくりの基本的な考え方についてご講演いただきました。また、多自然川づくりに取り組むにあたって、「いま」だけでなく「未来」も頭に入れて川づくりを考える重要性や、環境配慮事項を引き継いでいくことの必要性についてお話しがありました。

河川⽔辺の国勢調査から⾒える⽔域環境の良否
国立研究開発法人 土木研究所 水環境研究グループ ⾃然共⽣研究センター 研究員 森 照貴
河川水辺の国勢調査結果を河川環境の評価に活用することについてご講演いただきました。水辺の国勢調査のデータを用いて傾向分析を行うことによって、河川において環境が良好・不良な地点を把握することや、どの種が出現・消失傾向にあるのか把握し、水域環境の良否の評価につなげていく可能性についてお話がありました。

現場における河川環境情報図の活用
公益財団法人 リバーフロント研究所 主席研究員 舟橋 弥生
平成29年6月に公表された提言『持続性ある実践的多自然川づくりに向けて』において、河川環境情報図の活用などについて記載されていることをご紹介いただき、河川環境情報図の重要性についてご説明いただきました。また、河川環境情報図の構成や活用段階、河川環境資料を見る際の注意点についてお話がありました。

川とまちと人をつなぐ水辺空間デザイン
国立研究開発法人 土木研究所 水環境研究グループ 河川生態チーム 主任研究員 鶴田 舞
水辺の利用促進につながる空間デザインの考え方・事例についてご講演いただきました。水辺のデザインにおいては、川の魅力を活かすことが大前提であり、デザインとは人と水辺との良好な関係を生み出すためのツールであること、そして最も重要なことは、自分で現場に行き水辺を訪れるユーザー目線に立ってデザインを考えることであるとお話がありました。

第1分科会:計画・設計・施工に関する事例
-
(1)「利根川水系中川における鳥類集団営巣地の今後について」
関東地方整備局 江戸川河川事務所 松本 在
事例概要 発表資料
-
(2)宮城県河川海岸環境配慮指針について
宮城県 土木部 髙城 良太
事例概要 発表資料
-
(3)鳴瀬川水系吉田川における斜め掘削の実施とモニタリングについて
東北地方整備局 北上川下流河川事務所 田中 優希
事例概要 発表資料
-
(4)鳴鹿大堰魚道流量調整試行運用によるサクラマス遡上の効果について
近畿地方整備局 福井河川国道事務所 山本 一浩
事例概要 発表資料
-
(5)小田川の井堰改築における川づくり
岡山県 土木部河川課 白神 美希
事例概要 発表資料
-
(6)奈半利川の濁水対策について
高知県 河川課 高木 竜太
事例概要 発表資料
-
(7)ムクノキを活かした川づくりを目指して:代表事例
鹿児島県 北薩地域振興局建設部 越迫 由香里
事例概要 発表資料
第2分科会:維持管理・モニタリングに関する事例
-
(1)信濃川下流における環境に配慮した河道掘削の取組
北陸地方整備局 信濃川下流河川事務所 若杉 康夫
事例概要 発表資料
-
(2)人工ワンドにおけるモニタリング調査報告
北陸地方整備局 信濃川河川事務所 髙倉 優次
事例概要 発表資料
-
(3)波介川河口導流事業におけるミティゲーションについて
四国地方整備局 高知河川国道事務所 中村 忠司
事例概要 発表資料
-
(4)湾曲部における河床掘削事例の検証と考察
山口県 土木建築部河川課 河村 和也
事例概要 発表資料
-
(5)渡良瀬遊水地 ヨシ焼きの紹介
関東地方整備局 利根川上流河川事務所 内藤 ゆりか
事例概要 発表資料
-
(6)大分川・大野川の河道管理における環境配慮への取組:代表事例
九州地方整備局 大分河川国道事務所 渡邊 文恵
事例概要 発表資料
-
(7)久著呂川における釧路湿原への土砂流入対策と多様な流れの復元
北海道 釧路建設管理部事業課 遠藤 大
事例概要 発表資料
第3分科会:都市河川・景観に関する事例
-
(1)トコトコダンダン~DESIGNで人・まち・水辺をつなぐ~
大阪府 西大阪治水事務所 萩 信之
事例概要 発表資料
-
(2)宮川堤(土木遺産)の改修工事
中部地方整備局 河川部 谷田 翔平
事例概要 発表資料
-
(3)百間川分流部における地域と連携した多自然川づくりについて
国地方整備局 岡山河川事務所 渡辺 伸宙
事例概要 発表資料
-
(4)かわまちづくり事業による神代川の再生について:代表事例
宮崎県 西臼杵支庁 南﨑 亮佑
事例概要 発表資料
-
(5)低木を利用した防護柵の代替えの取り組みについて
北海道開発局 札幌開発建設部 岩見沢河川事務所 保科 勇翔
事例概要 発表資料
-
(6)太田川多自然川づくり計画
富山県 富山土木センター 椙本 敏規
事例概要 発表資料
-
(7)一級河川桜川における「水辺の楽校」の取組みについて
群馬県 利根沼田振興局沼田土木事務所 吉田 友貴
事例概要 発表資料
第4分科会:地域連携・人材育成・普及・啓発に関する事例
-
(1)美しい宮川、復活への歩み~地域と協働した川づくりの紹介~
大分県 大分土木事務所 後田 利之
事例概要 発表資料
-
(2)『四万十川自然再生事業』から生まれた地域協働体制の紹介
四国地方整備局 中村河川国道事務所 川﨑 智仁
事例概要 発表資料
-
(3)渚滑川流域のケショウヤナギ保全に向けた取り組みについて
北海道開発局 網走開発建設部 遠軽開発事務所 硯見 もえ
事例概要 発表資料
-
(4)いはらの川再生プロジェクト~ふるさとのニホンウナギを救え!庵原から日本、そして世界へ!~:代表事例
静岡県 静岡土木事務所 長井 雅昭
事例概要 発表資料(重要種の位置情報を含むため非掲載)
-
(5)改良復旧事業における地域環境に配慮した河道整備
岩手県 県土整備部 細川 知美
事例概要 発表資料
-
(6)天然記念物イタセンパラが生息できるワンド環境の維持管理
近畿地方整備局 淀川河川事務所 清重 亜美
事例概要・発表資料(重要種の位置情報を含むため非掲載)
-
(7)岐阜県内における河川魚道の機能回復事業
岐阜県 県土整備部 牧村 尚浩
事例概要 発表資料
治水と環境の統合技術としての多⾃然川づくり -豊かな河川空間を⽬指して-
(株)吉村伸⼀流域計画室 代表 吉村 伸一
まちの暮らしを豊かにする土木のデザインについてご紹介いただき、非常時のデザインと平常時のデザインを統合化すること、すなわち治水と環境を統合して考えることが多自然川づくりの本質であるとのお話がありました。多自然川づくりを進めるにあたって重要なことという問いに対しては、まず川を良く見て大事な要素を見つけ出すことが必要であり、その上でどうしたら良いか考えるべきであるとのお話がありました。

地域と協働した川づくり-上⻄郷川における実践-
九州大学大学院 工学研究院 環境社会部⾨ 助教 林 博徳
上西郷川における取組み内容についてご紹介いただくとともに、なぜ多自然川づくりを行うのかについてご説明いただきました。川づくりを通して、地域住民・生物・自然環境がいい関係性を持続的に保つことが目的であり、多自然川づくりは目的を達成するためのツールであるとお話がありました。林先生から、多自然川づくりに関して困っていることがないかと参加者に対して問いかけがあると、会場からは合意形成やワークショップの進め方についてなどの質問がありました。

コメンテータ
- 九州⼤学⼤学院 ⼯学研究院 環境社会部⾨ 助教 林 博徳
- (株)吉村伸⼀流域計画室 代表 吉村 伸一
- NPO 全国⽔環境交流会 代表理事 ⼭道 省三
- 国立研究開発法人 土木研究所 自然強制研究センター センター長/国立研究開発法人 土木研究所 水環境研究グループ 河川生態チーム 上席研究員 萱場 祐一
選出された代表事例
第1分科会
- 『ムクノキを活かした川づくりを目指して』 事例概要 発表資料
- 鹿児島県 北薩地域振興局建設部 越迫 由香里
選出理由
災害査定に対して、2~3月の短い期間で治水面だけでなくムクノキの保全策、景観にも配慮した検討を行った。また、その後の施工、地域を巻き込んだ取り組みなど展開の仕方も優れていた。全国でこのような事例が増えると良いと思う。
全体発表においてコメンテータより
・将来の川の姿のイメージ図が素晴らしい。
・現場を見て、ムクノキを将来に残そうという価値を見つけた眼力と感性が非常に大事。
・河畔樹木には、役割や歴史的な背景、地域との関係が色濃くあるので、ムクノキを残すことと地域との関わりあいの視点で見つめ直すと事業に深みがでる。
・川づくり5箇条は、専門用語的な言葉ではなくて、川をよくしていこうという気持ちが伝わってきて素晴らしい。

第2分科会
- 『大分川・大野川の河道管理における環境配慮への取組』 事例概要 発表資料
- 九州地方整備局 大分河川国道事務所 渡邊 文恵
選出理由
長期的な維持管理目標を立て、その中で具体的な取り組みを継続して実施していること、竹林の維持管理の取り組みが先進的であったということ、長期的にモニタリングを実施していくことはコストもかかるが、職員自らが写真撮影などを行い継続していること、職員自らが川を見るということが大切であるという観点から代表事例とした。
全体発表においてコメンテータより
・平成20年から委員会を設置して長期にわたって体系的に取り組んでいる点と、個別の技術開発にも取り組んでいる点が非常に良い。
・河川水辺の国勢調査は平成2年に開始されているので、調査結果を活用して長期スケールでの環境配慮とその影響について分析があるとさらに良い。
・抜根よりも伐採のほうが安価というのは、想像とは逆であった。現場においても非常に役に立つ事例である。

第3分科会
- 『かわまちづくり事業による神代川の再生について』 事例概要 発表資料
- 宮崎県 西臼杵支庁 南﨑 亮佑
選出理由
昔整備された三面張りの直線河道を、ブロック積みの蛇行河川に回復させることは、なかなか取り組むことができることではない。地域や河川管理者が一体となって、川のあるべき姿の再生を目指している良い事例である。
全体発表においてコメンテータより
・河川の担当者は数年で異動となってしまうため、熱意を持って川づくりに取り組むことが非常に大事である。熱い思いが伝わり、好感を持った。
・神代川は日本の古い神話の川であり、一番大切なのは歴史と物語性である。高千穂地域はすごく重厚な歴史を紡いできた印象を受けるので、この土地の風景の特徴をデザインに織り込んでいけたら良い。
・既設の石積み護岸がしっかりしているので、上手く生かすことができると良い。

第4分科会
- 『いはらの川再生プロジェクト~ふるさとのニホンウナギを救え!庵原から日本、そして世界へ!~』
事例概要 発表資料(重要種の位置情報を含むため非掲載)
- 静岡県 静岡土木事務所 長井 雅昭
選出理由
地域連携をテーマとした分科会であるが、その中でも次世代を担う子供たちを巻き込むことで活動の持続性を担保している観点から参考になる事例である。
全体発表においてコメンテータより
・子供も大人も皆さん笑顔で楽しそうに取り組んでいるというのが非常にすばらしい。
・石倉かごによるモニタリングをイベントとして開催し、子供たちが川とつき合っていくきっかけにしたというのはすばらしい取り組みである。
・中小河川でも、よく調べてみると非常に色々な生物がいる。地域の多様性をいかに維持していくかということがとても意味深いと改めて感じた。
