vol.6.....カワボウをカイボウする!

雨の動きを知り、日々を安全に、快適に


③In-Outからひもとくダム情報

        
カワボウには、「ダム情報」というメニューがあります。そこで地方選択を行うと、「ダム諸量一覧表」が表示されます(下表)。この数値を追っていくと、ダムにどれだけの水が入り、放流量をどう調節しているか、それに伴い、ダムの貯水位がどう変化していくかが分かります。かなりマニアックな領域に入りますが、データの見方が分かると、ダムの役割や雨-ダム-川の水位の関係が分かり、とても面白くなってきます。
  
ダム諸量一覧表
A. 流域平均時間雨量(mm/h)
「流域平均時間雨量」は、そのダムのある流域の(山の稜線の内側、水が集まってくるエリア:右図参照)、平均的な時間雨量をいいます。

テレメータ雨量は1地点の雨量を知ることができますが、流域平均時間雨量は面的な雨量を示しているため、例えばそれが、20mm/hや30mm/hを超えて長時間続くようだと、降った雨がどっとダムに入ってくることが確実になります。こうなった場合には要注意です!
流域平均時間雨量
B. 貯水位(m)
貯水位はダムの水面の高さのことで、これは基準となる海面(標高0m)からの高さを示しています。上の表(ダム諸量)でも、600mとか、900mという数字が出ていますが、これは水深のことではないのでご注意を!(右図)

C. 全流入量(m3/s)
D. 全放流量(m3/s)

ダムに入ってくる水量を全流入量といいます。単位はm3/s(second:秒)です。全放流量は、ダムから流している量の全てです(発電などに使う放流も含めてダムから出て行く水量を差します)。

なお、全流入量は、ダム貯水位の変化を水量に換算し、全放流量を足すことによって算出しています。全流入量>全放流量であればダムの貯水位が上がり、貯水量(※E)が増えていきます。

E. 貯水量(103m3)
貯水量はダム湖に貯まっている水の量です。貯水位から換算することでわかります。
貯水位
  
全放流量・貯水量
F. 貯水率(利水容量:%)
貯水率はダムの容量のうちどのくらいの割合で貯まっているかという値です。利水容量というのは、農業用水や工業用水、上水道など、私たちが利用するために設定した容量です。

G. 貯水率(有効容量:%)
有効容量は、全貯水容量から堆砂容量などを除いた、治水容量や利水容量として実際に使うことのできる容量です。ちょっとややこしいのですが、この数字は私たちが水を利用するという観点からは重要なものですね。





ダムは何をしている?
利水放流、環境維持と洪水調節
        
        
カワボウのデータを見ていく上では、ダムが普段どんなことをしているか、
それが頭に入っていると理解しやすくなります。

  
普段のダム




大雨時の数値の変化を追う
        
2014年10月6日の台風18号の際、神奈川県の「宮ヶ瀬ダム」のダム諸量を時間ごとに見てみました。雨は0時から流域平均時間雨量で10mm程度ずつ降っていて、雨量が増えると、その1時間後や2時間後に全流入量が増えているのが分かります。いよいよ台風が近づいてきた8:00には、流域平均で28.3mm/hの雨が降り、その結果、10時に全流入量が355m3/sになっています。これは0時の4倍以上!! 雨がピークだった10時には37.1mm/hを記録し、11時の全流入量も345.08m3/sあります。雨がやんだ12:00でも、全流入量は大きく、0時の3倍程度もあります。


宮ヶ瀬ダムのダム諸量の変化(10/6:台風18号)
  
ダム諸量の変化

全放流量が増えつつも、In>Outで貯水位上昇
        
雨が降るにつれ、少し遅れて全流入量(In)が増えていき、それに伴って全放流量(Out)が増えていることが分かります。12時は0時の2倍近く、100.87m3/s流しています。このように、全流入量(In)>全放流量(Out)の「洪水調節」をしているので、少しずつ貯水位があがり(12時間で1m上昇)、貯水率が増えています。こうして、下流側に一気に水を流さないように調節していることが、数値からよくわかります。

実際に行っているダムの操作を把握し、下流側の水位変化まで把握して見るようになれば、あなたも立派なマニアです。水の流動を追って、データをつなげて見ていくことで、水害の危険性を知るだけでなく、川の施設が何をしているか、どんな役割を持っているかを知る、考えることができます。この知的な楽しみ方は、まさに「マニア」のかたにインタビューしてきましたので、そちらをご覧下さい! インタビューへ >

        
        
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