バリアフリー

仙台市交通局 「計画段階からの障害当事者参加による、地下鉄車両と駅舎のバリアフリー化」

講評

 受賞者は、かねてより「人が輝く杜の都」の創出にむけたバリアフリー化に努めてきた。地下鉄東西線整備では、設計段階において車両モックアップと模擬ホームを用いた車椅子利用者の意見反映を行うなど設計への当事者参加を進め、その結果ホームと車両間の段差・隙間の縮小、すべての自動改札口の拡幅化などにより経路全てにおいて車椅子利用者の単独通行が可能となった。その他の障がい者に対しても水準を超える
意欲的な取組みを行っており、これらが他に波及することを期待して表彰することとした。

受賞者の取組み等

■ 取組みの概要
 仙台市交通局では、平成27 年12 月に新たに開業した地下鉄東西線の整備に当たり、計画段階から障害当事者の参加のもと意見聴取を行い、設計等に反映させている。その結果、車椅子でも介助無しで乗降できるなど、車両と駅舎の双方において最先端のバリアフリー化がなされている。

● 計画段階からの障害当事者参加
 仙台市交通局では、地下鉄東西線の建設に当たり、仙台市と協調して様々な障害者団体との意見交換会を開催し、実際に利用する障害者が期待するバリアフリー設備について意見を聴取し、車両や駅施設の設計に反映させている。さらに、バリアフリー設備の設計方針が固まった段階で、車両と模擬プラットホームの実物大のモックアップを作成し、乗降のしやすさや車椅子スペース等、障害者に体験してもらいながら意見聴取を行い、実施設計に反映させ、さらに実効性の高い施設整備を行っている。なお、車両製作や駅施設の工事が完了した時点でも、障害者を対象としたバリアフリー設備説明会を行い、聴取した意見に対し、開業までの間に可能な限りの対応を行っている。
 

障害者団体と交通局の意見交換会
モックアップを使った隙間、段差の確認

●車椅子利用者も介助なしで乗降できる車両
駅係員の介助無しに車両に乗降したいという車椅子利用者の声や、各駅2名配置となる駅係員の負担も考慮し、東西線では、車椅子利用者の介助なしでの乗降を実現している。プラットホームと車両床の高さの差を1cm 程度とし、さらにホーム縁端に合成樹脂製の隙間調整材を設置することにより、段差を2cm、隙間を3cm 程度に抑えている。また、障害者団体から1列車につき複数の車椅子スペースを設置して欲しいという要望や、ベビーカーの利用が拡大していることも踏まえ、全ての車両にフリースペースを設置している。モックアップによる意見聴取時の要望を踏まえ、二段手すりに加え、縦手すりを設置するなど工夫も行っている。
 
車椅子利用者単独で車両に乗降する様子
車椅子、ベビーカー用フリースペース

● 車両や改札外とも連続した駅舎のバリアフリー化
 東西線では、列車のどの車両にも車椅子での利用が想定されることから、ホームの一番狭い部分でも1.5m の幅を確保し、車椅子と歩行者がすれ違うことができるようにしている。また、全ての自動改札口が90cm の幅で統一されており、車椅子利用者だけでなく、べビーカーやキャリーバッグ利用者にも利用しやすくなっている。

全てが幅広の自動改札口

 通常改札内に設置することが多いトイレも、東西線では改札の外に配置し、より多くの人が使えるように工夫している。各トイレには、複数の多機能トイレを設置しているが、使用中の待ち時間解消だけでなく、右まひ・左まひのそれぞれの障害に対応して、手すりの位置等を左右対称に設置している。
 

左勝手、右勝手、の両方が設置された多機能トイレ

◎ 今後期待される取組み
仙台市交通局では東西線の他、昭和62 年に開業した南北線を抱えており、整備時期の違いから、バリアフリー化の状況に大きな差が生じている。交通局では、仙台市バリアフリー基本構想に基づく特定事業計画を定め、南北線についても全駅にホームドアを設置するなど取組みを進めているが、今後東西線の開業によって得られた知見も活用し、より一層バリアフリー化を推進していくことが期待される。

仙台市交通局(地下鉄東西線建設事業)
【連絡先】
 宮城県仙台市若林区荒井字矢取東46-1(仙台市交通局鉄道技術部建築設備課)
 TEL 022-290-9853
【Web − URL】 
 http://www.kotsu.city.sendai.jp/(外部サイト)
 

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