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全日本空輸株式会社、日本航空株式会社 「航空大手2社の連携による新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた接遇ガイドラインの策定と主要空港への展開」

講評

   一番大きな功績は、同業ライバル社との連携である。航空業界は他の公共交通機関と異なり、同一路線の中でサービスを競争し合い、顧客を奪い合うのが従来の取組みであった。しかし新型コロナウイルスの拡大がサービスの本質を気づかせてくれたといって良い。2 社はコロナ禍の中でマイナスをプラスに変えていく大きなチャンスを連携して模索しており、本事業はその第一陣として捉えられる。
   その取組みでは関連会社も含めて障がい当事者社員による様々なロールプレイを実施して、多様なユーザーのニーズを再認識し、だれ一人取り残さない接遇ガイドラインを完成させた。同時に東京2020 大会の開催という環境下ではあったが、全国8 大空港との連携も今後の取組みに期待感が大である。以上が本事業を高く評価した理由である。
   なお、日本の航空業界を代表する2 社が連携した今回の取組みは、他の交通事業者も十分に応用できる好事例といえる。

受賞者の取組

■ 取組の概要
   高齢者・障がい者等の配慮を要する方への航空機利用時の接遇について、新型コロナウイルス感染防止を踏まえたガイドラインをANA・JAL 共同で策定するとともに、空港運営会社と連携して、当該ガイドラインに基づく接遇方法に関する意見交換会を開催している。

● 新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた接遇ガイドラインの共同策定
   障がい者の他、慢性疾患のある方や高齢者等が新型コロナウイルスに感染した場合に、重篤な症状や致命的な状況に陥るリスクが高いことから、コロナ禍における感染拡大防止および接遇への戸惑いや不安を軽減し、安全・安心な空の旅を提供することを目的に、障がい者等の配慮を要するお客様に航空機を利用する際の具体的かつ詳細な接遇方法を示したガイドラインをANA・JAL 共同で策定した。


                         ANA空港係員による移乗の実演


                   JALインストラクターによる手引き誘導

● 国内主要8大空港との接遇に関する意見交換会の実施
   東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組みとして、当該ガイドラインに基づいた接遇方法に関する意見交換会を空港運営会社と連携し、障がい当事者参加型で実施している。
   これにより、航空会社・空港運営会社の垣根を超えたお客様視点でシームレスなサービスを提供できる体制を構築し、オリパラレガシーとして継続的に展開を行うことで、障がい者の航空利用人口の拡大および各種取組みにおける障がい者の参画機会を創出し、すべてのお客様への安全・安心な航空利用につなげていく。



                             ANA・JAL社員による接遇ガイドライン座学


                     障害当事者とのディスカッション

 

今後期待される取組

   日本の航空業界を代表する2 社による今回の連携事業は、国内外のすべての航空会社及び空港会社に活用されるべき取組みである。新型コロナによって生まれた困難が次の時代の新たなサービス戦略を生みだしている。是非全国各地の空港での実践を持ち寄り、他の顧客サービスにも応用できるよう検討して欲しい。

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