バリアフリー

市立伊丹病院    「手話通訳や指差しカードの導入等による医療現場内外における聴覚障害者とのコミュニケーションの円滑化とバリアのないまちづくりへの貢献」

講 評

 市立伊丹病院では、聴覚障害者の外来、入院診療において、手話通訳による患者と医師、看護師などとのコミュニケーションを円滑にする取組みが、約40 年間にわたり継続して行われている。2009 年には、兵庫県下で初の手話通訳士を配置して聴覚障害者の対応窓口を整備し、より積極的に診療に携わる体制を構築してきた。近年では、指差しカード、点眼チェック表などの補助ツールや治療説明動画の作成、IT 機器の活用を通じ、安全で安心な信頼される医療の提供を図っている。このような取組みは、1982 年来院した聴覚障害のある母子に、看護師の江木洋子氏が手話で話しかけたことをきっかけに始まった。そして、1985 年に江木氏が院内手話サークル「たんぽぽ」を発足させ、現在に至っている。「たんぽぽ」では、院内スタッフへの手話学習会を開催するほか、医師は聴覚障害者を対象に講演会を行い、医療知識を提供している。このような聴覚障害者に対する医療にかかわるコミュニケーションの円滑化の取組みを長きにわたり粘り強く、また充実させながら行っていることは、医療界における先進的な取組みであると高く評価される。

受賞者の取組

■ 取組の概要
 市立伊丹病院は、院内に手話通訳士を配置し、聴覚障害者の診療において、患者と医師とのコミュニケーションを円滑にすることで、患者が自身の症状をより深く理解し、診療を受けられるような取組みを約40 年間にわたり継続するとともに、同病院の手話通訳士が会長を務める院内手話サークル「たんぽぽ」の学習会等の活動を通して、院内における聴覚障害者への理解促進に資する取組みも継続している。


● 手話サークル「たんぽぽ」の活動
 1982 年、聴覚障害のある子と母が来院した際、看護師の江木氏が親子に手話で語りかけたことをきっかけに医師との会話の通訳を頼まれ、これを機に各診療科から手話通訳を依頼されるようになり、徐々に聴覚障害者の来院が増加した。江木氏は、院内手話サークル「たんぽぽ」を1985 年に発足させ、医師を含む院内スタッフが聴覚障害者の患者と簡単な挨拶等のコミュニケーションがとれるように手話学習会等を開催した。サークル活動は約40 年間継続しており、現在は院内に留まらず地域の医療従事者も参加している。
院内には手話通訳士が配置されており、患者の要望に応じて診療から会計まで付き添うこともある。来院した聴覚障害がある患者からは、「手話通訳者に同伴を依頼しなくても一人で通院ができる」「医師の説明を通訳してくれるから病状をよく理解できる」「サークルの活動により、手話通訳士以外の方でも簡単な手話ができる人が増えている」といった声を伺うこともできた。

◎今後期待される取組

手話通訳士の通訳活動は現在でも相当数に上るが、今後、新型コロナの感染が落ち着いてくると、さらに多くの需要が見込まれる。利用者の増加に応える意味でも、院内手話サークル「たんぽぽ」の活動の活性化が望まれるので、体制強化が必要と思われる。また、現在、関西においても手話通訳士を配置している病院は少なくないので、各病院との情報交換を行って、相互にレベルアップを図ることを期待したい。

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