本事例は、九州旅客鉄道株式会社(以下JR 九州とする)長与駅における 一部時間帯の無人駅化への対応として、高齢者施設を経営する社会福祉法人 が取り組んだ先進的な無人化駅の受託事業である。全国的にも極めて困難な 無人化駅の運営課題に対して、駅を「まちのコンシェルジェ」、「新たな「ま ちのプラットフォーム」として模索する多様な取組みにより、住民みんなの 困りごとをジブンゴトとして捉え、町内外のさまざまな地域住民に働きかけ る、JR 九州及び長与町と協働した親しみやすいユニバーサルアクションプロ グラムは、全国各地で同様な課題を抱える無人駅の対策に大きな示唆を与え、 その取り組みは高く評価される。
■取組みの概要
社会福祉法人ながよ光彩会では、時間帯無人駅である長与駅において、乗降介助業務を含む業務一部委託を受けている。無人駅対策にとどまらず、賑わいの創設等の地域活性化を試みている。
●長与駅における「GOOOOOOOD STATION(グッドステーション)」の開設
長崎県西彼杵郡長与町にある長与駅は、一部時間帯(正午以降)無人駅となっており、駅員が不在となる時間帯において、車いす使用者等のからだが不自由な方の乗降介助や時間帯によって変わる乗車ホームの案内など、駅利用者の困りごとへの対応が課題となっていた。
社会福祉法人ながよ光彩会は、この駅利用者の困りごとを解決すべく、JR 九州及び長与町に働きかけ、長与駅構内にカフェ・ショップ機能も持つ「GOOOOOOOD STATION(グッドステーション)」を開設し、簡易委託というかたちで駅における乗降介助・改集札・案内・清掃の業務を請け負うなど、高齢者や障害者を含む全ての人が安心して駅を利用できるような取組を実施している。特に乗降介助業務に関しては、鉄道会社が外部の社会福祉法人に対して当該業務を委託する先進的な事例となっている。
GOOOOOOOD STATION 乗降介助業務
●「ユニバーサルアクションプログラム」を実施
障害当事者や長与町、JR 九州等に働きかけ、長与駅および鉄道車両を使用して、地域住民や一般企業等の様々な属性の参加者を対象に「合理的配慮の提供」とは何かを学び、無人駅における利用者・住民同士の助け合いを促進することを目的とした、座学とロールプレイングによる「心のバリアフリー」を学ぶ実践的な研修プログラム(「ユニバーサルアクションプログラム」)を実施している。
ユニバーサルアクションプログラム
(車椅子介助研修)
長与駅における法人の取組みは前例のない交通と福祉を掛け合わせる事業として、困難の連続であったと思われるが、従来の法人事業の枠を超える魅力的な活動である。是非この経験を、JR 九州ばかりでなく全国各地の鉄道事業者、自治体、社会福祉法人等と共有し、今後の無人駅対策の一つとして有効に発信して欲しい。