バリアフリー

株式会社商船三井・株式会社商船三井さんふらわあ 「多様な乗船客に対応した、新造船とフェリーターミナルのユニバーサルデザイン化への挑戦」

講評

   近年全国各地の船舶や旅客船ターミナルでは、バリアフリー化が急速に進展している。その中でも本事例は国内における有数の大型旅客船バリアフリーの優良事例として高く評価される。
 乗船者にとって旅客船は非日常ではあるが一つの住まいであり街でもある。そのため旅客船には乗船者の期待に応えられる様々な難しいバリアフリー化が求められる。客室整備もその一つであるが、本事例では特にタイプ別の客室のバリアフリー化が工夫され、中小の旅客船にも十分に応用できる取組みがなされている。こうしたことが可能となったのは様々な障害当事者等からの意見反映であると認識できる。
 一方、別府国際観光港旅客船ターミナル整備では大分・別府市内の障害者団体代表らとの協議の場が継続的に設定され、理想的なバリアフリー化の作業が進められたが、本事業を支援した交通エコモ財団との協働作業の効果も記しておきたい。
 施設のバリアフリー化は法基準に基づくだけでは成立しないことが多く、設計者の工夫や事業者の長期的な取り組みが欠かせない。これら二つの優れた事例は、障害当事者のみならず専門的知見のある関係機関、及び事業者の明確な取組み姿勢が一体となって実現したものである。以上から本事例は国土交通大臣表彰として極めて相応しいものと認められる。

 

受賞者の取組

■ 取組の概要
   株式会社商船三井・株式会社商船三井さんふらわあは、大阪~別府航路で運航する「さんふらわあ くれない」及び「さんふらわあ むらさき」(船主:株式会社商船三井)の建造にあたって、利用者アンケート結果や障害当事者の乗船体験時等にいただいた意見を反映し、可能な限り様々な乗船者が安心して船旅を楽しめるよう、バリアフリー整備を実施した。
 また、新造船就航に伴い、誰もが使いやすくスムーズな乗船の実現を目標として、別府国際観光港にユニバーサルデザイン化を目指して新たなフェリーターミナルを整備した。


● バリアフリー化されたフェリーによる円滑な移動の実現
   
障害当事者等からの意見を踏まえ、車いす使用者がスムーズに移動できるよう船内に余裕をもたせており、車いす使用者がターミナルの発券カウンターに立ち寄ることなく乗船を可能とし、座ったまま扉の開閉が可能となる二次元バーコード乗船システムを採用したほか、船内にキッズトイレ、ベビーケアルーム等を整備するなど、新たな取組みと環境整備を積極的に導入した。また、ソフト面においても、スタッフの接遇向上を目的とした「フェリーにおける障害者・高齢者対応ガイドライン」の作成に加えて、接遇研修を積極的に実施するなど、誰もが安心して乗船できる取組みを実施している。

● 新ターミナルのユニバーサルデザイン化
 新ターミナルの整備にあたっては、障害当事者も参画する協議会を設立し、障害特性ごとにヒアリングを行い、円滑な移動に関する課題及び解決方法について協議を実施した。協議会での検討結果を踏まえ、新ターミナルには屋根付き駐車スペースを整備し、うち2台は駐車・出庫しやすいスルー型としたほか、ベビーケアルーム、補助犬用トイレ、カームダウン・クールダウンルーム等を整備した。


          新造船 さんふらわあ くれない


    スイートバリアフリールーム 二次元バーコード自動開閉ドア

                         


 

     












  

      フェリーターミナル内 バリアフリー駐車スペース
           

今後期待される取組

  「さんふらわあ くれない」及び「さんふらわあ むらさき」は、施設の特性上の空間制約がある中で、本格的な旅客船のバリアフリー化を実現した好事例である。ラウンジ、トイレ、客室、通路、レストランなど様々な場面で随所に有益な工夫がみられる。しかし、利用者のニーズは変化する。本事例が全国各地の船舶のバリアフリー化に継承できるよう、さらなるスパイラルアップを図り、情報発信されることを期待したい。
 一方、旅客船ターミナルの整備は交通施設の一種でもあり、多くの公共的交通関連施設のバリアフリー化モデルとなる。引き続き様々な利用者のニーズを受け止め、反映できる取組みが望まれる。 

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