運輸分野におけるCDM促進セミナー(開催概要)

The Seminar of a Study to Promote Clean Development Mechanism(CDM) in Transport Sector to Resolve Global Warming Problem
国土交通省(MLIT)は、「(社)海外運輸協力協会」(JTCA)並びに「タイ国運輸省」(MOT)及び同省下部組織である「交通政策・計画室」(Office of Transport and Traffic Policy and Planning(OTP))との共催により「運輸分野におけるCDM促進セミナー」を次のとおり開催しました。
場所:タイ国・バンコク インペリアル・クィーンズ・パーク・ホテル (Imperial Queen’s Park Hotel, Bangkok, Thailand)
日時:2005年3月15日(火) 10:00−18:00
本セミナーには、タイ国運輸省次官のJaruk氏やバンコク副市長のNathanon氏を始め、我が国及びタイ国の政府関係者、地球温暖化に関する学識経験者、バス会社、自動車製造会社等の民間事業者など、160名以上の参加がありました。
本セミナーでは、日本及びタイ双方の関係者が「運輸分野におけるCDMの有効性や可能性について」、「タイにおけるCDM、バイオ・ディーゼル政策及びその可能性について」、「バンコクにおける自動車の排出係数について」、「運輸分野におけるCDMとして可能性の高いパイロットプロジェクトの提案について」などのテーマで講演しました。
その講演を受けて、講演者と参加者との間で多数の質疑応答や意見交換が行われ、たいへん盛況なセミナーでした。また、タイ側関係者からCDMプロジェクトの具体化に向けた動きの促進を求められるなど、タイ側のCDMに関する期待の大きさが感じられました。
なお、今回のセミナーは、日ASEAN交通連携プロジェクトの一つである「運輸分野における代替燃料プロジェクト」の一環として、日本とタイが連携して開催したものです。
(参考)
1.CDMとは?
京都議定書に定められている京都メカニズムの一つで「クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)」の略称。先進国が開発途上国に技術・資金等の支援を行い温室効果ガス排出量を削減する事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を先進国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当することができる制度である。
2.京都議定書とは?
近年、地球温暖化による様々な問題がおきているが、その対策として、先進国に対して法的拘束力のある数値目標を定めた京都議定書が2005年2月16日に発効した。
京都議定書には以下の特徴がある。
@ 先進国の温室効果ガスの削減を義務付けている(日本の場合は2008年から2012 年までに1990年比で6%削減)。
A 国外で排出削減対策を講じることにより自国の排出分に充当したり、他人の有す る排出権を売買することが可能な仕組み(京都メカニズム)が盛り込まれている。
3.日本の排出削減義務とCDMの活用
日本は地球温暖化対策推進大綱の策定など、排出量削減のための国内努力を行っているが、数値目標達成には厳しい状況である(2002年度の温室効果ガス排出量は1990年比で7.6%増加)。そのため、CDM等国際的枠組みを活用することが必要となってきている。運輸分野におけるCDMの活用については、これまで開発途上国におけるバスや自動車などからの排出量が把握されていなかったり、温室効果ガス排出量削減の検証手法が確立されていない等の状況から、エネルギーなどの他の部門に比べて、CDMを活用したプロジェクトの形成が進んでいない状況にあった。
4.共同調査の概要(経緯等)
2002年4月、タイ・バンコクにおいて開催した「第1回運輸政策推進会議」において合意された「2002年環境にやさしい都市交通に関するバンコク・イニシアティブ」の中で「交通分野から発生する環境負荷の現状把握」を行うことが盛り込まれた。その具体的な活動として、2003年から国土交通省とタイ国運輸省が共同で「バンコクにおける自動車からの温室効果ガスや大気汚染物質の排出現況調査、排出削減量の把握手法の検討」などの「運輸分野におけるCDM推進のための調査」を行った。
この「運輸分野におけるCDM推進のための調査」は、2004年11月に開催された日ASEAN交通大臣会合において、改めて「日ASEAN地球温暖化ガス削減プロジェクト」として「日ASEAN交通連携プロジェクト」の一つに位置づけられ、今回のセミナー開催に至っている。
5.今後の取り組み
今回のセミナーにおいては、これまでの成果の報告及び関係者への啓蒙・啓発活動を行ったものであるが、今後は、タイ側と引き続き連携して、今回のセミナーで提案したバイオ・ディーゼルによるCDMプロジェクトのCDM理事会への承認申請書類の作成を進め、2005年内にも理事会の承認及び両国のCDMプロジェクトとしての採択を得るべく、必要な共同調査を進めることとしている。
セミナーにおける講演者及びテーマ
講演者 |
テーマ |
日本大学理工学部 福田 敦 |
Advantages and possibility of CDM in Transport Sector
(運輸分野におけるCDMの有効性や可能性について) |
国土交通省総合政策局国際業務室 山下 幸男 |
Importance of alternative fuel study and the CDM under ASEAN-Japan Transport Partnership
(日ASEAN交通連携における代替燃料の研究とCDMの重要性について) |
エネルギー省
(Ministry of Energy, Thailand) Mr. Rangsun Sarochawitkasit |
CDM, Bio-diesel policy and possibility in Thailand
(タイにおけるCDM、バイオ・ディーゼル政策及びその可能性について) |
タイ国海軍
(Royal Thai Navy, Thailand) Captain Dr. Samai Jai-In, RTN |
Pilot project on bio-diesel using palm oil in Thailand
(タイにおけるパームオイルを用いたバイオ・ディーゼルに関するパイロットプロジェクトについて) |
(社)海外運輸協力協会 舛巴 亮 |
Concept of CDM promotion study in Transport sector
(運輸分野におけるCDM促進のための研究の概念について) |
(財)日本気象協会 白川 康樹 |
Development of Emission Factors of In-use Vehicle in Bangkok
(バンコクにおける自動車の排出係数について) |
サンケァフューエルズ(株) 若林 恒平 |
Experimental project on bio-diesel using sunflower oil in Northeast, Thailand
(タイ北東部におけるヒマワリ油を用いたバイオ・ディーゼルに関する試験的プロジェクト) |
天然資源・環境省
(Ministry of Natural Resources and Environment, Thailand) Ms. Prasertsuk Chamornmarn |
Policy and measurement towards climate change and the possibility to promote CDM in Thailand
(タイにおける気候変動に対する政策及び対策並びにCDM促進の可能性について) |
(株)アルメック 小池 勇 |
Proposal of potential CDM pilot project in transport sector(bio-diesel project and bus rapid transit)
(運輸分野におけるCDMとして可能性の高いパイロットプロジェクトの提案について) |
運輸・交通政策計画事務局
(Office of Transport and Traffic Policy and Plannning, Thailand) Mr. Chamroon Tangpaisalkit |
Anticipation of CDM project in Transport sector in Thailand
(タイ運輸分野におけるCDMプロジェクトへの期待) |
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