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気楽に話をしていきたいと思っている。この会議はもともと“ジャパニーズ・ドリーム”を考えようとする会だったが、会の名称は最終的には“次世紀の暮らしを語る”というようになった。これはドリームを考えることをやめたのではなく、暮らしや社会資本ということをもう少し具体的に考えたいからである。
ジャパニーズ・ドリームというとアメリカンドリームを連想する。アメリカンドリームとはアメリカに行って夢を実現するということだが、それに対して日本では夢が持てるのか。さしあたってはアメリカンドリームを抜くことができるかが試されている。
明治時代から戦前の日本では、一等国になろうと富国強兵を目指しそれを達成した。しかし強兵は一等国だったが、戦後になってアメリカの物質生産力に負け、今日まで経済発展に勤しんできた。はじめは繊維あるいは鉄鋼から、自動車、家電、半導体と“アメリカン・ウェイ・オブ・ライフ”を構成するパーツについては抜きん出、その結果GDPではG7のトップとなっている。にもかかわらず、満足感やアメリカに対する“ジャパニーズ・ウェイ・オブ・ライフ”がないのは、これまで暮らし方について充分に考えてこなかったからであろう。アメリカンドリームを抜くためには、アメリカ的生活様式に匹敵、あるいは凌駕するような自信をもてるかどうかに帰着する。
そもそもアメリカと日本は、同時並行的に世界史に登場し、ヨーロッパから見ると新興国である両国はイギリスを追いかけてきた。日清・日露戦争後、はじめて中国から日本に留学生として学びに来るということが起こり、憧れられる国となった。このように日本はアメリカとの関係で長期的に見て決してコンプレックスを抱く理由はないのである。
建設省の果たすべき役割は、1995年1月17日の阪神・淡路大震災という大惨事でもわかる通り、非常に大きい。地震帯や滝のようだと言われる河川など脆弱な国土の上に立っており、社会資本の整備というものをまだ考えねばならない。それらは、一人一人が充実して、日本人として誇りをもてるような国民の生活、暮らしを実現するという観点で考えるべきである。この国のあるべき姿について、暮らしに密着した観点から意見を頂き、広く情報発信できるようなものを出していきたいと期待している。 |
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