総合政策総合政策

受賞団体インタビュー

バックナンバー

「手づくり郷土賞」受賞団体に聞く
地域づくりのポイント

「手づくり郷土賞」大賞部門を受賞された団体の皆様に、活動の中での工夫など効果的かつ継続的な地域づくりに取り組んでいくためのポイントをうかがいました。

歴史と海峡を活かしたまちづくり
~門司港レトロ~

福岡県 北九州市

平成28年度大賞部門(平成19年度一般部門)

 門司港レトロ地区の歴史的建造物等を活用し観光振興と地域活性化を図るため、イベント企画・実施、市への地域活性化方策の提言、ご当地グルメ等新たな観光素材の発掘など幅広い事業に取り組んでいる。

取り壊し危機にあった歴史的建造物の活用で観光振興・地域活性化へ

門司港レトロ地区
門司港レトロ地区

Q.活動をはじめたきっかけ・経緯について

かつて国際貿易港として繁栄した門司港ですが、昭和末期にはいくつかの歴史的建造物が取り壊しの危機に瀕していました。そこで、保存・活用して観光振興と地域活性化を図ろうという機運が高まり、「門司港レトロ」として生まれ変わりました。当会は、官・民とまちづくり団体が一体となってソフト面から推進する団体として設立されました。

各主体の長所・役割を活かし、“行けば何かある”期待を生む観光地に

門司港駅グランドオープン2周年記念イベント
門司港駅グランドオープン
2周年記念イベント

Q.活動の拡大等に向け工夫した点について

官・民・まちづくり団体の参加により、互いの長所を活かすことができ、調整や情報交換がスムーズにできています。また、3つの委員会を置き、それぞれの役割を明確にすることで活動が幅広く展開できています。
当会を始め民間団体等が多様なイベントを開催してきた結果、「門司港レトロに行けば何かある」といった期待感を持てる観光地になり、平成6年に約25万人だった観光客が、令和元年には約210万人になりました。

感染症拡大の影響下でも、変わらぬ目的で積極的な取組推進へ

門司海峡フェスタ
門司海峡フェスタ

Q.継続的な活動による効果や今後の展望について

受対象部門賞を励みに精力的に活動していましたが、新型コロナウイルス感染症の流行のため多くのイベントが中止になり、大きな打撃を被りました。しかし、これまでと同様、当会の目的である観光振興と地域活性化の推進をすべての判断基準としつつ、感染防止対策と社会経済活動の両立を目指して様々な取組を積極的に推進していきます。

万代中央ふ頭(音楽が紡ぐ港の魅力発信)

徳島県 徳島市

平成29年度大賞部門(平成24年度一般部門)

 万代中央ふ頭への市民の関心を喚起し認知度を向上させるため、水辺を活かしたイベントや水産市を開催するなど、新しい水辺のまちづくりに取り組んでいる。

人の行き交いが無くなった港町の再生に向けた水辺まちづくり

民営公園「アクア・チッタパーク」
民営公園「アクア・チッタパーク」

Q.活動をはじめたきっかけ・経緯について

昭和の高度成長期を支えた徳島の海上流通の拠点「万代中央ふ頭」。かつての役割を終え、人の行き交いが無くなったこの地の用途を転換し、時代のニーズに合った新しい街にしたい。港街が持つ独特の風情と倉庫という大空間を活かした街をつくりたい。そんな想いから仲間が集まり、平成17年に団体を設立し、水辺のまちづくり活動がスタートしました。

メディア活用や魅力的なコンテンツづくりで、全国的に注目される活動に

川に面していない「中通り」も出店が続く
川に面していない「中通り」も
出店が続く

Q.活動の拡大等に向け工夫した点について

一般部門受賞時は港湾施設利用の規制緩和に向けた実証実験の真っ最中で、メディアの注目を集め始めた頃。そのタイミングを逃さず、SNSを活用し、認知向上及び来訪者増を目的に様々な発信を行いました。
また魅力的なコンテンツづくりにも注力し、当該地域のイメージソング制作、生演奏による音楽花火など、全国的な注目を集めることにも成功しました。

地域内外との連携で、日本各地の遊休港湾施設に賑わいを

倉庫をリノベーションした店舗(家具雑貨店)
倉庫をリノベーションした店舗
(家具雑貨店)

Q.継続的な活動による効果や今後の展望について

大賞部門受賞後には行政からの評価も高まり、一層深い連携のもとまちづくりに取り組んでいます。今後は増加傾向にある入居事業者とのコミュニケーションを深め、地域総意のマスタープランを作成・提案し、万代中央ふ頭の価値を高めて参ります。
また日本各地に点在する遊休港湾施設が、同様に賑わっていくよう連携を深めたいと考えております。

小樽雪あかりの路

北海道 小樽市

平成30年度大賞部門(平成16年度一般部門)

 運河等の小樽の代表的な歴史的遺産を活用して冬の夜間を魅力的にし経済の活性化に繋げたいと考え、毎年2月に「小樽雪あかりの路」を開催している。

観光客が少ない冬の魅力づくりに向けた、街並み景観の有効活用

あかりを灯すボランティア
あかりを灯すボランティア

Q.活動をはじめたきっかけ・経緯について

イベントを始めた当時の小樽観光は、季節の繁閑格差が大きく、冬場は観光客が少ないという課題がありました。また、通過型の団体旅行がメインのため、地域への経済効果が十分に得られていない状態でした。そのため、「街並み景観を有効活用して冬場の夜の魅力づくりをしよう」、「市内全体を会場として経済活性化に繋げよう」という思いから、本イベントを開催することとなりました。

人と人とのふれあいを通じて、市民参加型イベントへ成長

工夫を凝らしたオブジェ
工夫を凝らしたオブジェ

Q.活動の拡大等に向け工夫した点について

ろうそくのあかりのみによる演出を厳しい寒さの中で行うことは、相当な労力が必要でしたが、その様子を見た観光客から声をかけられるなど、人と人とのふれあいが生まれ、多くのボランティアが参加する市民参加型のイベントへと成長しました。
また、ろうそくや運河に浮かべる浮玉など、イベントで使用するものを「メイドインオタル」にこだわったことで、地域資源に光が当たり、地域住民の郷土愛の醸成にも繋がりました。

国内外ボランティアを巻き込みながら、国際観光都市としての魅力向上へ

多数参加する海外ボランティア
多数参加する海外ボランティア
(家具雑貨店)

Q.継続的な活動による効果や今後の展望について

当イベントは、様々なコンテストを開催することで演出方法を参加者自らが考えるなど、ボランティアや地域コミュニティが楽しんで参加出来る仕組みが構築されています。また、多くの海外ボランティアも参加し、小樽の魅力を自国で発信してくれるなど、国際的な観光PRにも繋がっています。本イベントを今後も継続的に開催していくことで、国際観光都市・小樽としての魅力向上に繋げていきたいと考えています。

城下町松代に学び、城下町松代を育む

長野県 長野市

令和元年度大賞部門(平成18年度一般部門)

 文化財を自ら調査研究すると共に、子供から訪日客に至るまで多くの方々に歴史豊かな城下町松代の魅力を発信している。

文化財調査から地域文化の振興に向けた活動へ発展

古文書調査の様子
古文書調査の様子

Q.活動をはじめたきっかけ・経緯について

真田宝物館が文化庁の委嘱を受け開講していた、文化財の理解と次世代への継承を担うボランティア養成講座の受講生を中心に城下の文化財調査が始まり、平成13年に県内初のミュージアムボランティアとして会が発足。松代町内にある多くの(様々な)文化財を調査し、広く紹介する活動を通して、地域文化の振興への寄与を目的に活動を開始しました。

会員自らの「学び」による自発的活動が魅力発信の原動力に

箏の演奏体験の様子
箏の演奏体験の様子

Q.活動の拡大等に向け工夫した点について

城下町・松代は、歴史や建造物など多くの文化財を有したフィールドで、会員の個性や能力を活かした多様な活動が可能でした。加えて、自らの「学び」を基本とした自発的な姿勢が、単なるガイドにとどまらない活動の原動力となり、独自の視点で作成した冊子や、子供向けイベントが好評です。平成31年度からはインバウンド対応にも力を入れ、より多くの方々に魅力を伝えています。

国内外ボランティアを巻き込みながら、国際観光都市としての魅力向上へ

「ボランティア視点」が好評の出版物
「ボランティア視点」が好評の出版物

Q.継続的な活動による効果や今後の展望について

城下町・松代を拠点とするミュージアムボランティアとしての20年に及ぶ活動は、地域における文化財の認識を「見るだけのもの」から次第に「活用しながら維持・保存するもの」へと変化し、住民参加、学校教育との連係、行政による町並み整備などとあいまって、城下町松代全体に広がりをみせています。
今後は、記念事業などの大きなイベントが控えており、これらに向けた研修に力を入れています。

明治の遺産を活用した手づくり鉄道博物館
~明治のレトロモダンを未来に継承~

秋田県 小坂町

令和2年度大賞部門(平成18年度一般部門)

 旧小坂鉄道の駅舎や車両を、産業遺産として保存・活用する小坂鉄道レールパークで、車両や設備を活用した体験観光プログラムのほか、観光トロッコ運行や「小坂・鉄道まつり」などイベントの企画運営に協力している。

街道のにぎわい創りとの融合から発展した鉄道保存活動

明治百年通りお花見観光トロッコ運行
明治百年通りお花見観光トロッコ運行

Q.活動をはじめたきっかけ・経緯について

平成6年の旅客列車廃止以来、小坂鉄道を守り育てようと生まれた「鉄道の日イベント実行委員会」が、町が進める「明治百年通りにぎわい創りプロジェクト」に賛同したのがきっかけです。
平成21年の鉄道廃止後に、明治百年通りに新たな観光資源を加えるためのレールパーク構想の実現と町の活性化をめざして活動を本格化し、平成25年に「小坂鉄道保存会」が発足されました。

小坂鉄道ファンによるおもてなし演出で幅広い層に魅力発信

ブルートレイン体験乗車で気分は本物の駅員と車掌さん
ブルートレイン体験乗車で
気分は本物の駅員と車掌さん

Q.活動の拡大等に向け工夫した点について

小坂鉄道保存会は、レールパークの担い手として、小坂鉄道ファンたちが全国の仲間たちに呼びかけて結成された団体で、ボランティアである保存会と町、指定管理者が三位一体となって邁進しています。
レールパークのオープン以降、鉄道ファンのほか若いファミリー層の観光客が増え、保存会員が制服姿で行うディーゼル機関車運転指令や車掌乗務は、産業遺産と明治百年通りの魅力を伝えています。

「魅せ鉄」から地域やファンを巻き込んだ保存活動へ

保存会員が「魅せ鉄」でお客様をお見送り
保存会員が「魅せ鉄」で
お客様をお見送り

Q.継続的な活動による効果や今後の展望について

コロナ禍の中での大賞受賞でしたが、元気をなくしていた地域に明るい話題をお届けすることができました。「魅せ鉄」でのおもてなしで、リピーターも着実に増えており、地域経済への貢献度もますますアップしています。
今後は「魅せ鉄」に加え、地域住民や鉄道ファンの方々にもご協力いただきながら車両修復や保線活動にも取り組み、小坂町の魅力を多くの方々に伝えてまいります。

手づくり魚道の完成が出発点!
~SDGs時代の川との付き合い方~

北海道 美幌町

令和3年度大賞部門(平成27年度一般部門)

 落差工の設置により姿を消した、駒生川上流の魚を呼び戻すための魚道づくりをはじめ、河川水中のマイクロプラスチック調査、手軽さを兼ね備えたポータブル魚道の開発・設置などを実施している。

上流から姿を消した魚たちを呼び戻すための魚道づくり

木材を使った魚道
木材を使った魚道

Q.活動をはじめたきっかけ・経緯について

近年、宅地化や農地化が進み、駒生川は直線化され、それに伴って流速を落とす目的で9基の落差工(小型のダム)が造られました。その結果、魚たちが川の中を自由に移動することができなくなり、落差工上流から姿を消しました。この事にショックを受けた会長の「上流に魚を呼び戻そう」との呼びかけに共感したメンバーが中心となり、手づくり魚道の取組がはじまりました。

自然学習の充実や手軽な魚道開発でSDGsのさらなる推進へ

魚道の完成を喜ぶメンバー
魚道の完成を喜ぶメンバー

Q.活動の拡大等に向け工夫した点について

手づくり魚道の作成により、約40年ぶりに魚が遡上し、稚魚の誕生が確認できました。稚魚に対面した瞬間には、原風景が戻ったと、涙を流して喜ぶ会員がいました。
一般部門受賞後は、子供たちを対象とした川での自然体験活動の充実、専門家による優れた学習機会の提供をはじめ、より簡単で安価なポータブル魚道の開発、マイクロプラスチック調査及び流域一斉清掃など、SDGs(持続可能な開発目標)に係る活動のさらなる発展に取り組みました。

人間と生物が折り合いのつく形で共生する自然を目指して

ポータブル魚道(ドジョウ
ポータブル魚道(ドジョウ

Q.継続的な活動による効果や今後の展望について

手づくり魚道の取組は、道内外からの視察もあり、駒生川の事例を参考にして各地で手づくり魚道が完成しています。
今後は、次世代に豊かな自然環境や資源を残すべく、子供達を対象とした体験活動を実施など様々な活動を、継続して取り組んでいきます。また、川を原生自然に復元するのではなく、人間と生物が折り合いのつく形で共生する自然を目指していきます。

ページの先頭に戻る