玉虫厨子
この厨子は7世紀につくられたもので、高さは233cm。ヒノキとクスノキの材に漆塗りをほどこし、年月を経て色あせてはいるものの、タマムシの虹色に彩られている。また、彫刻を施した金具も取り付けられている。この厨子は、一時期は推古天皇(554~628年)の個人的な所有物であった可能性がある。現在は国宝に指定されている。専門家たちは、何世紀にもわたって、この厨子にほどこされた精緻な仏教的装飾に魅了されてきた。その装飾にはインドや中国、朝鮮の影響を見てとることができる。扉には、この世界の守り神である四天王のうちの2人が描かれている。さらに注意深く観察すると、下の須弥座には釈迦の前世の逸話が描かれていることもわかる。そのうちのひとつには、釈迦の前世である薩埵王子が自分の服を木の枝にかけている場面が描かれている。このあと、王子は自ら断崖から身を投げ、腹を空かせている虎の親子に自らの肉体を与えるのである。