高千穂神社:神楽殿
高千穂町とその周辺地域には、日本神話の主要な伝説の数々が今も息づいている。その一つ、「天岩戸」の章では、太陽神の天照大神が弟・素戔嗚尊の乱暴に怒り、天岩戸に籠もって光を奪い去ってしまう。そこへ別の女神が現れ、愉快な舞を披露するなどして神々の笑いを誘い、天照大神を天岩戸から誘い出す。こうして地上に光を取り戻すことに成功するのだ。33番の夜神楽は、選ばれた民家で秋から冬にかけて披露される。高千穂の夜神楽は同地域に受け継がれる遺産だが、町を訪れる観光客の間でも関心が高まっている。高千穂神社の神楽殿では、この神聖な伝統を幅広く共有すべく、夜神楽33番のうち4番を季節問わず毎晩8時から9時まで公開している。神社の本殿脇にあるこの建物は、大舞台を含む広大な空間を有し、四隅には高千穂地域の名産とされる米作に欠かせない木、火、水、空気を象った神楽面が吊るされている。「ほしゃどん」として知られる面を被った舞手はほとんどが男性で、笛や太鼓の音色に合わせて手力雄、鈿女、戸取、御神体の舞を力強く披露する。大団円では舞手が純米の献上酒を観客に振る舞い、その間を千鳥足で進み、見る者に神々の祝福を授ける。