尾瀬の植物
高山地帯にある尾瀬は、独特の地形や気象のおかげで900種類以上の植物が生育しており、「植物の宝庫」と言われます。尾瀬は、北方系(主に氷河期から生き残っている植物)/南方系(氷河期以降に南方から入ってきた植物)、太平洋型(雪などの影響をあまり受けない植生が成立するエリア)/日本海型(雪などの影響を受けた植生が成立するエリア)、それぞれの植物が生育するエリアの接点に位置し、多様な生態系を生み出してきました。
森林の植物
尾瀬ヶ原を取り囲む山々は、大部分が落葉樹に覆われていますが、落葉樹の種類は標高と土壌に応じて異なります。例えば、鳩待峠の近くには灰白色の樹皮を持つブナ(Fagus crenata)がたくさん生えており、山ノ鼻に向かう下り道の周囲はミズナラの森になっています。標高1,600メートル付近では、オオシラビソ(Abies mariesii)やオゼトウヒ(Picea jezoensis subsp. hondoensis)などの針葉樹がたくさん見られます。
森の中の地面にはほとんど光が届きませんが、植物に関心の高い人はギンリョウソウ(Monotropastrum humile)を見つけられるかもしれません。小さな白い花を咲かせるギンリョウソウは、他の植物とは違って光合成を行わず、代わりに菌類から栄養を得ています。
至仏山は尾瀬ヶ原やまわりの山々とは違う種類の植物が多く生育していることでも有名です。その理由は、至仏山の上部が「蛇紋岩」というマグネシウムや鉄を多く含む岩でできていて、植物が育ちにくい環境になっているからです。至仏山でも育つ植物に、尾瀬にちなんで名付けられたオゼソウ(Japonolirion osense)があります。オゼソウはカトウハコベ(Arenaria katoana)やホソバヒナウスユキソウ(Leontopodium fauriei var. angustifolium)(写真参照)と共に、「蛇紋岩植物」と呼ばれています。
※蛇紋岩:「蛇紋」とは蛇の皮の紋様という意味で、岩の表面が蛇の皮のように見えることから名づけられました。
湿原の植物
春と夏の間、湿原はじゅうたんを敷き詰めたようにたくさんの花が咲き乱れます。まず、ミズバショウ(Lysichiton camtschatcense)が5月下旬から6月中旬にかけて湿原いっぱいに咲き誇ります。しかし、白い花のように見えるものは、実際には仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる葉です。7月中旬には、山吹色のニッコウキスゲ(Hemerocallis esculenta)が湿原一帯を派手に飾ります。このじゅうたんのような景色は訪れる人々に根強い人気があります。Daylilyという英語の名前からも分かるように、ニッコウキスゲは一日しか花が咲かない植物です。茎に可憐な花をつけるイワショウブ(Triantha japonica)は、氷河期から生き残っている高山植物です。
他にも、スポンジのようにたくさんの水を蓄えるミズゴケ(bog moss)や、ワタスゲ(cottonsedge、Eriophorum vaginatum)などを見ることができます。
池や沼では、ヒツジグサ(Nymphaea tetragona)、そしてハスに似た葉をもち黄色い花を咲かせるオゼコウホネ(Nuphar pumilum var. ozeense)見ることができます。
