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ファッションとコミュニケーションについて

講師: 四方義朗氏(ファッションプロデューサー)


コミュニケーションしようとする人間には、何らかのチャームポイントが不可欠と言う四方義朗氏。衣服は個性を表現するツールであるとともに、自分の魅力を高める武器ともなる。(2003年11月27日開催の講演より抜粋)


■ファッションが集団や個人のイメージを表現する時代

 僕は服というものは一つの「装置」だと思っています。
  まず「ステイタス・シンボル」ということがあります。私はお金持ちで、こういう地位がある、こういう権力があるという一つのシンボル。例えば高いものを身に着けることがお金持ちのシンボルということは、やっぱりあると思うんです。自分の地位を示すような装置がある。
  日本のVANという会社が、昔、TPOということを提唱したことがあります。いつ、どこで、どんな場合にが、ファッションの指針だと。日本のメンズファッション界の草分けともいえる、僕の大先輩の石津謙介さんが「TIME、PLACE、OCCASION」ということを言い出して展開なさったのですが、彼が最近おっしゃっていることで素晴しいと思ったのが、「FORMAL、OFFICIAL、PRIVATE」(FOP)。現代は何をどう着るのかということを、TPOで決めている時代ではない、自分にとってフォーマルはどうあるべきか、自分にとってオフィシャルはどうあるべきか、自分にとってプライベートはどうあるべきかということなのです。
  ステイタス・シンボルの時代には、その服があれば良かったのです。スーツならスーツがあれば良い。コートならコートがあれば良い。ミニスカートなら、ミニスカートで良い。どこの誰のミニスカートでなくても良い。今はあの人のこの形のミニスカートじゃないとダメだという状態、小流行になっています。かつては物優先の時代だったのですが、今は物を通じて、自分の生き方、自分のセンス、自分の地位とか、自分の余裕とかをどうやって表現するのかということが必要になってきたのです。ステイタス・シンボルよりも、センシビリティ・シンボル(SENSIBILITY SYMBOL)の面が重要になってきているとも言えます。単純に言えば、「あの人は趣味が良い」と言われるかどうかという話です。趣味性、表現性、感性みたいなものが非常に重要になってきたと思うのです。
  大会社の社長は今もほとんどそうですけれど、それなりの地味なスーツを着てネクタイをして、どこにでも出てきます。しかしこの過渡期の時代になって、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏は、初期の頃はジャケットも着ないでインタビューを受けていました。あれは一つのセンスです。俺は、この企業は、型にはまった縦社会の企業じゃないということを、ネクタイを取る、ジャケットを脱ぐということで表現していました。ヴァージン・グループのリチャード・ブランソンもほとんどの場合ネクタイはしません。非常にカジュアルで、足を組んで、俺は人生を楽しむ人間なのだということで会社のイメージを訴えようとしています。このことからも、服がステイタス・シンボルから、その会社のイメージやその人の感性を表現しようとする、センシビリティ・シンボルになってきているということがわかると思います。
  さらに服の機能の中には、どこにどう属しているかという「セクショナル・シンボル(SECTIONAL SYMBOL)」という要素もあります。今は世界的にそうですが、特に日本の社会は、信用するという時にどこの誰かということを非常に大事にします。「どこの馬の骨かわからない奴」という言い方をしますが、どこの誰かわかるような服装にした方が話が早いですし、それが一つのアイデンティティになるわけです。名刺には出せば信用されて、話が次に進むというようなIDカードとしての機能がありますが、これと同じですね。
  これからの時代は、その中でどう個性を出していくのかということが重要になるでしょう。ステイタス・シンボルとセンシビリティ・シンボルとセクショナル・シンボルを、どのくらい自分がものにしているかがこれからのポイントになると思います。ですから、自分はどの位置で、どういうファッションをしていくのかということが大切です。仕事をしている時にはこの服で、オフになってきたらこういう風に着ようというように、ファッションからも生活の広がりと、人とのコミュニケーションが出てくると思います。

■魅力的であることが会話をスムーズにする

 人間というのは目で見えた部分、センスのような部分や趣味のような部分で引きつけられたりするものです。そうすると、今度は一緒にゴルフ行きましょうとか、ご飯を食べにいきましょうということになる。コミュニケーションというのは、どこかにチャームなポイントを自分が持っていないとダメです。そして自分が楽しんでやっていることには、パワーがあるのです。嫌々やっている人はパワーがありません。忙しくて、ネクタイなんか構っていられないと思いがちですが、今はそういった心のヒダのようなものをファッションにも取り入れる気構えがないと、やはりチャーミングな会話にならないと思います。
  人の会話や、人と接点を持つ時に、よく「無駄話」がポイントになりますよね。将棋でもゴルフでも何か共通項を持っていたら、話がふっと進むということがあります。昔は「やめよう、ムリ、ムダ、ムラ」と「三ム」主義でした。しかし、さきほどTPOからFPO(formal, private, official)へと変わってきたと言ったように、今は「やろう、ムリ、ムダ、ムラ」なのだと思います。それが人間だという部分です。そういう角度で本日はファッションをご説明させていただきました。何かのお役に立てばと思います。


四方義朗◎よも・よしろう/ファッション・プロデューサー 1948年、大阪市生まれ。関西大学法学部卒。ミュージシャン、雑誌編集、TV番組制作を経験後、ファッション・イベントの企画、演出を手がける。83年、(株)サル・インターナショナルを設立、ファッション・プロデューサーとして国内外のコレクションを演出。88年、(株)四方義朗事務所を設立、同年3月、(株)サル・インターナショナル大阪支社を設立。現在、ファッションを中心として、イベント、店舗開発、ブランド・メイキングなどを主なフィールドとしている。また、独特の時代を観察する目と軽妙な語り口をもってマスコミ各方面に活躍。

 

国土交通省技術調査課