はじめに

 本研究会は、資料1にある国土庁事務次官の諮問に応えるため、1999年12月から2000年3月まで、計10回会合し、「不動産の証券化」に関し、集中的に議論をするとともに、さらに取りまとめの会合を開いた。また、意見の交換はこのような会合のみならず、E-mail等を通じても行った。この間、年金、税制などの専門家の方々にも適宜出席してもらい、各々の専門分野に関する説明を受けた。
 最近、「不動産の証券化」については、多くの場で検討が行われ、いくつかの報告書が出されている。それらの中でこの報告書の特色は、概ね次のとおりである。第一に、本研究会では単に不動産の証券化スキームといった技術的な点にとどまらず、投資家サイドを含めた資金の流れについて、すなわち金融技術面をも併せて検討してきたこと、第二に、第一の特色とも関連し、広く我が国の民間貯蓄をいかに有効に活用していくかという、我が国マクロ経済運営に関する議論も行ったこと(報告書のこうした考え方は今後のPFI()のあり方にもヒントを与えるものであると考える)、第三に、従来、それぞれバラバラに取り扱われるきらいのあった不動産の証券化に関する各種の項目(不動産の有効利用と不動産の証券化、不動産及び関連資産の税制、年金の運用、個人貯蓄の活用等)を包括的に取り扱ったこと、第四は、それぞれの項目の傾向の分析や要望の積み上げにとどまらず、演繹的な分析にも留意したこと、などである。

 実際、短期間に、この極めて幅広いテーマについての報告書を出すことは、容易ではなかった。また、個々の項目について、すべてのメンバーの意見が必ずしも一致したわけではない。ここでは、研究会としての一応の見方を示したものである。
 なお、それぞれの項目について、構成メンバーの専門領域、与えられた時間などの制約から、必ずしも一元的な結論を出すことはできなかった部分や、具体的な提案に至らなかったところも多い。しかしながら、本報告書が上記の如く包括的な議論の取りまとめであるという点が広く理解され、不動産の証券化の推進の一助となることを期待している。



(*) Private Finance Initiativeの略。公的主体によって行われてきた公共施設等の整備を、適切な官民役割分担の下に、民間の資金・能力・ノウハウを活用することにより、効果的かつ効率的に行おうとする手法。

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