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不動産については、個別性・地域性が強く、かつプライバシー保護への要請が強いという理由で、個々の情報の開示は進んでいない。したがって、不動産をベースにした証券化商品についても、その制約から免れることができず、他の類似の資産に比べても情報の開示が進んでいない状況にある。しかしながら、およそ証券化商品を創り、かつ、それについての市場の活性化を図るということであれば、不動産関連の情報ができるだけ関係者に開示され、かつ一般に公開されることが望ましく、個別の取引の数量や価格などが明示されにくいところでの健全な市場の急速な発展は考えにくいように思われる。
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(進展する商品についての情報開示)
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近年、証券化商品を組成している不動産の情報は、開示に焦点が当てられつつあり、その限りにおいて、個別商品の投資家への情報開示という面では、かなりの進展があるといえる。
例えば、SPC法に基づく証券化の場合、資産流動化計画や有価証券発行届出目論見書などにおいて取得対象不動産の詳細情報(例えば、購入価格、賃貸料など)が開示されており、また、不動産特定共同事業においても、法令、政省令等により事業参加者への契約前・契約時の書面交付、財産管理状況の報告等が義務付けらている。
これらの情報開示は主として、投資家保護の観点から投資家に十分な情報を与えるという視点でなされているものであり、それなりの役割を果たしているといえよう。
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(インフラとしての土地情報の充実の必要性)
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しかしながら、不動産の証券化が、不動産や金融資産の適正配分に資するという幅広い目的をもっているものとすれば、不動産の情報開示も、投資家に提供された既存の商品に関するもののみでは必ずしも十分ではなかろう。そこでは現に、伝統的な不動産関係の事業に従事していなくとも、不動産を取り扱うことに対する合理的な資格と不動産の証券化の技術を持っている者が、容易に証券化の業務に参入し得るように、不動産の取引や使用状況に関する情報ができるだけ関係者に開示され、一般的に公開されていることが望ましいように思われる。
さらにいえば、およそ不動産の証券化という目的に限らず、不動産全般について、その情報ができる限り幅広く開示され、公開されることが経済活動の基礎的なインフラを提供するものであるとの認識がさらに広がることが望ましいものと思われる。
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(諸外国の最近の動向)
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従来、欧米先進諸国でも、個々の不動産に関する情報(特に賃料と取引価格)はそれほど開示されていない、と認識されていたように思われる。
しかしながら、不動産の種類(住宅用か、商業用か)やそれぞれの国々の事情によって多少の差異はあるが、このところ海外においては不動産についての情報の開示や公開は相当進んできているように見受けられる。個々の賃料や取引価格まで簡単に知り得るところもあれば、これをインデックス(*)にしたうえで、開示されているところもある。
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【諸外国の不動産情報の開示状況については、資料15を参照】
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我が国においても、当該不動産の性格、使用状況、使用目的、取引の目的などによって、その難易や適否の差異があろうが、関係者のプライバシーにも留意しつつ、広く、不動産関連情報の開示や公開が進められることが望ましい。その際、まず、国や地方公共団体、あるいはその関係機関が当事者となった一定の取引について、情報の開示をさらに進めていくということも検討に値しよう。
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(不動産インデックス)
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不動産の証券化との関連では、個々の不動産に関する情報のほか、いわゆる不動産インデックスについて触れておく必要があろう。
ここにいう不動産インデックスとは、証券化の対象となり得るような、または、現に証券化の対象となっている不動産に関連する各種の情報(例えば、価格、賃料、利回り等)のデータを用途別・地域別・利用期間別等の各種のグループに着目して、インデックス化したものである。このインデックスは、不動産の証券化商品を組成する際に活用し得る(期間、利回りの設定等)ほか、投資家にとっても、例えば運用のパフォーマンス評価としても、また、投資ポートフォリオの組成の基準としても有効なものである。
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特に、年金基金等の機関投資家にとっては、各種の不動産インデックスとの対比において、その投資対象とした特定資産への投資の適否を判断し得るし、それをベースにして運用受託者としての説明義務(アカウンタビリティ)を果たすことができるといえよう。したがって、不動産インデックスの整備やその公開は、不動産証券化商品への投資の可能性をより高めるものといえよう。
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また、いわゆるプライバシーの保護との関係においても、インデックスであれば、それが個々の不動産についての情報の開示を意味するものではないだけに、その公開は、より望ましいように思われる。
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