第七章 税制について

 アメリカにおける不動産の証券化進展の一つの要因が税制改正であったこと、最近における我が国の不動産の証券化進展の背景に、税制に特別の工夫を凝らしたSPC法の創設が深く関わっていることにも見られるように、税制と不動産の証券化の進展については密接な関係にある。
 本研究会では、税制についても検討したが、不動産関連税制は、それぞれ精緻な税理論に基づく考え方の上に成り立っており、この短期間に断定的な結論を示すことは困難であると思われた。

 いずれにしても、税の個々の措置がある証券の組成・流通の進展、さらには広く異なった種類の金融資産への投資配分に大きな影響があること、したがって、証券を含めた金融面においてある一定の政策を促進したり、または抑制したりするために活用する場合、これらの措置が極めて大きく働くであろうことについて、十分な認識が必要であるように思われる。
 特に、現在のように、僅少の金利差を求めて大量の資金が移動し、また、少しでも多くの利回りを求めて、いわゆる金融工学が活用される時代においては、税制のあり方は、国内のみならず内外の資金の流れに決定的な影響を与えることになる。その観点から、税制の検討の際には、それが資金の流れに与える影響について、従来以上に深く考慮されるべきであるとの認識を強く持つ必要があろう。

(税制についての検討課題)

 限られた時間の中で、具体的な結論や方向性を示すことは困難であったが、とりあえず議論の中で注目すべきであると思われる点は以下のとおりである。

  • 現在、土地については、その保有(固定資産税、都市計画税等)・取得(不動産取得税、登録免許税等)・譲渡(所得税、法人税、住民税)の各段階で幅広く課税されている。それぞれの課税根拠は十分存在するが、これらには、一般的に地価は上昇するものと見られた時代が終わり、地価も他の財貨と同じようにその価格が変動するものであることが明確となった現時点において、その存否や程度について中長期的な観点から再検討すべき点があるのではないかと思われる。ただ、いずれにしても、これらは国の全体的な土地政策とも密接に関連するものであり、土地政策の動向を踏まえたものでなければならないことはいうまでもない。


【不動産関連税制の現状については、資料17を参照】
  • 不動産を証券化する場合には、例えば、実物の取引に課される税負担とSPC法上当該不動産に課される税負担とは異なるものとされているように、ある程度、その実物取引の場合と証券化商品の場合には、負担が異なることになる。この場合、両者の課税の整合性をどこまで求めるのかは難しい問題である。

  • 今後、不動産の証券化の商品としての高度化等に伴い、不動産を化体した証券がどの程度流動性があるかが、他の金融資産との比較において重要となると思われる。その際、その証券化商品に係る不動産の流通課税をどのように考えるべきかといった課題がある。



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