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我が国における不動産の証券化は、歴史的に見れば不良債権の処理の一環として論じられはじめられたように思われ、それは1998年のいわゆるSPC法の成立につながり、その後、様々の制度の創設や変更に至り、その動きは現在も続いている。その証券化の動機も、その要因も、当初は自らの保有する不動産の価格のさらなる低下や簿価割れに対処するというものに重点があったが、時代の変遷とともに、当該企業の新たな資金調達手段、あるいは、より低コストの資金調達手段という見地から、積極的な取り組みが増えてきたように思われる。加えて第二章で述べたとおり、最近の低金利のもと、比較的利回りの高い不動産証券化商品に対する投資家サイドからの需要の高まりは、これらの動きをさらに活発化させているように思われる。
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【不動産証券化の最近の動きについては、資料20を参照】
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また、このような動きの背景としては、我が国に対する海外の投資家の増加や金融機関の参入があり、その動きは、日本の金融機関にも影響を与えていることが挙げられる。その結果、我が国においても不動産証券化関連の様々なビジネスが活発化する方向にある。このような状況のもと、以下の例の如く様々な新しいビジネスの方向が予見される。
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(不動産担保ローン債権の証券化)
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いわゆる不動産の証券化商品の対象は、不動産そのものを対象としたものに限らず、不動産関係のローン債権が対象となり得る。特に、いわゆるMBS(*)と称される保有する住宅ローン債権の証券化が考えられる。それが、公的金融機関であれ、民間の金融機関であれ、このローンを証券化して、これを市場で売却することは、当該金融機関の資金調達手段の多様化、資産の圧縮にもなる(それは、いわゆるBIS比率の改善、ROA及びROEの改善にもつながる)ほか、当該機関の金利リスクや期間のミスマッチ(流動性リスク)といったリスクの低下をもたらすことになる。その結果としての財務体質の改善は、当該機関の格付の上昇となり、より安いコストでの資金調達を可能にするであろう。
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また、このようなMBSのベースとなる住宅ローン債権は、新たに発生する住宅ローン債権のみならず、既存の住宅ローン債権も対象となるものと思われる。
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